第6話

焔の毎日は、花夏がいなくなってから苦しくなった。

糸和津家の跡取りっていうことで日夜期待をかけられ、勉強をさせられる。

それに許嫁の夏希は毎日やりたい放題で、メイドを困らせている。


『僕がなんとか言い聞かせないといけないんだろうか。』


花夏がいきなりいなくなってから糸和津家は大騒ぎになった。

みんな花夏がお嫁に来るのを期待していたからだ。

それは妹の夏希が問題児なこともあったし、単純に花夏が優れていたからのもある。

花夏は先を見通す目を持っている。それに加え、頭もよく、人望も厚い。


『花夏ちゃんをもう、諦めたつもりなのに、この前、見つけてしまったから。彼女はやってこの家の呪縛から抜け出せたんだ。僕は、彼女に関わってはいけないと思ってるのに。』

「ねえなんで思い詰めた顔をしていらっしゃるの?それよりも、一緒にお買い物、行きません?今月になって新しい洋服が出たのですの!」

「あぁ、でも、やることがあるんだ。今日は無理だ。」

「なんでですの!?私を蔑ろにするおつもりですか?お父様に言いつけてやります!」

『勝手にしろ。正直、僕もうんざりなんだ。』


花夏の両親は11歳の時に事故で亡くなった。その後に、その父親の弟夫婦が継いだ。

だが、その夫婦がいけなかった。

彼女を蔑ろにし、夏希をどうしても後継にさせたかったため、花夏を追い出した。

いなくなったのを知って、糸和津家は必死に探した。だが、今の今まで見つからなかった。


『今になって思えば、針都家が独自に隠していたとしたら納得がいく。』


今のこの両家には彼女が必要なことは糸和津家、全員が分かりきっていること。


『彼女を連れ戻して、必ず幸せにして見せる!』

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