戯曲『物語は進まざるを得ない』

両目洞窟人間

物語は進まざるを得ない



2023年に書いたまえがき


 この戯曲は2013年の立命芸術劇場の卒業公演の舞台として上演されたもので、その最終稿になります。作は「両目洞窟人間」としていますが、演出補に入ってくれた友人による加筆修正も多く入っていますし、練習中に生まれたアイデアがそのまま作品に活かされたのも多く入っています。

 何が言いたいといいますと「両目洞窟人間」だけの作品ではないということです。

 私一人で作ることができなかったとよく聞く言葉ですが、この作品は本当にそうです。私一人では作ることができなかった。

 何よりも演出補で入ってくれた友人の加筆修正がこの作品をより良いものにしてくれました。今は音信不通なので、名前を載せることはここではしませんが、この作品が、ちゃんと「立った」のは友人の力によるものが多いです。元気にしているかな。元気にしてくれていたらそれで本当にいいなと思う。

  





「物語は進まざるを得ない」





舞台の奥の下手がみわこの部屋 

上手はそれ以外の空間。

妄想は全て手前のスペースで行われる。手前のスペ―スの床は赤色。

現実と妄想のスペースはひな壇のようになっている。低いほうが妄想、高いのが現実。



登場人物 



みわこ      大学4回生。

靖子       みわこの同じ劇団の女。みわことは友人。

みわこの父     みわこの父。

みわこの母    みわこの母

みわこの祖父。  みわこのお爺ちゃん。レイバンをかけるとチョウ・ユンファ。

みわこの祖母   みわこの祖母。回想シーンしか出ない。

武田       みわこと同じ劇団の後輩。

タンクトップ   みわこの書く脚本に出てくるアクション映画風味な登場人物 

怪しげな男    みわこの書く脚本に出てくる黒幕風味な登場人物 

ナレーションの男 みわこの書く脚本に出てくる登場人物。 

若者       みわこの脚本に出てくる登場人物

元気な後輩女子  みわこの脚本に出てくる登場人物、京アニ風味 

ダルそうな先輩  みわこの脚本に出てくる登場人物、最近のラノベ風味 

ロジャー     みわこの脚本に出てくる登場人物 ゾンビ映画風味 

フラン      みわこの脚本に出てくる登場人物 ゾンビ映画風味 

チンピラ1    みわこの祖母に絡む大阪弁のチンピラ。 

チンピラ2    みわこの祖母に絡む大阪弁のチンピラ。

警官       拳銃を持ったまま失踪した警官。みわこの書く脚本にも出てくる。

ジョン・レノン  かの大スター

オノ・ヨーコ   かの大スター

面接官      

キャリアオフィスの人




0 客入れ中。みわこの部屋に薄茶色のぼんやりとした光。(キーソンでアメリカ国家を流したいのでその対比となるようにストリングスと言った派手なアレンジはしていない曲。)



キーソン アメリカ国歌




1 ラシュモア山の裏にあるテロリストのアジト(脚本の世界)

 

 


 ハリウッドアクション超大作映画のクライマックスのように緊張感を煽る音楽が流れている。

 警告音が鳴る。パイプから水蒸気がプシューと吹き出す音もたまに鳴る。

 非常灯のような赤い照明がこの場の異常事態を知らせている。

 その中を、警官が下を向いたまま足早に通り過ぎる。


タンクトップ「動くな!ファッキンテロリスト!」


タンクトップの男は怪しげな男に銃を突きつけている。


タンク   「…マイケル!近づくんじゃない」

怪しげな男 「この戦争でどれだけの人が死んだと思う?」

タンク   「お前を撃ちたくないんだ!」

怪しげな  「お前はそれでもアメリカの犬になりつづけるのか!どうだ答えろ!」


銃声

そして一瞬の静寂。



怪しげ   「(大げさに血をはく演技をしながら)お前っ…」

タンク   「答えてやるよ…この国がどれだけ間違ったことをやっても、俺の母国、そして守るべき国は…UNITED STATES OF AMERICAだ」


(この瞬間感動的な音楽が流れる)


怪しげな男倒れる。

その瞬間、爆発音。何かが崩れる音がする。警告音が更に鋭く鳴る。


タンク   「なんだ!これは!この揺れはなんだ!(全身で足元がおぼつかない演技)」

怪しげ   「(笑い出す)」

タンク   「お前何をした!」

怪しげ   「本当お前はお馬鹿さんだな!」

タンク   「ファッキンシット!」

 

タンクトップの持っている携帯に着信(24のCTUっぽい音ならいい)


タンク   「なんだ!…何!この裏のラシュモア山で爆発?何かの巨大な熱源反応を確認!?何が!?何が起こっているんだ!?」

怪しげ   「俺達の計画は未だ進行中ってことさ(ところどころに血をはく演技をしながら)」

タンク   「何が起こっているか答えろ!」

怪しげ   「教えてやるよ!今ラシュモア山で何が起こっているか!」

タンク   「何が起こっているんだ!」

怪しげ   「何が起こっているんだ?」

タンク   「いやー何が起こっているんだ?」

怪しげ   「うーん何が起こって、起こって、起こって…」

タンク   「何が起こって、起こって、起こって(怪しげな男と声がはもっていく)」


警報音

徐々に暗転



2 みわこの部屋


みわこ 「やってしまった…」


叫び声が聞こえて明かりがつくとそこは若い女の部屋。

テロリストのアジトとは程遠い、普通の部屋。

雑誌やCDや本が転がっている。

壁には映画(ゾンビ映画のポスターなら伏線にもなるので尚よし)や演劇のチラシがはられている。漫画もちらほら。

一番くじで取ったようなアニメのフィギュアもちらほらある。

服もかけられているやつと転がっているやつが半々くらいである。

とにかく雑然としている。落ち着かない。

部屋にはベッドと、小さなテーブルがある。

小さなテーブルはちゃぶ台くらいの大きさ。部屋の奥にはテレビもある。

小さなテーブルの上にノートパソコンに置き、そこでみわこは脚本を書いている。



みわこ「何が起こって…起こって…起こって…。あー駄目だ。これだめだわ、書けないわ」


みわこ ノートパソコンを勢いよく閉める。


みわこ「かけん、かけず、かけるとき?うん、ない、かけない!」


と言いながら一度ベッドに倒れ込む。


みわこ ああ!と言いながら一度ジタバタする。

みわこ 少し寝転んでいた後にむくっと起き上がる。そしてノートパソコンをにらみ、そして正座してもう一回開く。そしてスクロールを何度かする。


みわこ「なんだよ、タンクトップって。テロリストってなんだよ…」


とまたベッドに倒れ込む。


友人の靖子が舞台に現れる(下手に靖子、上手にみわこ)

靖子 みわこに電話かける。


みわこ「あー、靖子おつかれー」

靖子 「おつかれー」

みわこ「うぃうぃー」

靖子 「うぃうぃー」



靖子 「どうよ」

みわこ「何?」

靖子 「脚本。どう」



みわこ「そりゃ、ねえ」

靖子 「よかったちゃんとしてんだね」

みわこ「やる時はね、そりゃ・・・ういうい・・・」

靖子 「間に合うの?」

みわこ「今回は、ちゃんと書いてるから…はげあがるくらい」

靖子 「え、なに今の?」

みわこ「いや面白いかなって…」

靖子 「え?」

みわこ「う、ういう・・・」

靖子 「え?」

みわこ「ごめん」

靖子 「いや、さっきね、正直出来てないんじゃないかって話してて」

みわこ「まじで」

靖子 「超まじで。全然か、変なもの書いてるか」

みわこ「あー…」

靖子 「変なのか?」

みわこ「ええ、今回はみんながわかるものを書いてるつもり…です」

靖子 「ほお」

みわこ「頑張ってる・・・」

靖子 「へえ、さすがのみわこでもプレッシャー感

じるんだね」

みわこ「私だって人の子だもん」


中央より、母入ってくる。


母  「みわこ入るわよ・・・汚な!」


母、たまらず辺りを片付け始める。みわこ、片手で制す


靖子 「じゃあさみわこー」


母の魔の手を避けるみわこ。母、コロコロを手に攻撃を繰り返す


みわこ「・・・なに?」

靖子 「期待してるから、脚本」

みわこ「(母に向かって)ちょっと、そんなのいいから!」


みわこ、ベッドの下に何かを隠しながら電話を続ける。


靖子 「みわこ、絶対諦めたら駄目だからね」

みわこ「あ、うん…頑張・・・」

靖子 「まじで、全員の期待かかってるからね」

みわこ「(母に向かって)もう、そういうのいいってば!」



靖子 「あ、ごめん・・・無駄にプレッシャーかけてたかな?・・・」

みわこ「(首を大きく縦に振りながら)うん、ううん、ううん!」

靖子 「でもみんな本当待ってるから・・・」

みわこ「頑張って、うん、書き上げる」

靖子 「辛かったら連絡ちょうだいね。アドバイスするし」

みわこ「(母に向かって)いらないから!」

靖子 「え、いらないの?」

みわこ「(電話に)いるいるいる、ほしいです、はい。」

靖子 「うん、私今暇だしさ・・・」

みわこ「やっぱ色々忙しんだ?」

靖子 「そろそろ、研修とか入ってくるからね。資格もほしいし」

みわこ「(靖子の話中に相槌を打ちながら)やるから、置いといて」

母  「そうやっていつもやらないでしょー!」

靖子 「え、なに?みわこ、誰かいるの?」

みわこ「親がね、親が・・・」

母  「あら、電話してたの?」

靖子 「あ、なんか急にごめんね」

みわこ「ううん、こっちこそ」

靖子 「じゃあ3日後ね、脚本がんばー」

みわこ「はーい、はーい、はーい」


電話切れて靖子 そのままはけていく。

みわこ 電話を切ってため息をつく。


母  「もう、電話してたなら言ってよー」

みわこ「わかるでしょ普通」

母  「えー。ね、ういういーって何?」

みわこ「ああ、もういいから!」


みわこ、母を部屋から押し出す。



母  「(覗き込み)ね、ういういーって」

みわこ「ああもう、てか聞いてんじゃん!」


母、去る。


みわこ「なんなん、もー」


みわこ起き上がり、ノートパソコンを開いて何かを打ち込んでいく


徐々に照明が赤くなっていき、また警報音とハリウッド大作の音楽がなり続ける。



3 ラシュモア山の裏にあるテロリストのアジト(脚本)

