第12話

「マフィアって、俺ら手出しできんの?」


右牙が心配そうに凛を覗き込んだ。みんなマフィアだと聞いて凛を悲しそうに見る。

凛がこの先どうなるのか、みんなが心配する。

彼女自身は何かを深く考えている。


「これってさ、私で破棄できないよね・・・?」

「無理だろうね。お金で買われたんならその売った側に破棄させないと。」

「俺の力で何かできないかな?」

「あの当主に会ってみたら?なんか変わるかも・・・とは思ってるけど。」


会ったところで何か変わらないと凛と焔とソラナは思っているが、

その他の5人に後押しされ行ってみることにした。

何かあれば護衛として5人がついてくれるらしい。

そして、ここからちょっと遠いのでまずは焔の糸和津家にお邪魔することになった。

みんなの準備が始まった。

ハヤブサには凛にGPSと盗聴器と盗撮機がどこにあるかを全部話させた。

今度からは凛に許可をとってからということにして。


『お泊まりか、いつぶりなんだろう?まぁ、この前右牙左牙とお泊まりしたようなものだけど。糸和津家か。家を出る前に行ったのっていつだっけ?何年ぶりだろ。ちょっとだけ楽しみだな。』


着替えを2組、一応寝巻き用にもう1組と思っていると監禁されていた頃を思い出した。

薄暗い部屋に鎖と明金の声だけが響いていく。

自分の心臓の鼓動が速くなり、体温が上がって、緊張で吐きそうになる。

怖いはずなのに明金の方をまじまじと見てしまう。

彼の顔には喜びを感じる笑みを浮かべているのに、どことなく人間ではない何かを感じる。

今でも思い出すだけで口から心臓が出てきそうなほど怖い。


『もう考えないようにしよう。その方がいい。』


凛は今ある気持ちをカバンの中に押し込めて明日からの泊まりの準備を整えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る