第3話

思い切って家にあげてしまった・・・。こんなことを知られたらたまったもんじゃない。

焔はまだ一緒にいられることが嬉しそうだ。

正直、人の泣いている顔が一番苦手だ。どうしても最善の行動を取ろうとする。

それがこんな結果になるとは・・・。


「好きに座ってて。麦茶持ってくる。」

「ありがとう。」


麦茶を持ってきて、改めて焔を見る。

中2の時に家を逃げ出して、だから、最後に見たのは3年前と言うことになる。

2年前まで私と同じくらいの背だったのに、いきなり成長して私より上だ。

顔も整ってきた。まあ、優男感で、弱々しそうには変わりないが。


「・・・」

「・・・」


沈黙が続く。凛も焔も気まずくなっている。

沈黙を破ったのは焔だった。


「学校、行ってるの?」

「行ってない。今は朝から晩までバイト三昧。これでもこのアパートで維持できるほどまで稼いでるよ。」

「すごい。僕には到底できないことだな。」

「・・・」

「・・・」


また気まずい雰囲気が漂い始めた。3年越しで、話したいことはたくさんあるんだろうけど、

言葉が出てこない。凛は思い切って聞いてみた。


「夏希とはうまく行ってるのか?」

「うーん。僕はあの子苦手だからさ。僕はまだ慣れないよ。」

「そうか。まあ、頑張れ。」

「・・・」

「・・・」

「寝るか?ベッドくらいなら貸すけど。」

「でもはn、凛ちゃんも寝るでしょ?明日もバイトじゃない?」

「今はもう眠たくねえから。変な夢を見て目が冴えた。」

「悪夢?」

「いや、そんな感じじゃないけど・・・」

「僕明日休みだから凛ちゃんがベッド使いなよ。眠れないならそばにいるから。」

「え、あ、ありがと。」

『なんだかんだで私が寝る雰囲気になってしまった。というか、焔ってこんな奴だったか?』


凛は諦めて寝ることにした。ベッドに入ってみればすぐにそのまま深い眠りに落ちた。

焔は凛の眠りが深くなるまでずっと見ていた。

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