みわこ 部屋で脚本書いている


タンク「俺も未だに自分で自分が信じられねえぜ。ミシェルを殺し、本部を爆破し、そして…

大統領を暗殺しようとしていたテロリストがまさかお前だったなんてな!」

怪しげ「いつから気がついていた?」

タンク「ヤンキースのチケット」

怪しげ「…まさかお前」

タンク「お前にプレゼントしたチケットに盗聴器を仕掛けさせてもらった」

怪しげ「シット!」

タンク「早いクリスマスプレゼントをありがとうよ!メリークリスマス代わりに拳銃で挨拶してやろうか、

このファッキンテロリストさんよ!」

怪しげ「テロリストだって?俺が?」

タンク「それだけじゃまだ足りねえってか!お前はロサンゼルス市警最も最低なクズ野郎さ!」

怪しげ「ジョン僕が何故こんなことをしたかわるか?」

タンク「さあな、マイケル」

怪しげ「この戦争で罪もない人々がどれだけ死んだと思う?」

タンク「マイケルこれ以上近づくと撃つぞ!」

怪しげ「…この国が多くの子どもたちの未来を奪ったことをお前はどう思っているんだ!」

タンク「お前を撃ちたくないんだ!」

怪しげ「お前はそれでもアメリカの犬になりつづけるのか!どうだ答えろ!」


ナレーション「その時だった!アメリカの空は突然光だし、何かがラシュモア山に落ちてきたのであった!!」



戸惑うタンクトップと怪しげな男

照明は眩いばかりの明かりになり、暗くなったと思ったらドドーンと何かが落ちた音がする。


N  「空から落ちてきたものそれは隕石であった!!その隕石には偶然にもイカの形をした生物。通称イカ星人がくっついていた!宇宙は広大、それ故に発見が困難と思われていた地球外生命体との未知との遭遇を今日アメリカ国民は行ったのである。」

ガヤ 「宇宙人だ!」


わいわい騒いでいると気持ち悪いイカエイリアンの叫び声が響く。

そして一拍置いてビームの発射音

そしてガヤの叫び声(うわー。助けてくれ―。もう駄目だー。うわー。)


N  「しかし隕石から這い出てきたイカ星人は友好を求めるどころかアメリカ本土を襲い始めた!逃げ惑う市民!破壊される街!破壊されるアメリカ国民の生活!奪われる愛情、失われていく豊かな大地。もはや自由の国アメリカはこれまでなのか!」


破壊される街の音(なにかビーム的なものが発射されている音だとなおよし)


タンク「くっそ…参っちまったな…AMERICAがあんなイカ野郎に…」

怪しげ「まさかあんな奴がAMERICAにやってくるとはな…さすがのテロリストの俺も降参だよ…」


タンクトップ覚悟を決めた顔をして腰につけている銃を抜き怪しげな男に渡す。


怪しげ「お前…」

タンク「お前は…お前はファッキンテロリストである前に、刑事である前に!男である前に!…AMERICAを愛したことがある人間だろ」

怪しげ「…」

タンク「一度でも好きになった女が危険に晒されている時見捨てる男がどこにいる」


怪しげな男 仕方ねえなって顔をして銃を受け取って。


タンク「お前…」

怪しげ「俺はAMERICAを許したわけじゃないぞ」

怪しげ「いいか1つ言っておくぜ…この国にお灸をすえるのはあんなイカ野郎じゃなくて、俺だってことをわからせてやらねえとな」

タンク「ああ俺たちでわからせてやるんだ」

怪しげ「一緒にAMERICAをイカ野郎から守ろうぜ!」

タンク「ああ!」


2人見つめ合って、笑い合い、グーパンチをぶつけあう。


2人 「よし行こうぜ!」


スローモーションになり空中に銃を撃ちまくる2人。

明かりはフェードアウト。

そこにナレーションが被さる。


N  「全米にこだまするイカ星人の叫び声!人々が絶望に落ちた中、2人の男はまだ希望を忘れていなかった!果たしてアメリカはイカ星人に立ち向かうことができるのか!次週!独立記念日!ご期待ください!」



4 みわこの部屋



明かりが部屋明かりに変わり


みわこ「やってしまった…」


みわこ ベッドまた寝転がる。


みわこ「イカ星人?USA?イカ星人?USA…」


みわこ そのまま眠りにつく。


音楽


窓の外の明かりが早回しのように変わっていく。

そして夜になる。


母 上手に登場


みわこの母「(手を叩いて)みわこーご飯よー」


上手に部屋明かりが灯る。



5 リビング(上手)


みわこ目をこすりながらリビングへ移動。

リビングには母親と父親がいる。


母親 「みわこ、ういういー。ご飯」

みわこ「もうやめてよ」

母親 「今日は麻婆豆腐とたこさんウィンナーよ」

父親 「・・・いただきます」


手を合わせて食べ始める3人。


母親 「みわこちゃん、ここ、よだれ」

みわこ「今何時」

母親 「8時よ。夜よ、暗いわよ」

みわこ「わかってるよ」

父親 「(ため息)」

母親 「あ、みわこ、明後日なんだけど、どっかで食べてくるわよね?」

みわこ「なんで?」

母親 「なんでって、誕生日でしょ?」

父親 「今年は何かほしいものあるのか、みわこ」

みわこ「内定と安定」

父親 「・・・(テレビを点ける)」


テレビ「それでは次のニュースです。警察官が失踪しました」


みわこ箸をとめてテレビをじっと見る(ステージ手前の妄想スペースに目線が行く)


テレビ「行方のわからなくなっているのは26歳の男性巡査長です」


警官 手前のスペースにはけ口からゆっくりと歩いてくる。


母親 「あらやだーこの辺じゃないー」

テレビ「・・・交番を出たのを最後に行方がわからなくなってます」

母親 「怖いわ―。ねー、怖いわ―」

テレビ「また交番近くの河川敷で自転車が捨てられているのを発見されましたが巡査長の行方はわかってらず捜索に全力を尽くすとのことです次のニュースです…」

母親 「怖いわね。あなた達も失踪とかしちゃだめよ。失踪する前には一言言うのよ。失踪しますって」

父親 「みわこ」


みわこの視線の先に、先ほどのニュースの巡査長がふらっと現れる。


母親 「そういえば、同い年の松木さんって今はJAFで働いてるんですって。レッカー車よ、レッカー車」

父親 「みわこ免許はどうするんだ」

母親 「レッカー車運転したいんだったら、免許くらいないと駄目よねえ」


巡査長は困った顔携帯を持っている。

携帯を取り出して、何かを確認したりする。

みわこ 巡査長の行動をじっと見ている。


父親 「みわこ、おいみわこ、おい!みわこ!」


怒鳴られた瞬間、巡査長はそっとはけていく。


母親 「お父さん、大きな声を出さないでちょうだい」

父親 「ちゃんとこっちを見なさい」

みわこ「ご飯のときくらい好きにさせてよ」

母親 「もうみわこちゃんも、テレビ聞こえないわ」

父親 「そんな風に怒鳴り返して」

みわこ「大きい声出すからじゃん」

父親 「口答えするな。だいたい就活もしないで毎日毎日…」

みわこ「やってるよ!」

父親 「じゃあ働く気はあるんだな?」

母親 「みわこちゃん、どうなの?そこのところ大事だからお母さんも聞きたい」

みわこ「・・・」

父親 「上手くいってないのか?」

みわこ「…頑張ってるんだよ」

父親 「頑張ってるってなあ・・・」

みわこ「…」


父親 ため息をつく


父親「どうせまた、適当なんだろ。だいたい頑張るって言っているやつがこんな・・・」

みわこ「うるさいなあ、もうやめてって!」


茶碗をお盆に叩きつける


父親 「みわこ!」

母親 「あら、おかわり?」


みわこ立ち上がって


みわこ「もういい!一緒に食べる気ない!・・・だいたいいつもお母さんたちがそう・・・」

父親 「(麻婆食べて)あ、これおいしい」

母親 「今日の麻婆豆腐、味覇(ウェイパー)入れてるんですよ。」

みわこ「きけや!もういい!」


みわこ 部屋に戻っていく。

みわこ 部屋のドアを叩きつける。



6 みわこの部屋 。



その間、下手は暗くなって、父と母飯を食っている。


みわこ「あああもう!」


ベッドに倒れこんで、スマホを取り出し見る。暗闇の中、スマホの光がみわこの顔を照らす。

妄想世界にサス明かりがつく。

みわこの祖父 妄想世界に現れる。



祖父「ああ、どうも、みわこの祖父です。(腕時計を確認して)◯分後にもう一度登場しますので私についてはその時に。というわけで、(手を上げて)再現コント、みわこの就職活動」


面接官 入ってくる。


面接官「えー。遠藤みわこさん?」

祖父 「あーはい。みわこです」

面接官「男性ですか」

祖父 「女性です」

面接官「じゃあ、面接を始めていきます。志望動機はなんでしょうか?」

祖父 「あの…えーおぅおぅおぅ御社の社風に引かれ…」

面接官「はいOKです。ありがとうございましたー」


面接官がはけていく。


祖父 「えっ?もう?」


キャリアオフィスのお姉さんが入ってくる。


キャリアオフィス「どうもキャリアオフィスの山本です。遠藤…みわこさんですよね」

祖父  「はい、みわこです」

キャリア「男性・・・」

祖父  「女性です」

キャリア「遠藤さん、進路の方はもう決まりましたでしょうか?」

祖父  「いや、それがまだで」

キャリア「ありがとうございますー。遠藤さんこれからも頑張ってください。またキャリアオフィスの利用お待ちしておりますー」

祖父  「あっ…どうも」


キャリアオフィスはけていく。

面接官 また入ってくる。


面接官「みわこさーん」

祖父 「あっはい、みわこです」

面接官「(一度見て)はいOKです。ありがとうございましたー」


面接官はけていく。

取り残される祖父。

携帯のバイブ音が鳴り。携帯を確認する。


祖父「(携帯を見て)落ちてしもうたな…」



祖父、携帯を床に置く。するとバイブ音。取ろうとするとまた着信、着信、着信、着信、着信。

祖父 ため息をつく。

祖父の持つ携帯に着信(iPhoneの着信音ならよし)。


祖父 「はいもしもし」


靖子が妄想スペースに入ってくる


靖子 「もしもしみわこ?」

祖父 「はい、みわこですけど」

靖子 「本当にみわこ」

祖父 「みわこじゃけども」

靖子 「…うぃうぃー」

祖父 「うぃうぃー」

靖子 「まあ、どうでもいいけども、ねえみわこ、話があるんだけど」

祖父 「なんですかのう」

靖子 「私ね、内定もらった!」


祖父 露骨にショックを受ける反応をする。


靖子 「もしもし、みわこ?聞いてる?もしもし」

祖父 「聞いてるよ。そうなんじゃな」

靖子 「うんそうなの、前から行きたかった所だったし、ここでなら頑張れるってところに決まってね」

祖父 「本当よかったのう…」

靖子 「みわこは?」

祖父 「ええ…就活のう…まあ、今、ぼちぼちやってるかな…」

靖子 「みわこ、こう言ったらけど、私本当全力でサポートするし」

祖父 「あ…うん…」

靖子 「暇だし!」

祖父 「おう…」

靖子 「本当なんでも聞いてね!」

祖父 「あのー…どうやったら受かるんかのう…」

靖子 「えーとねえ、まあ決まる時はぽんぽんと決まるよ!」

祖父 「ええ、ぽんぽん」

靖子 「うん。ぽんぽん!」

祖父 「ポンポン…」

靖子 「そう!もっと頑張りなよ」

祖父 「ぽんぽん…」

靖子 「…あのさ、結局冬公演はどうすんの?」

祖父 「ぽんぽ…冬公演?ああ…どうしようかな…」

靖子 「まだ就活まだじゃん。どうすんの」

祖父 「ミーティングっていつ」

靖子 「来週だよ」

祖父 「じゃあとりあえずぽんぽん顔出しますわ」

靖子 「えー大丈夫?無理してない?」

祖父 「まあ、とりあえず顔出すだけだしぽんぽん」


靖子、祖父 はける。


みわこ「顔だけ出すはずのミーティングで、気がつけば私は手をあげていた。脚本の締め切りまで残り3日。」


みわこ 起き上がって、電話をかける。


みわこ「あ、もしもし、靖子?うん。ちょっと脚本のことで・・・」



暗転



7 大学構内 (上手)



