第2話

そんな時、聞き覚えのある声がしたと思ったら、抱きしめられ、


「見つけた!ずっと探してたんだ!」


「は?」


正直、誰かわからない。男友達や仲間はいっぱいいるが、違う。

だが懐かしい匂いがする。いつも私を楽しませてくれていた、あの人。


「もしかして、ほむらか?」

「そうだ、そうだよ!糸和津焔いとかずほむらだよ!覚えててくれたんだ!」


忘れるわけなんてない。あの家の中でも否定され続けた私に、唯一できた親友。

大事な友達。だからこそ、ここにいてはいけない。


「おい、そろそろ帰れ。お前には許嫁もいるだろ。」

「大丈夫だよ。今はみんな寝てるし、誰にもバレずに抜け出せたから。」


こいつ、サラッととんでもないこと言ったな。私の妹と結婚を約束しているはず。

自分で言うのもなんだが、糸和津家も、うちの針都はりと家もなかなかの名門だ。

そんな奴がこんなところをうろうろして良いわけない。


「お前は帰れ。早く帰らないと家の奴らから心配されるぞ。」

「今は花夏ちゃんと会えたことに浸りたい。」

「私は花夏じゃない!君矢凛だ!」


焔は凛の大きな声にびっくりして抱きしめていた手が緩んだ。凛はその隙に逃げ出した。


「なんで、そんなこと言うの?確かにあの家は花夏ちゃんには・・・」

「だから花夏じゃない!凛だ!」


その時、焔の目から涙が溢れた。

私も突然のことに驚いた。昔からの涙グセは治ってないみたいだ。


「家に来い。もう遅いから止まっていけ。」


焔は涙を拭った後、嬉しそうな声で「うん」とだけ言った。

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