第14話
快適な1日だったと6人は思った。
食事は美味しいし、風呂は大きいし、部屋も綺麗で旅館のよう。
何よりいつも何かに張り詰めていたみんなはこの1日だけ解けた顔をしていたのだろう。
糸和津家の屋敷にお世話になって1日目が終わろうとしていた。
凛はこの家の懐かしさや、自分の今の状態の不甲斐なさを思いながら寝れなかった。
『少しくらい涼んでもいいよな。』
暗くて足元も朧げなのに感覚だけは冴えていた。
彼女には今自分がどこにいるか手に取るようにわかる。
『確か、この先に右に曲がるところがあってその先に中庭が見えるところがあるはず。』
歩いてみるとその先には中庭があった。彼女の思った通りだった。
この裏庭の紅葉の木でソラナと一緒に降りられなくなったんだ。
なんて考えていられた。今ではソラナのことをちゃんと思い出せている。
家を出る思い出に更けていると来た方向とは反対側から焔が来た。
「凛ちゃんも寝れないの?」
「うん。なんかいろんなことで、ぐちゃぐちゃになっててさ。」
「そうなんだ。」
久しぶりに会った時と同じ状況だなと考えていると焔が言い出した。
「ごめんね。僕がもっと力になれたらよかったのに。」
「別にいいよ。全部悪いのは私の家なんだし。」
「そう言うことじゃなくて、不甲斐なくてさ。小さい頃の約束とはいえ結婚を考えていたほどだよ?そんな奴がいざとなった時に守れないって・・・。」
「別に大丈夫。でもそんなふうに考えてくれていたのは嬉しい。家から出てってさ、もう関わりなんてなかったからこの事件解決できるかどうか悩んでたんだ。焔がなんとか話を持ちかけてくれてもしかしたら、なんて思ってるんだ。だからありがとう。ちゃんと助かってるよ。」
「うぅ、ごめん。ごめんね。」
「だからもう大丈夫だって言ってんだろ?ほら泣くな。もっと眠れなくなるぞ。」
なんて会話をかわしていた。焔がここまで追い詰められていたとは凛も考えもしなかった。
焔は幸せになっていただろうと思っていた凛も彼も呪縛に囚われている1人なんだと、
この時に実感した。
そして1時間したくらいにそれぞれ部屋に戻って明日に備えて寝た。
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