向かい合って座っている2人。

靖子は脚本を手に持っている。


靖子 「変なの書いてないって言ったよね」

みわこ「前に言いましたね…」

靖子 「イカ星人って何?」

みわこ「イカ型の宇宙人」

靖子 「イカ星人って何?」

みわこ「…隕石に乗って地球に落ちてきたイカ型の宇宙人で…」

靖子 「そんなことを聞きたいんじゃないんだよ!」

みわこ「何怒ってんの!?」

靖子 「バイト、資格の勉強、研修の準備、あと旅行の準備もしてるんだよ。で読まされた脚本にイカ星人なんて出てきたら怒るでしょ!」


タンクトップの男が顔だけ出して


タンクトップ「くぅー!!忙しい自慢とは!こいつぁ大物だぜ!!」



靖子 「何ぼーっとしてんの!(靖子の怒号と共にタンクトップ、顔を引っ込める)でね!でね大体なにこれ!この終わり方!」

みわこ「何かまずかった?」

靖子 「なんで引き作ってるの!クライマックスしか書かれてない脚本でなんで次回予告なんて入れてるの!」

みわこ「そういうの大事かなって」

靖子 「どういうのだよ」

みわこ「…私、しっかり作ったつもりなんだけど」

靖子 「これで!?」



みわこ「どこが駄目?」

靖子 「まずうちってどんな芝居普段やってる?」

みわこ「会話劇で…リアリティ重視…」

靖子 「(リアリティ重視をかぶせて)うんそうだよね」

みわこ「やっぱ、ごくありふれあ日常の一部分を切り抜いて、そこで暮らす人々の何でもない感情をリアルに・・・」

靖子 「じゃあなんで舞台がまずロサンゼルス市警になんだよ!」

みわこ「それは彼らのリアリティある日常を描こうとして!」

靖子 「拳銃で語り合うのがお前の日常か!前の公演の舞台はどこだったか覚えてる?覚えてるよね?」

みわこ「…中小企業」

靖子 「(中小企業とかぶせて)で、みわこが書いたのは」

みわこ「ロサンゼルス市警」

靖子 「ロサンゼルス市警!ないね、リアリティ」

みわこ「あるよ!リアリティ!」

靖子 「どこに、この話のどこに」

みわこ「このページ…」

靖子 「えっ、何?『さあ、吐かねえとお前が今顔にかぶっているこの袋に水をかけていくぞ』…」

みわこ「米軍で実際に使われている水責め拷問」

靖子 「生々しいわ!」

みわこ「いや、これ本当に、米軍やCIAがこれで情報を得ていたってのが映画でもやってて(段々靖子の空気読んで声が小さくなる)」



靖子 「あのさ…こんな脚本さ、武田くん読んだらどう思うと思う?」


武田中央はけに突如現れて


武田 「みわこさんの書いた脚本超趣味悪いっすよね!マジやばいっすわ、バーストっすわ」


武田 はけていく


靖子 「って」

みわこ「あー、なんか分かんないけどムカつく」

靖子 「でしょうー!でも今じゃこう言われても仕方ないよ」

みわこ「じゃあさ、これどうしたらいいの」

靖子 「書き直しですわな」

みわこ「えっ、できないよ」

靖子 「できるよ、じゃあたとえばね・・・」

みわこ「えっ?」

靖子 「簡単じゃん、リアリティでしょ?いけるいける」

みわこ「いつ?」

靖子 「今」

みわこ「今?」

靖子 「えっとね・・・」


妄想スペースに明かりがつく。昼明かり。そして現実スペースの明かりが消える。


8 天保山の近く(脚本の世界)


波の音。


大阪の男1「結局、お前やったんやな…」

大阪の男2「え、なに?」

男1 「俺、信じてたんやで。お前のこと。でも俺見てもうてん・・・お前と、俺のマイちゃんがもしもしピエロ入っていくん見てんて!なあ言うてくれや!お前ほんまはどうやねん!」

男2 「いや、俺しらんし」

男1 「しらこくなや!」

男2 「根拠はあんのけ」

男1 「俺かてお前のこと疑いたいないねん!でもな、マイちゃんのケータイにな!お前とのキスプリ出てたんじゃ!しかも野獣キスってぼけえおらあ!」

男2 「・・・シット!」

男1 「(頭を抱えながら)どっちや・・・」

男2 「は?」

男1 「休憩か、宿泊どっちやったか聞いとんねやボケコラカス・・・ほんま」

男2 「…」

男1 「はよ言えや!」

男2 「…フリータイム」

男1 「ちょっ…ちょ…ちょお前なんなん!お前何・・・もおー!」

男2 「いや、ちゃうねんで。ほんまちゃうねんて」

男1 「何がや!」

男2 「誘ってきたん、マイちゃんやねんて」

男1 「はあ!?いや嘘こけや」


男2近づきながら


男2「いや、ほんまやねんって!この間飲みに誘われた時あったやん」

男1 「俺まずそれ知らん!いつや!」

男2 「2週間前の月曜」

男1 「ユミちゃんと会うって聞いとったんじゃ!」

男2 「ちょっ落ち着けや!それで鳥貴いってなそれで、お前からのメールがきもいって愚痴られてな」

男1 「あいつ、俺がこれだけ尽くしてきてまだ言うか!」

男2 「だから落ち着いて聞けって!そっからめっちゃボディタッチ増えてきてな」

男1 「お前、何聞かせてくれとんのじゃ!まじで、やめろや!お前、これ以上近づいてくんなやぶち殺すぞ」

男2「めっちゃ触ってきてんって。ふとももの裏めっちゃ手入れてきてんって、そしたら俺の鳥貴族も乾杯ってなるやんか!な?」

男1「俺のマイちゃんそんなことするわけがないやんけ!」

男2「信じてくれや!(携帯取り出して)こんなかあいつとの動画も入っとるねん!お前も見てくれや!そしたらわかるって!」


男1、男2を(もしくは持っている携帯を)床に叩きつける


男1「マイちゃんは俺の女じゃ!よう覚えとけや!」


9 大学構内

妄想スペース暗くなり。2人はけていく

現実にまたあかりがついて。



靖子 「っていう感じ」

みわこ「おおー」

靖子 「場所もねスケールダウンしてるよ」

みわこ「どこに」

靖子 「天保山」

みわこ「ちっせえ」

靖子 「ってかラシュモア山ってどこ、何?」

みわこ「知らない?あの歴代大統領の顔が掘られている山」

靖子 「しらねえよ」

靖子 「でどうよ」

みわこ「うーん。もうーさー靖子が書いてよ!」



靖子 「はあ!?」

みわこ「だって、こんなんすぐに作れるんでしょ、靖子が書いたほうが絶対いいって」

靖子 「やだよ、やだ、忙しいし」

みわこ「…」

靖子 「だから!みわこが言い出したことでしょ」

みわこ「書きます!書きますよ!…時間がある私が書きますよ」

靖子 「嫌味か」

みわこ「違うって!でもこのまま大阪の若者書くわけにはいかないじゃん」

靖子 「そうだね。」

みわこ「だからどうするかなって」

靖子 「なにを」

みわこ「靖子だったらこういう時どうするかなって」

靖子 「私だったら?」

みわこ「なんかアイデアない?」

靖子 「えー!(顔をふせて考えだす)」

みわこ「ってさすがに靖子でもすぐアイデアは出ないよね」

靖子 「(真顔で前を向く)」

みわこ「もうアイデア出たの」

靖子 「とにかく読んで、とにかく書け」

みわこ「へ」

靖子 「へって!アイデアよ!」

みわこ「とにかく読んで、とにかく書け?」

靖子 「借りてきた言葉なんだけど、まあこれだね」

みわこ「もっと楽なの無いの?」

靖子 「あまえるな。書け、とにかく書け」

みわこ「締め切りなあ」

靖子 「あと3日だよ?プロットとか言ってる場合じゃないからね、とにかく書いて、書いて、書きまくるの」

みわこ「できるかな」

靖子 「できるかなじゃなくてやれって」

みわこ「はあ…」

靖子 「(時計見て)あーそろそろ時間だし、帰るわ」

みわこ「えっもう帰るの」

靖子 「色々忙しいの」

みわこ「何あんの」

靖子 「彼氏の誕生日のプレゼント買いに行く」

みわこ「へー」

靖子 「じっくり探したいし、今日は帰るわ」

みわこ「うん、今日はありがとう」

靖子 「まだ休みちょこちょこであるしとりあえず出来たら見せなね」

みわこ「いいよ」

靖子 「じゃあね、また3日後に」

みわこ「ばいばいー」


靖子はける。

みわこ一人残される


みわこ「たんぷれかあ…あれ、私の誕生日いつだっけ?」


みわこ立ち上がり、部屋へと戻る。

部屋のテーブルの前に座る

すると母親がやってくる。


母親 「みわこちゃん、帰ってるの」

みわこ「今帰ってきた」

母親 「今日はどこ行ってたの?」

みわこ「大学、靖子に会ってきた」

母親 「ああそう!靖子ちゃんはどうするの?」

みわこ「何が?」

母親 「就職?」

みわこ「決まってるよ」

母親 「そうなの」

みわこ「靖子、優秀だし」

母親 「へー。どこへ行くの?」

みわこ「さあそこまでは聞いてない」

母親 「えーなんでー」

みわこ「いや、何でって言われると・・・」

母親 「まあ良いけど、これ、みわこ」

みわこ「手紙?」

母親 「こんなね、メール全盛期にねえ」

みわこ「えっ誰?」

母親 「またまたー、コレ(親指)なんでしょ?」

みわこ「いや、いねえし」

母親 「またまたモテるんでしょーみわこー。コレからの、これの、これなんでしょー?」

みわこ「どれだかもう分かんないよ。もててたらこんな部屋になってねえし」

母親 「あー・・・とりあえず、はい」


みわこ 手紙を受け取る


母親 「どうだった?どうだった?」

みわこ「これ、ちがう」

母親 「えっなにが?」

みわこ「こういうの、DMっていうの」

母親 「DM…ドメスティック…」

みわこ「ダイレクトメールな」

母親 「ああ、そう、で、なんて?」

みわこ「中は…就活の案内」

母親 「あれー、みわこちゃん、あれ?」

みわこ「コレ再来年度の」

母親 「なんで来るの?こんなのが?なんで?」

みわこ「…出来が悪いから」

母親 「え?」

みわこ「…ごめん、ちょっと一人にさせて」

母親 「ええ、大丈夫みわこ?お母さんなら話聞くよ?」

みわこ「・・・お母さん、私ね、実は今ね・・・」

母親 「(携帯持つふり)もしもしお父さん?ういういー。いま?うん、ひまー(去る)」

みわこ「きいてけやー!」


みわこ そのDMをゴミ箱に捨てる。

そしてちゃぶ台に座り、ノートパソコンを開く。

しかし一切手が動かない。



みわこ 考えこむ。で、散々悩んで


みわこ「映画見よ(リモコンでテレビつける)」


少しばかり見て


みわこ「これだ」


みわこ ノートパソコンに脚本を打ち込み始める。


暗くなる部屋明かり。

妄想スペースが段々と赤くなっていく。

そしてうめき声の数々。銃声が何度か聞こえてくる。


10 ゾンビに囲まれた山小屋


腕にバンダナを巻いている男ジョンととにかくキャーキャーうるさい女フランが入ってくる。

周りからはゾンビのうめき声が絶えず聞こえている。

ロジャーの手にはライフル。


(基本テンションは海外ドラマのフルハウス、で、こいつら死にかけなのかなってくらい余裕を見せているのに、突然死のことを思い出したようにやる)


ロジャー「この小屋は満員だよ!別の小屋へどうぞ!」


ロジャー はけ口に向かってライフルを撃つ。

フラン山小屋の中を見まわる。


ロジャー「うっ…」


ロジャーその場に倒れこむ。


フラン 「ああ、ロジャーしっかりして!」

ロジャー「くそ、あいつら腕を思いっきり噛みやがった…」

フラン 「せっかくの新婚旅行なのに…ゾンビに追い回されるなんて」

ロジャー「旅行会社にクレーム入れないとなオプションのゾンビはいらなかったって。ああっ!腕が痛い!」

フラン 「ああロジャー!もう喋っちゃだめ!」

ロジャー「どうだ?この山小屋に何か武器になりそうなものはあるか?」

フラン 「見て回ったけども何もないわ。銃も、チェーンソーも、芝刈り機すらないわ」

ロジャー「残るは、このライフル一丁だけか…」

フラン 「こんなことになるって知ってたら、ショッピングモールを旅行先にしたのに…」

ロジャー「ああ、ガンショップがテナントで入ってるモールだったら1万ドルでも参加したさ…くっそ!…」

フラン 「ロジャー?」

ロジャー「腕の血が止まらねえ、ロマンティック状態だ」

フラン 「そんな、C-C-Bだなんて」

ロジャー「俺はもう長くないかもしれないな…」

フラン 「ロジャー…クロエもトムもハーディーもみんな…ゾンビになってその上あなたまでゾンビになるなんて私耐えられない!」

ロジャー「…耐えるんだフラン。歯列矯正は耐えれただろう?」

フラン 「ええ、長い治療にも耐えられたわ」

ロジャー「これは、長い長い歯列矯正の治療だと思ったらいいんだ。どうだい?耐えられそうかい?」

フラン 「歯列矯正の治療じゃ、夫がゾンビなるなんて副作用なかったわ」

ロジャー「何が起こるかわからないから副作用なんだ?そうだろう?(ここで、服の裾をビリっと口で食いちぎる動作)」


はけ口からううう!とゾンビのうめき声


フラン 「ああロジャー!奴らが入り口に!」

ロジャー「(ライフル撃ちながら)パーティーは終わりだ!さっさと帰りな!」

フラン 「やったわ」

ロジャー「フラン、1つ約束してくれ…、俺はあいつらの仲間にはなりたくねえ…だから…このライフルで…」

フラン 「ロジャー、そんなの嫌!私そんなの嫌!」

ロジャー「頼む…。俺からの願いだ。俺の願いと冬場の石油ストーブからの願いはちゃんと聞くもんだだ」

フラン 「一酸化炭素中毒は怖いものね」

ロジャー「不具合が出たらすぐに会社に電話だああくっそ!視界がぼやけて来やがった!」

フラン 「ジーザス・クライスト…」

ロジャー「泣くんじゃねえよ。俺の可愛いミスドのドーナツよりも甘いスウィートガール」

フラン 「それはとても甘いわね」

ロジャー「フラン、俺たちが結婚式をあげた教会覚えているか?」

フラン 「勿論よ!となりに風俗店があるあの教会」

ロジャー「式の間、ずっとステンドグラス越しにネオンサインが見えたあの教会さ」

フラン 「それがどうしたの?」

ロジャー「俺があそこでした願いは2つあるんだ」

フラン 「ロジャー、聞かせて」

ロジャー「1つはお前との結婚が永遠に続きますように」

フラン 「もう一つは?」

ロジャー「もう一つは、もし子どもが出来ても、テロリストにはならないようにってな…」


またうううとうめき声が聞こえる。


ロジャー「グッナイ!いい夢を!」

フラン 「ロジャー…私、あなたに言ってなかったことあるの…」

ロジャー「なんだ?払ってない公共料金でもあったのか?」

フラン 「ロジャー、あなたパパになるのよ」

ロジャー「…それって…まさか」


フラン お腹をさすりながら。


フラン 「私達の子どもよ」

ロジャー「はっはははは。こんなくそったれな日に、こんな最高なことが起こるなんてグフッ!グフフフっ!」

フラン 「ロジャー!」

ロジャー「お迎えが来たようだぐふフフフ!」

フラン 「いや!ロジャー!」

ロジャー「元気で…暮らせよ…」

フラン 「オーマイガー!ロジャー!ロジャー!」


死を看取ると、フラン間髪入れずにロジャーの頭を打ち抜く。


フラン「弾丸のおかわりはいかが死にぞこないどもめ!」


と言ってはける。その数秒後申し訳なさそうに後ろからロジャーもついていく。


みわこ見送り。


みわこ「やってしまった」


みわこ うめき声を漏らしながら頭を抱える

みわこ また凄く悩む。悩んで悩んで。


みわこ「アニメ見よ」


みわこ しばらくアニメを見る


みわこ「これだ」


みわこ ノートパソコンにタイピングし始める。


部屋の明かりが消えていき、妄想のスペースが明るくなっていく。

色は朝っぽいやさしい白色。

妄想スペースが明るくなると、朝っぽい音が聞こえてくる。



11 高校


チャイムの音。

学生服を着たダルそうな先輩が歩いている。

ダルそうな先輩あくびをしている。


クロちゃん  「(ダルそうな先輩の裏声)この狭い場所から出してくれ―」

ダルそうな先輩「しっ!お前が見つかるとややこしいんだよ!」

クロちゃん  「わしは誇り高き聖獣じゃぞー!それをこんなところに閉じ込めよって!」

ダルそうな先輩「もうすぐで学校なんだから出てくるなって!」


元気な後輩女子がダルそうな先輩にぶつかる。(どーんとか言いながら)

(元気な後輩女子 京アニのアニメを足して何も割っていないような雰囲気)


音楽 ラノベ原作アニメのギャグパートで流れていそうなやつ。


ダルそうな先輩「痛ってえ!」

元気な後輩女子「先輩!今日こそは絶対に部活に来てもらうんでぃすからね!」

ダルそうな先輩「俺は一度も文芸部に入るなんて言ってないぜ」

元気な後輩女子「ふふふ!もう遅いのでぃす。私の文芸部センサーが反応した生徒は全員入ってもらうのでいす」

ダルそうな先輩「ったく。入らねえって言ってるだろ」

元気な後輩女子「宮本先輩や千夏ちゃんも入ってるのにでぃすか?」

ダルそうな先輩「あのクールな眼差しで有名な生徒会長の宮本先輩とドジっ子幼馴染の千夏が!?」

元気な後輩女子「これでも入らないでぃすか?」

ダルそうな先輩「それでも俺は入らない」

元気な後輩女子「なんででぃすか?」

ダルそうな先輩「それは…」

元気な後輩女子「あれ?(ポケットのクロちゃんに気がつく)」


元気な後輩女子 ポケットのクロちゃんを奪い取る。


クロちゃん  「こらっ!この小娘!何をするんじゃ!」

元気な後輩女子「先輩!学校にぬいぐるみなんて持ってきてるんでぃすか!?」

クロちゃん  「誰がぬいぐるみだ!わしは誇り高き聖獣じゃぞ!」

ダルそうな先輩「お前…クロちゃんのことが見えんのか!(小声で)こいつ異世界と通信できる能力ダイソンもってんのか…」

元気な後輩女子「クロちゃん?先輩、ぬいぐるみに名前をつけてるんでぃすか」

クロちゃん  「はなせ!この小娘!はなさんかー」

ダルそうな先輩「って大事なもんだから返せよ!」


ダルそうな先輩 クロちゃんを奪い取る


元気な後輩女子「もう先輩のいけず!」

ダルそうな先輩「うるせえ」

クロちゃん  「おい小僧!この小娘からはダイソンの気配は感じんぞ!」

ダルそうな先輩「じゃあなんでクロちゃんの姿が見えたんだ…」

クロちゃん  「まさか、妖鬼!」

元気な後輩女子「ふっふっふ。バレてしまうとはな」

ダルそうな先輩「まさか俺たちが倒して回ってる妖鬼が俺の後輩にまでついてたなんて!」

元気な後輩女子「この人間の身体は使いやすかったわ…もう少しでVHSを手に入れることが出来たのにのう」

ダルそうな先輩「7つ集めると世界を変えられるVHSを後輩を使って集めようとしただって!くっそ許せねえ!おい妖鬼!今すぐ後輩から離れろ!」

元気な後輩女子「後輩?お前はこの人間のことを嫌っていたはずじゃないか?」

ダルそうな先輩「面倒くさい後輩ほど可愛く思えるもんだぜ」

元気な後輩女子「この人間風情が!わしの攻撃を食らうがいいわ!」


元気な後輩女子 片手を突き出すと風が。様々な攻撃を繰り出す。


ダルそうな先輩「なんだこの風!見た目以上に強いぞ!」

クロちゃん  「こいつは風使いタイプの妖鬼じゃ!油断すると吹き飛ばされるぞ!」

ダルそうな先輩「わかってるってクロちゃん!くっそ近寄れねえ!」

元気な後輩女子「どうした人間ども、わしの風の前じゃ手も足も出ないか」

ダルそうな先輩「くっそ!どうしたらいい!」

クロちゃん  「わしを手につけるのじゃ!」

ダルそうな先輩「そっか!おっけークロちゃん!」


クロちゃんを手につける。


ダルそうな先輩「聖獣を身にまとうことで攻撃力は少なくとも120%上昇する聖獣拳を手にすることができるのだ!ドーン!聖!獣!拳!」

元気な後輩女子「なんだ!あの構えは!」

ダルそうな先輩「妖鬼!俺の聖獣拳を喰らいやがれ!うおおおおおお!」


ダルそうな先輩 そのままクロちゃんで元気な後輩女子の頭を叩く。ここだけリアルな暴力。

元気な後輩女子倒れる。


ダルそうな先輩 アニメに戻って決めポーズを決める


ダルそうな先輩「(肩で息しながら)やったか?」

元気な後輩女子「あれ、先輩!私、今何を」

クロちゃん  「どうやら妖鬼は逃げたみたいじゃ!」

ダルそうな先輩「やった」


チャイムの音


元気な後輩女子「あっはやくしないと遅刻しちゃうでぃす!学校にいくのでぃす!」


後輩 はけていく。


クロちゃん  「あいつ…お前の相棒になるぞ…」

ダルそうな先輩「えっアイツが?」

クロちゃん  「四天王討伐のためじゃ」

ダルそうな先輩「退屈な日常が早く戻ってきて欲しいぜ」


チャイム


ダルそうな先輩「やっべ、遅刻だ!」


先輩 去り際に”何か”の気配を感じたような顔をするが、気のせいか、と思い直してはける。


みわこ「…やってしまった」


警官、おもむろに舞台に入ってくる。


警官 「俺こんなんになりたかったんじゃないんだけどなあ・・・」


暗転



12 みわこの部屋



翌日。

靖子がみわこの部屋に来て、ノートパソコンを奪いとり脚本を読んでいる。


みわこ 気まずそうに座っている(落ち着かなくてペットボトルのお茶を飲んでる)。


靖子 「何これ」

みわこ「…脚本」

靖子 「でしょうね」

みわこ「…どっすか」

靖子 「どっすかじゃねえよ」

みわこ「そっすね」

靖子 「…まじで聞いていい?何を思ってこれ書いたの」

みわこ「よく読んで、よく書きました」

靖子 「変なの書くなって言ったの忘れてた?」

みわこ「あっ」

靖子 「あっ、じゃねえよ、おまえ、あ、じゃ…」

みわこ「ごめん」

靖子 「…で、書いたのがこの2つ」

みわこ「はい」

靖子 「まじか」

みわこ「まじです」

靖子 「お前の趣味ダダ漏れじゃねえか」

みわこ「ダダ漏れだった?」

靖子 「とくにアニメっぽいのは見てられなかった」

みわこ「すんません」

靖子 「胸焼けで吐くかと思ったわ」

みわこ「すんません…はい…」


母 中央はけから登場


母  「ういういー」

みわこ「あっ」

母  「どうも、みわこの母です」

靖子 「どうも初めまして岸田靖子です。いつもみわこさんと仲良くさせていただいております」

母  「あーこれは丁寧にどうも、あのこちらね、高いお菓子なの、もし良かったらどうぞ」

靖子 「すいません。ありがとうございます」

母  「遠慮無く食べてね。高いやつだからあのね、もう、みわこが家に友達を連れてくるなん

てねえ、もう汚い部屋でごめんなさいね」

靖子 「いえいえ」

みわこ「もう、お母さん、いいでしょ」

母  「あら、みわこみっともないわよ!」

みわこ「もうやめてよ!」

母  「本当困るのよねー。…ねえ靖子ちゃんって就職決まったんですって?」

靖子 「えーまあーはい」

母  「失礼かもしれないけど、どこ受かったの?」

みわこ「お母さん」

靖子 「大したことないのですが、地銀に受かりました」


フラン「ジーザスクライスト」


母  「あら…そう!ちぎんね、ちぎん(つぶやき続ける)」

みわこ「…靖子…おめでとう!言ってよ!」

靖子 「いやほら、みわこ続けてたし、どこで働くかは言いづらくてさ」

みわこ「そんなの!どこで働いても応援するよ」

靖子 「本当!?ありがとうー」

母  「それじゃあ、ちぎんちゃん、あ、靖子ちゃん。ゆっくりしていてね。お菓子、高いやつだから、食べてね、それじゃあね」


母 出て行く。


みわこ「(一口つまんで)あっま、顎いた」

靖子 「大丈夫?」

みわこ「最近甘いものを体が受け付けなくってさあ」

靖子 「あーわかる。ケーキとかね」

みわこ「そうそう、この前の誕生日の時さ・・・あれ?」

靖子 「みわこ?」

みわこ「私の誕生日いつ?もうしたっけ?」

靖子 「は?あ、成る程・・・そういや3日後だったね」

みわこ「3日?あっれ・・・」

靖子 「みわこ欲しいモノとかある?」

みわこ「安定と内定」

靖子 「ああ・・・いや、良いよ今はそんなこと!

みわこ「そんなこと?」

靖子 「とりあえず脚本どうするか考えよ」

みわこ「うん、よっしゃ、気合い入れた!とりあえずどこが駄目か言っていって!」

靖子 「うん、全部」

みわこ「うわー」

靖子 「出来の悪い二次創作。全部」

みわこ「うわあ」

靖子 「あの武田君がよくこういうやつ」


武田 「うわーこの漫画!これとあれとあっちとそっちのパクリじゃないっすか!!作者よく息してられるよなー!マジ信じられねえ!死ねや!」


みわこ「抉ってくるな」

靖子 「今のままだと、こういわれるよ」

みわこ「じゃあ、どうしたらいいの、助けてよ」

靖子 「そう言われると思って、アイデア…持ってきました」

みわこ「さすがリア充」

靖子 「バカにしてるよね」

みわこ「バカにしてないよ」

靖子 「(舌打ち)」

みわこ「言わない」

靖子 「で、実際のニュースから書くってのどう!上手く行ったら社会派だよ!」

みわこ「…あー」

靖子 「どうした」

みわこ「これ夢で見たわ」

靖子 「どうでもいい!」

みわこ「書ける気しないよ」

靖子 「なんでこんないいアイデアなのに」

みわこ「だって今の私だと国会にエイリアン乱入させちゃうよ」

靖子 「そしたらもう一つ、とても簡単に膨らませれる物がある」

みわこ「簡単にふくらませる?なにを?」

靖子 「(肩パン)」

みわこ「すんません」

靖子 「この物語は実話に基づいているby…」

みわこ「by…?」

靖子 「自分or家族」

みわこ「おお!」

靖子 「オンリーワンかつナンバーワン」

みわこ「やべえあがる!」

靖子 「どうよ!書けるネタない?」

みわこ「うーんとねえ」

靖子 「ほら、なんか恋話とかないの?」

みわこ「恋話!?恋話ね!恋話は・・・」

靖子 「えっあんの聞かせてよ!」


みわこ「ええとあれは…

(と言いながら、妄想スペースにジャンプ)」


降り立つと武田がジャンプを持って立っている。



武田(妄想の中ではTけだと呼ばれる)ジャンプの死ぬほど後ろのページをじっくり読んでる。


武田 「へーあの先生、テレビ買ったんだ」

みわこ「Tけだ!」

武田 「あっみわこ先輩じゃないっすか。っちっす」

みわこ「Tけだ!あっマンガ!」

武田 「あっそっすよ。ジャンプ読んでるんっすよ!」

みわこ「そうなんだ」



みわこ「あっTけだが前に勧めてくれたネウロ読んだよ!」

武田 「(鼻で笑う)えっ今すか!」

みわこ「うん!(頷く)」

武田 「まじっすか!超遅いっすよ!」

みわこ「Tけだ?」

武田 「今は暗殺教室っすよ!やべえみわこさん超うける」

みわこ「そんな面白いこと言ったかな」

武田 「っはい」

みわこ「あっそう」

武田 「やべえ超うける」


いたたまれないくらいの間


みわこ「あのさあTけだ。12月24日って空いてる?」

武田 「あ?」

みわこ「クリスマス・イブって空いてる?」

武田 「みわこさん…空いてるわけないっすよ!」

みわこ「えっ?」

武田 「だってクリスマスっすよ!そんなの埋まってるに決まってるじゃないっすか!」

みわこ「そうだよね!そうだよね!勿論、彼女とだよね」

武田 「ちゃっす」

みわこ「えっ?」

武田 「セフレっす」

みわこ「ああ…」

武田 「彼女は普通にクリスマスっす」

みわこ「ああ…」


みわこトボトボと帰ってくる。


みわこ「っていう」

靖子 「お前の恋話これ?」

みわこ「これ」

靖子 「あと武田・・・Tけだにバカにされすぎじゃない」

みわこ「でも好きだったし」

靖子 「なんで」

みわこ「雰囲気?」

靖子 「あっそう」

みわこ「で、これさ使えるかな」

靖子 「使えないに決まってるじゃん」



靖子 「ってかお前武田好きだったの?」

みわこ「Tけだ!」

靖子 「武田!」

みわこ「Tけだ」

靖子 「どうでもいいよそのイニシャルトーク」

みわこ「いいじゃん誰が好きだって」

靖子 「でも今、彼女いるよ」

みわこ「えっ?」

靖子 「うん」

みわこ「えー」

靖子 「で!どうすんの!」

みわこ「うわあ…」

靖子 「他に恋話とかないの?」

みわこ「親はなあ、うーん」

靖子 「ああもう、おじいちゃんとかないの?」

みわこ「おじいちゃんね、あー、はいはい、いるわいるわ」

靖子 「お前適当か」

みわこ「あっでも、なんかおばあちゃんと大恋愛をしたって言ってたかも」

靖子 「いいじゃん、じゃあそれ書きなよ」

みわこ「でも、大丈夫かなあ・・・」



みわこ「ってかTけだ新しい彼女いるの!?」

靖子 「武田!」

みわこ「Tけだ!」

靖子 「武田!」

みわこ「Tけだ!」

靖子 「どうでもいいわ!今!でどうなの、書けんの!?」

みわこ「おじいちゃん最近ぼけてきたらしいからなあ」

靖子 「今からでも聞きに行きなって」

みわこ「ええ、今から?ええー・・・」

靖子 「武田にばらすぞ!」

みわこ「いや、言わないで!」

靖子 「じゃあ行けよ!」

みわこ「はい!」

靖子 「みわこ、ラストチャンスだからね、わかってる!?」

みわこ「はい!」

靖子 「わかったら聞きに行け!今すぐ行け!早く行け!」


暗転


13 祖父の家


みわこ「というわけでおじいちゃんの恋話聞かせてよ」

祖父 「ええよ…そうじゃな…ええっと、どちらさん?」

みわこ「いや、みわこだってば」

祖父 「たまこ?」

みわこ「み、わ、こ」

祖父 「たまーこ?」

みわこ「だからみわこ」

祖父 「たま・・・」

みわこ「みわこ!じいちゃんやっぱりぼけてきてんじゃん」

祖父 「(笑いながら)いや、そんなわけないっしょ」

みわこ「え、じいちゃん?え?」

祖父 「んで、たまごくらぶが何しに?」

みわこ「何だよ、たまごクラブって、それ言いたいだけだろ」

祖父 「じゃあ何じゃ」

みわこ「死んだおばあちゃんとの恋話」

祖父 「あーそっち、そっちね」

みわこ「どっちだよ・・・おじいちゃんそれなに?」

祖父 「その時かけてたんだよ、こっちの方がリアリティあるじゃろ?(ゆっくりレイバンのサングラスをかけながら)時は1960年…」

みわこ「え、もう?(メモ取り始める)」

祖父 「ばあさんとは、梅田で出会ったんだ。」

みわこ「口調変わってね?」

祖父 「その時俺は、このレイバンをかけていた」


その瞬間、祖父ストップモーション。


みわこの心の声「あ、チョウ・ユンファっぽい・・・」


みわこの心の声が流れる中、妄想スペースにチンピラが入ってくる。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」のテーマ曲が流れる。

照明が中国っぽい色合いに。

壁に「1960年 梅田」と出る。

チンピラ二人組が街を歩いてる

若き日の祖母が向かい側から歩いてくる

チンピラ2 祖母近寄る


チンピラ1「なあ姉ちゃん!一緒にあそぼうや!」

祖母   「なんですか、忙しいんですけど」

チンピラ2「そんなこと言わんとなあご飯食べようや!一緒にお好み焼き屋でカチャカチャキャベツ混ぜようや!」

祖母   「いやです!もうお昼済ませてきましたから」

チンピラ2「お昼の話しとらんのじゃ!晩飯の話をしとんのじゃ!」

祖母   「帰ります!帰らせてください!」

チンピラ2「まだまだ今日という日は始まったばかりなんじゃ!俺と一緒に大阪感じようや!」


祖母の手をつかむ。


祖母   「いやです!いやー!いやー!」

チンピラ1「兄貴に逆らったらただやおかへんで!」

祖母   「いやー!誰かー誰かー!」

祖父   「全く。今日は真っ昼間から犬がよく吠えてるぜ」


すると下手の祖父が立ち上がって、妄想スペースに歩いていく。


チンピラ1「兄貴なんか近づいてきますぜ!」

祖父   「おうおうおう。こんな梅田の真ん中で、女の子相手に男が2人とは情けないねえ」

チンピラ2「なんや!お前!なにもんや!いてこますぞ!」

祖父   「俺か?俺はそこ店で炒飯を食べていただけの男さ」

チンピラ1「そいつが何の用や」


ウェイターが後ろから恐る恐る近づいてくる。


祖父   「おいお前、あそこの炒飯を食べたことがあるか?」

チンピラ1「いや、ねえけどよお」

チンピラ2「何答えてんだ」

祖父   「そうかい。へへへ。それはもったいないな」

チンピラ1「兄貴は忙しいんじゃ、帰ってくれるか」

ウェイター「あのすいませんお代…」

祖父   「あそこの炒飯の何がいいって?全てさ」

チンピラ1「こいつ…」

ウェイター「あの炒お代もらえますか…」


祖父   ウェイターを手で制して


祖父   「あの炒飯にはな、宇宙の真理が詰まってるんだ。油でギトギトした米粒はこの世の不条理。噛めば噛むほど味が染みるのは苦労の後にこそ幸福が来るという真理…」


チンピラ2「(食い気味で)なにを言うてんねや」

祖父   「俺はな!その炒飯を食べている時間がこれ以上になく幸せなんだ。それをお前達の田舎の公衆便所みてえな汚い声で汚されたくないんだ」

チンピラ1「なんだとお前!」

チンピラ2「やんのかこらあ!」

祖父   「騒ぐんじゃねえよチンピラ風情が。俺とやりあったら怪我するぜ」

チンピラ1「ぶっ殺してやる!」

ウェイター「あのお代」


警官、普通に上手より入って来て、事態におののく。

音楽 映画「男たちの挽歌」のマークのテーマが流れる。


チンピラ2「きいつけろよ兄ちゃん、こいつはこう見えてちょっとばかし空手をかじっとてなあ・・・見せたれ」

チンピラ1「へい!コーホー(空手の型を見せ始める)」

ウェイター「なんてキレだ・・・!」

警官   「やばいやばい、救援呼ばなきゃ」

チンピラ2「(前にでる)どうや、お前なんて・・・・」


祖父、チンピラ2に拳銃を突きつける

その瞬間、音楽がカットアウト。


チンピラ2「チャカはあかんてえ」

祖父   「ノーノーノーソーリー(男たちの挽歌2のチョウ・ユンファの言い方で)」

チンピラ2「くっそ!憶えていやがれ!」

チンピラ1「兄貴待ってください!」

祖父   「…全く、炒飯冷めちまったぜ…嬢ちゃん怪我は?」

祖母   「あっはい大丈夫です」

祖父   「そうか、じゃあな」

祖母   「…あの私もその炒飯食べていいですか?」

祖父   「うん?」

祖母   「わたしも、油でギトギトの炒飯食べてみたいんです」


祖父、満面の笑みを浮かべると同時にマークのテーマ。

祖父 祖母をつれてはけていく。


祖父「実はな、こんなとこよりもっと美味しい店があるんだ、そっちに行こう」

祖母「はい!」


祖父たちが見えなくなったら


警官「なんだったんだあれ・・・」


ウェイター後に我にかえって


ウェイター「ちょっとお代!!」


音楽も消えて。

みわこ、警官取り残される。


みわこ「またやってしまった」


警官、みわこを見つける


暗転



14 部室


ジャンプを読んでいる武田

武田「(最近のジャンプについて何か一言)」

靖子が入ってくる。

武田「あ、靖子さんっちす」

靖子「今、武田しかいないんだ」

武田「俺だけっすね!なんですっげージャンプ読めたんすよ。」

靖子「あっそう」

武田「本当やばいっすわ、暗殺教室」

靖子「またその話?」

武田「本当やばいんすよ。まじで、はい、ってか靖子さんネウロ読んでました?」

靖子「読んでないけども」

武田「えー、ネウロ読んでないんっすか。うーわ。引きますわ―」

靖子「そんな引く?」

武田「やばいっすよ」

靖子「そんなにマンガ読まないからわかんないよ」

武田「やばいっすね」

靖子「そうだよ」

武田「やばいっすわ」



靖子「ってかお前、マンガかやばいしか言わねえのかよ!」

武田「なんすか!何切れてんすか」

靖子「きれてねえよ!」

武田「靖子さん本当やばいっすから」

靖子「はあ?」

武田「すぐバーストするじゃないっすか!」

靖子「そのバーストってなによ」

武田「やばいっすわ。そんなことより、みわこさんやばいんすか?」

靖子「みわこの何がやばいの?」

武田「脚本っす」

靖子「あーそれね。あー。どうしたもんだろなー」

武田「やばいっすか?」

靖子「どうだろなーこれ話していいのかなー」

武田「俺、超口硬いんで、大丈夫っすよ、はい」

靖子「すっごく信用なんねえなあ」

武田「信用できる男NO1っすから」

靖子「信用できないけど絶対言わないでよ。他の団員には」

武田「言わないっすよ。まじ誓うっす(胸をとんとん叩く)」

靖子「みわこ、連絡取れないのよ」

武田「やばいじゃないっすか、いつからっすか」

靖子「あいつの誕生日から」

武田「やっべえそれいつっすか」

靖子「3日前、それまで毎日連絡とってたのに」

武田「やばいっすね。メンタルバーストしてんすかね」

靖子「メンタルバースト?」

武田「めっちゃメンタルやべえってことっすよ」

靖子「前に会った時、書けないって言うから、おじいちゃんの恋愛を書いたらって話になって」

武田「やばいっすね」

靖子「で、おじいちゃんに会いに行ってから連絡がない」

武田「やばいっすね」

靖子「なにかあったのかな」

武田「メンタルバーストしちゃうようなこと言ったんじゃないんっすか」

靖子「えー、みわこに残ってるチャンスなんてほとんど無いって言ったのまずかったかな」

武田「それ超やばいっすよ。そりゃバーストだわ」

靖子「でも、書くって言ったのみわこだよ」

武田「やばいっすよ正直、脚本できてんすか」

靖子「全然」

武田「超やべえ。じゃあバーストしてんじゃないっすか」

靖子「かなあー」

武田「正直、どうなんっすか?」

靖子「なにが」

武田「みわこさん、書ききれるんっすか?」

靖子「わかんない」

武田「やべえ。そういえばみわこさん就職もやばいっすよね」

靖子「あーそういえばね」

武田「バーストっすねまじ、何増やしてるんすかね」

靖子「何って」

武田「何って…負担っすよ」



下手暗くなり。2人はけていくのと同時に、妄想スペースにサス明かりがつく。



15 若者の悩みを描いた話を書こう。


警官がゆっくり入ってくる。


耳に携帯を押し当ている。どうやら電話をしているようだ。


警官 「(先輩から飲み会の幹事を押し付けられている)今週、僕が幹事やらなければ行けないんですか…。えっ、いや、嫌とかじゃないですけども。…わかりました。準備しておきます」


警官 ため息を尽きながらはける。

代わりに若者が現れる。そのまま妄想スペースのサスに移動。


若者「(時計を見るような仕草)あー12時過ぎてるじゃん、まあいいや、今日は自主休講しよ」


物凄く長い間


若者 「めんどくせー、はらへっ・・・めんどくせー」


中央のはけ口からみわこが歩いてくる。立って。


みわこ「私が、必死に絞り出した今時の若者の物語は、物語にすらならなかった。」


若者、だらけ続ける


みわこ「(若者に)でも死にたいわけじゃないんだよねえ」

若者 「・・・」

みわこ「おい無視か」


若者 そのままはけていく。


みわこ「おい、おいってば」


みわこ 一人残される。

中央はけから、みわこが前に書いたラノベ風作品に元気な後輩女子が現れる。

そのままみわこの隣に立つ

気まずい間


みわこ「えーと何?」


後輩女子、みわこを蹴る。


みわこ「ちょっと何!」


二、三回蹴って、止めて、目を合わせて、また蹴る。


みわこ「やめて!なんで蹴ってくんの!」

元気な後輩女子「(無言)」

みわこ「痛い痛い痛い!ちょ、こわいこわいこわい」



蹴りと殴りを織り交ぜたコンボを決めてくる後輩女子。フェイントも織り交ぜてくる。心理戦。


みわこ「ちょまじで、痛いから!まじで!まじで!」

母親「(ハケ裏から)みわこ、ご飯よーみわこ、ご飯よー」

元気な後輩女子「邪魔入ったし、帰るのでぃす!」


元気な後輩女子 中央はけから出て行く。

みわこ放心状態。とりあえず部屋に戻る。

上手に明かりがつく。上手にみわこの母親が現れる。


母  「ご飯よー」

みわこ「…はい…」


みわこ下手へ


16 食卓


母  「みわこ涎」

みわこ「ああ、なんか嫌な夢を見た」

母  「ええ、そうなの?実はねお母さんもねひどい夢見たのよ」

みわこ「そうなの」

母  「あのね、私が山道をね歩いていたらね、突然ねその山道が爆発するの」

みわこ「で」

母  「で、何かなーって思ったらね、ウルトラマンがいるのよ。ウルトラマンが私一人を狙ってスペシウム光線撃っていたのよ」

みわこ「それでどうなったの」

母  「まあ怖かったわー怖かったって話」

みわこ「ああ…そう」

母  「で、どんな夢見たの?みわこちゃんは?」

みわこ「まあ…よくある嫌な夢だよ」

母  「ああそうなの。今日はね、豚汁なのよ」

みわこ「あそうなの」

母  「豚汁って不思議よね」

みわこ「不思議なことある?」

母  「豚汁ってね、豚の汁って書く割りには結局豚肉が入った味噌汁だったりするわけじゃない?」

みわこ「あー」

母  「豚味噌汁でいいわよね、ねー」



母  「みわこ、昨日どこにいたの?」

みわこ「えっ?」

母  「ごはんに呼んでも起きてこないし、見に行ってみたら居ないし」

みわこ「ええ、居たんだけどなあ」

母  「お持ち帰りされたんだったら、そう言わなきゃだめよ」

みわこ「だから違うって・・・ただ」

母  「何か思い当たった?」

みわこ「ただ、ここ最近おんなじこと繰り返してる気がする・・・」


インターホンが鳴る。


母  「お父さんかしら。はいー」


母 一度はける


はけ口から父と母の会話が聞こえる。

父  「今日のご飯って?」

母  「豚汁と生姜焼きです」

父  「へー豚ばっかりだねえ」

母  「豚ばっかりでしょう」

父  「でも、なんで豚汁って豚汁って言うんだろうね」

母  「豚味噌汁でいいはずなのにねえ」

父  「豚味噌汁でいいはずだよねー・・・みわこいたのか」

みわこ「ん」

父  「テレビ。」


みわこ リモコンを渡す。

父 リモコンを受け取りテレビのスイッチを入れる。



テレビ「警官は拳銃を持ったまま失踪していることが発覚しました。」


みわこ 箸をとめて、ニュースをじっと見る。


テレビ「巡査長の行方は未だ不明です。次のニュースです」


みわこ「…」

父  「このニュースがどうかしたか?」

みわこ「あ、うん」

父  「逃げたんだな、こいつは」

みわこ「…なんかあったのかもしれないじゃん」

父  「理由なんてあっても逃げる奴はクズだよ」

母  「クズなのね」

みわこ「そこまで言わなくて良いじゃん」

父  「…何を突っかかってきてるんだ」

みわこ「別に」

父  「…たかがニュースだぞ」



母  「そういえば、みわこお持ち帰りされたんですって」

父  「なに!」

みわこ「だから違うって!」

父  「お、お持ち帰りって、おまえ」

みわこ「だから昨日はどこにも行ってないって」

母  「いやね、お父さん、みわこもあと3日で23ですよ?お持ち帰りなんて呼吸するくらいに普通よ」

みわこ「え、3日?」

父  「そうか、息をするようにか・・・」

みわこ「娘の話を聞け!ずっと部屋にいたってば」

父  「じゃあ部屋で何してたんだ?」

みわこ「・・・脚本書いてる」

父  「脚本?」

母  「脚本ってなんの?」

みわこ「冬公演の脚本」


気まずい間


父  「…お前、23にもなって」

みわこ「…大事なことなんだよ」

父  「そんなことがか」

みわこ「大事なの・・・書きたかったの」

父  「かけたのか?」

みわこ「…」

父  「ほらな」

母  「お父さん」

みわこ「頑張ってるんだもん」

父  「逃げるな」

みわこ「逃げてないもん・・・」

父  「それを社会では逃げというんだ、恥ずかしい」

母  「みわこちゃん」

みわこ「…私だって、本当はわかってるよ…」


みわこ そっと立ち上がって、部屋に戻っていく。



17 自室


みわこ うなだれるようにベッドに座る。

みわこ 靖子に電話をかける。


みわこ「もしもし靖子?」

靖子 「みわこ、今まで何してたの!」

みわこ「私もう書けない…書けないよう」

靖子 「今忙しくて、長く話せないんだけど」

みわこ「私…、自分のことも書こうとしたんだよ…でも、でも…もう書きたくない…」

靖子 「ごめん、今本当忙しいから」

みわこ「何してんの」

靖子 「内定者飲み会」

みわこ「…そうなんだ」

靖子 「…ねえみわこじゃあさ。おじいちゃん殺したら」



みわこ「靖子何言ってるの」

靖子 「もうおじいちゃん殺そう。みわこならやれるって」

みわこ「やれるわけないじゃない!」

靖子 「物語で死っていったら王道じゃん!書きなよ!」

みわこ「えっ?」

靖子 「何とぼけてんの、脚本の話でしょ!書いたらいいじゃん」

みわこ「やだ…」

靖子 「なんで?」

みわこ「やっぱ生きてる人にそんなことしたくない」

靖子 「はあ?じゃあゾンビになったロジャーさんは」

みわこ「あれは架空の人だし」

靖子 「じゃあ今から書くおじいちゃんも架空の人」

みわこ「それとこれは違うんだよ」

靖子 「いいんだってば、本当に死ぬわけじゃないんだし」

みわこ「でも…」

靖子 「でもって…割り切りなよ…嫌なことに理由をつけて逃げるんじゃなくてさ」

みわこ「逃げてなんかないって」

靖子 「逃げてる。私だから言うけど、あんたの逃げに構ってられる人なんてそうもいないの」

みわこ「靖子?」

靖子 「あんたが騒いで逃げる度に振り回される私の身にもなってって言ってんの!」

みわこ「…ごめん…」

靖子 「…とりあえず戻るから、ちょっと冷静になって。それじゃあ3日後に」

みわこ「ねえ、また3日って、なんで?ねえ靖子!・・・・」


靖子 電話切る。


みわこ近くにあるクッションを壁に投げる。


みわこ ベッドからゆっくりと床に座り込む。


みわこ 弱々しくノートパソコンを開く。


タイピングしながら


みわこ 「…続かないよ…進まないよう…何でこんなことしてんだろ・・・」


少し悩み、打とうとするが、打てない。そしてバックスペースキーを連打し


みわこ 「もういいや、書かなくても。死ぬわけでもなし・・・」

と床に寝転ぶ。


みわこ 突如カッとなってノートパソコンを投げようとすると、それに被さるようにパトカーのサイレンが窓の外から聞こえてくる。

みわこ そっと聞き入るそして何かをひらめいたように立ち上がりノートパソコンに打ち込んでいく。

警官 みわこの前に表れる


みわこ 「…警官、あの警官!」


ノートパソコンに打ち込んでいく。


みわこ「これなら書けるかもしれない…」


妄想スペースに薄暗い明かりがつく。



18 警官が失踪するまで



警官 「ああ嫌だなあ」


警官の携帯電話が鳴る


警官「(サラ金からの取り立ての電話)はい、もしもし。あーはい。そのことですよねすいません。来週には利息分はなんとか。すいません。すいません。すいません。はい。なんとかしますので。すいません。本当すいません」


携帯電話を切る。

警官 ため息をつきながら、歩いていく。

警官 交番に戻る。


警官 「ただいま戻りました」


椅子に座り込んで、疲れた身体をほぐす動作。

警官、同僚1(存在しない)に話しかけられる。


警官「(同僚1から仕事を押し付けられる)あ、お疲れ。…うん大変だったよ。え、今日これ俺がやんの。いや時間はあるけど…。ああ。うん。わかった。やるよ。うん。やるから。」


去っていく同僚1を目で追いかけながら、明らかに疲れきった表情を見せる警官。

交番の電話(ベル)が鳴る。


警官 「はい、こちら西区交番所です。ええ、はい。はい。わかりました。ではこちらで対応します」


電話を切る。


警官「梅田の路上でチンピラがチャーハンチャーハンって騒いでるらしいから。」

みわこ「え?」

警官 「ちょっと行ってくるわ。今日お前無理なんだろ。俺行ってくるよ」

みわこ「違う・・・違う違う違う・・・」


警官 歩き出す


警官「(奥田民生のイージュー★ライダーを口ずさんでいる)」


電話がまた鳴る。

警官無視をしているが、たまらず上着を投げる。



警官 「ああ!もうめんどくせえなあ!!」


警官 携帯を投げる(ふり)


みわこ「違うでしょ、違う、言うこと聞いてよ」


それから、拳銃を取り出して、投げようとするが、思いとどまる。少し思い悩んで、もう一度フォルダーに入れる。


警官 「(みわこに)やっちまったね」


警官  みわこをじっと見て、立ち去っていく。


みわこ「えっ?」


みわこ舞台上に一人取り残される。


みわこノートパソコンを持ったまま、どうすることもできなくなる。一度立ち上がり、警官を追いかけようとするが、諦めベッドに倒れ込む。


みわこ「・・・進めれない。もうだめだ。死にたい、死にたい、死にたい死にたい死にたい(と小声で)」


母親 やってくる。


母親 「みわこ、みわこ、みわこ!」

みわこ「何!」

母親 「落ち着いて聞いてね…おじいちゃんがいなくなった」

みわこ「いなくなったって…」

母親 「家に帰ってきてないってヘルパーさんから電話あって」

みわこ「ええ…どういうこと」

母親 「ねえ…前会った時おじいちゃんなんか変なことなかった?変わったこととかなかった?」

みわこ「うん…なかったと思う」

母親 「…そう…わかったわ…そういうことだし私お父さんと探しにいくから」

みわこ「わかった…見つかるよね」

母親 「…見つかるわよ…」


母親はけていく


みわこ 意気消沈でベッドに寝転がる


みわこ「…靖子が変なこと言うから…おじいちゃんいなくなっちゃったじゃん・・・靖子が言うから」


暗転



19 朝



父が中央はけからみわこの部屋にやってくる。


父  「みわこ」


みわこはベッドで布団にくるまっている。


父  「父さん、おじいちゃん探してくるから」

みわこ「…」

父  「見つかったら、連絡するから」

みわこ「…」

父  「…じゃあ行くからな」



父 中央はけからはける。


みわこ布団から這い出て、中央はけを確認、部屋に戻ってベッドに座り込んでいる。

すると中央はけからジョン・レノンがやってくる。


ジョン「どうも、みわこちゃん」

みわこ「誰ですか?」

ジョン「僕はジョン・レノンです」

みわこ「いやどう見ても日本人・・・」

ジョン「元ビートルズのジョン・レノンです。知ってる?」

みわこ「ジョンレノンは知ってるけど」

ジョン「じゃあイマジンして?・・・ジョンだよ」

みわこ「ムリだろ」

ジョン「世界は1つなんだよ」

みわこ「はあ」

母  「さささ!こちらになります」


母 オノ・ヨーコを連れてみわこの部屋にやってくる。


母  「こちらがみわこの部屋になります」

ヨーコ「oh!ジョン!」

ジョン「oh!ヨーコ!」


ジョンとヨーコ 突然ハグをし始める


母 「はあん!ジョンとヨーコの熱烈なハグを生きてる間に見ることができるなんて!」

みわこ「えっ?この人達部屋の前で何してるの?」

母  「ハグよ!ハグ!」

みわこ「長くない?」


みわこの部屋に2人入ってくる


ジョン・レノン「ジョンです」

オノ・ヨーコ「ヨーコです」


2人握手してくる。


ジョン「ラブアンドピース」

ヨーコ「ラブアンドピース」

みわこ「はあ」

ジョン「みわこ!バースディ近いんだって?」

ヨーコ「それで会いたいって言ってくれたんだって?」

みわこ「いや、言ってないですけど」

ジョン「おー!ヨーコ!」

ヨーコ「おー!ジョン!」


ハグし始める2人。


みわこ「えっだからこれなに?」

母  「だからハグよ!たんぷれハグ!」

みわこ「何でもいいけど長くない?」


ハグを解除する2人


ジョン「ヘイ・ジュード」

みわこ「みわこだよ」

母  「ジュードに改名する?」

みわこ「やだよ。乗ってくんなよ」

ジョン「みわこ」

みわこ「何?」

ジョン「そこでヨーコとベッドインしていい?」

みわこ「駄目に決まってんだろ」

ヨーコ「マザー、駄目?」

母  「私はいいんだけどね」

みわこ「何ベッドインの許可出してんの?娘の部屋だよ?」

ジョン「おーヨーコ」

ヨーコ「オージョン」

ジョン「悲しい。とても悲しい。撃たれた時くらい悲しい」

ヨーコ「ソーサッド!ソーサッド!」

ジョン「ウォーイズオーバー」

ヨーコ「ラブ・イズ・オーヴァー」

ジョン「欧陽菲菲(おうやんふぃふぃ)」

ヨーコ「欧陽菲菲」


ジョンとヨーコ みわこをじっと見る。


ジョン「ベッドイン駄目?」

みわこ「帰れよ」

ジョン「ジョンがこんなに頼んでも?」

ヨーコ「ヨーコもこんなに頼んでも?」

みわこ「だから帰れって!」

ヨーコ「ソー!サッド!ソーサッド!」

ジョン「オールニードイズラブ!」

ヨーコ「愛こそ全て!」

ジョン「愛撫こそ全て」

ヨーコ「ペッティング!」

ジョン「ベッドイン!」


みわこ「見んなや」


インターホンが鳴る。


母「はいはいー」


ジョン「駄目ならどこでベッドインしたらいいの」

みわこ「…ラブホとか」

ジョン「ラブホ!ラブホ!ラブアンド…ラブアンド何?」

ヨーコ「ラブアンドホテルよ」

ジョン「ラブアンドピースホテル!」

ヨーコ「ラブピ!」

ジョン「ラブピでベッドイン!」

みわこ「うるせえ!」


中央はけから警官がやってくる。


母「みわこちゃん、この人が、何かあるんだって」

警官「あっどうもみわこさん。僕です」


みわこ 驚いた表情をする。

警官 「追いかけてこないもんだからさ、来ちゃった」

母  「逆お持ち帰りね、デリバリーね」

警官 「んで、なにこの人達」

ジョン「ジョンです」

警官 「いやどう見ても違うで・・・」

ヨーコ「ヨーコです」

ジョン「ラブアンドピース」

ヨーコ「ラブアンドピース」

警官 「…ラブアンドピース」

 

 3人 握手する。

 

みわこ「えっなんですか。何しに来たんですか?」

警官 「進まないでしょ」

みわこ「・・・はい?」

警官 「だからね、拳銃、貸したげる」

みわこ「なんのこと」

ジョン「拳銃…?」

警官 「これ進めないと、君の誕生日はずっと来ないよ」

ジョン「拳銃…(どんどんテンション下がっていく)」

ヨーコ「大丈夫?ジョン?」

みわこ「どういうことかわかんないです」

警官 「締め切りまで3日なんでしょ?ずっと、書かないから」

みわこ「えっ何言ってるんですか」

警官 「じゃあ、はい、貸したげるから」


みわこに拳銃を渡す。


警官「じゃあ、これで」


警官、立ち去る。


みわこ「えっなんで?なんで?」

ジョン「みわこ、その拳銃こっちに向けないで」



みわこ 一瞬ちらっと向ける


ジョン「スケアリー!スケアリー!」

ヨーコ「トラウマほじくらないで!トラウマ刺激しないで!」

みわこ「だったら帰れよ!」

母  「ええ帰ってもらうの?」

ジョン「帰ろう!」

ヨーコ「こんな家二度と来るか!」

みわこ「うるせえ早く帰れよ!」

ジョン「最悪な家だったね、ヨーコ次どこ行く?」

ヨーコ「ラブホ行く?」

ジョン「もうヨーコ!!」


2人立ち去る。


母  「あらあらもう帰っちゃった・・・みわこ、早く書かないとこのまんまよ」


母も立ち去る。

みわこベッドに座り込んで、拳銃を見る。少し考えこんでみわこ ほっぺたをひねる。


みわこ「なにこれ、あ…普通に痛いわ…」


拳銃をポケットに入れる。

みわこの電話が鳴る。

みわこ画面を見て、悩み、携帯をベッドに投げる。


携帯 「留守番電話サービスに接続します」

靖子 「もしもし、靖子です。生きてますか。この前はごめん、言いすぎた。じゃあ3日後、書いてきてよね。待ってます」


電話切れる。


みわこ「…いつまで3日後なんだよ・・・私がおかしいんか」


ノートパソコンを見る。拳銃を出す


みわこ「進めろって言っても…もうなんにも書けないし…」


みわこ また布団に潜り込んで寝転ぶ。

みわこの部屋の照明がじりじりと点滅を繰り返す


母  「(ハケ裏から)みわこーごはんよーみわこー」


照明もどり、タンクトップ中央はけから出てきながら


タンクトップ「みわこ!ご飯だぜ!」


そのまま、みわこの部屋に入ってくる。


みわこ「えっ何?」

タンク「ファッキンモーニン!みわこ、豚の飯の用意ができてるぜ!さあおきな!」

みわこ「あんた誰、お母さんは?」

タンク「ストップ・ザ・ミュージック!」

みわこ   「…かかってないですけど」

タンク「カモーン!!ゲッラウヒア!カモーン!」


タンクトップ みわこを布団から引きずり出し、そして隣の部屋に座らせる。怪しい男も登場。


タンク「今日という日の始まりに!」

怪しい男「ファッキンいただきます!」

みわこ「いただきます…どっから突っ込めばいいんだ」

タンク「今日は何をしてたんだ、ファッキンドーター」

みわこ「いやこれといって・・・」



みわこ「てか、日本語」

タンク「副音声!」

みわこ「…はあ」

タンク「OKファッキンドーター、ファッキンウエイパーのおかわりかい?」

みわこ「ファッキンドーターって」

タンク「OKフアッキン、ファッキンウェイパーのおかわりかい?」

みわこ「いや、ドーター残せよ」


すると ビーッとエラー音


タンク「ファック!」

怪しげ「セニョリータ!!(ここからスペイン語っぽい訛りで)」

みわこ「なに?何の音!」

タンク「OK、飯が炊きあがった音さ」

みわこ「紛らわしいわ!・・・もう(立ち上がる)」

怪しげ「ムーチョ!どこ行くの!」

みわこ「ちょっと、目さましてくる」


みわこ 自室に戻る


みわこ「私相当疲れてんだな、こりゃ」


みわこ、靖子に電話する。USA勢ずっとご飯食べてる


妄想スペース上手より、ロジャー(ゾンビ)靖子の携帯を手に登場


ロジャー「うう・・・」

みわこ「あ、やすこ?」

ロジャー「おうおうおう」

みわこ「あれ?靖子だよね?」

ロジャー「おうおうおう(首を縦に振る)」

みわこ「う、ういういー」

ロジャー「おうおうー」


みわこ、携帯を投げ出す


ロジャー「おうおう・・・」

フラン 「あなた!セミナーに遅れちゃうわよ!」

ロジャー「おうおうおう(フランについていく)」

みわこ 「・・・なになに、なにこれ」


みわこ、ポケットを探る。拳銃が出てくる。

ウェイター、食卓に登場


みわこ「何が起こって、起こって、起こって…」


食卓から笑い声

みわこ、目を向ける


タンク「そうか、てめえが俺のファッキンドーターをモノにしたファッキンチェリーか」


ダルそうな先輩が登場。


先輩 「そうっす、武田って言います。この世界を妖魔から守ってます。ちっす」

怪しげ「おお、アモーレ」

みわこ「はああ?」

先輩 「な、みわこ」

ウェイター「えへへ」

先輩 「あ、こいつ、クロちゃんって言います」

クロちゃん「うむ。お似合いじゃぞ、二人とも」

タンク「これでみわこも安泰だな」

怪しげ「さすが俺のセニョリータだ」

ウェイター「えへへ」

みわこ 「ちょっと、どう見てもみわこじゃないだろそれ!てかあんたたち誰?」


食卓の人々、みわこを一瞥するが、無視


みわこ「ちょっと・・・なんで無視すんのよ、ねえ!」


中央より元気な後輩女子が入ってきて

みわこにぶつかる、が、動じない


元気な後輩女子「先輩、おめでとうなのです!うらやましいのです」

みわこ「ねえ、今ぶつかったよ!痛いよ!ねえ!」

後輩 「・・・だれ?」

みわこ「・・・は?」

先輩 「おい、どうした後輩!お前も一緒にみわこの誕生日を祝おうぜ!」

後輩 「はいなのです」

みわこ「あ・・・」


食卓の人々、ネイティブな発音でハッピーバースデイを歌いだす、ロジャー、フランも勢揃いで楽しそう。追い出されるみわこ


みわこ「みわこだよ・・・ねえ、書いたのは私だよ、ねえ!私がみわこなんだよ」

一同 「(無視)」

みわこ「違う・・・」


みわこ 弾かれたようにパソコンに向かい、タイピングを始める。


タンク「(歌い終わったら)みわこ、ファッキン誕生日おめでとう!」

怪しげ「タコス!」

ロジャー「おうおうおう」

ウェイター「ありがとう!」

みわこ「・・・」


尚も幸せそうな食卓、なんかプレゼントとかもらってるマイム


みわこ「私いらないじゃん・・・私が書かなくても勝手に進むし、もういいじゃん・・・」

祖父 「おいおい、聞いていた話のジャンルと違うぜ」


祖父(チョウ・ユンファ)が妄想スペースに登場。

一同静止


みわこ「だれ」

祖父 「(レイバンをとってみわこの部屋に行く)みわこのおじいちゃんだよ」

みわこ「そう、みわこなら今そこで誕生日会してる」

祖父 「何言ってるんだ、お前はそこで落ち込んでるじゃないか」

みわこ「・・・私が見えるの?」

祖父 「見えるも何も、孫のみわこはお前だろ?」

みわこ「・・・うん」

祖父 「帰ろう、そのために来たんだ」

みわこ「私なんていなくても、別に」

祖父 「やることがあるんだろ?」

みわこ「・・・できそうにない」

祖父 「いや、できるよ、ここであきらめたらお前に買ったプレゼントがパーじゃないか」

みわこ「・・・でも、でもわかんないし、だったらこのまま…」

祖父 「お前は逃げるために書いてきたんじゃないんだろ?だったら胸張って、お前の父さんに言にいけ」

みわこ「・・・」


一同、みわこたちを見守る


祖父 「な、みわこ」

みわこ「うん・・・わかった。」



祖父、レイバンをかけなおす

みわこ、パソコンを開き、拳銃を高々と取り出し、妄想組に見せつける。妙に冷静な妄想組。


ジョン「あれ、みわこ、書かないんじゃなかったの?」

みわこ「うん、書けないよ」

ヨ―コ「だったら、諦めようよ」

みわこ「ううん、打ち込んでやる、私が打つんだ」

先輩 「そんなことしたって、現実は変わらないよ」

フラン「時間が戻るわけでもないのよ、みわこ」

みわこ「でも、私が終わらせないと」

後輩 「終わらせたら消えちゃうのに?」

先輩 「おい、」

みわこ「え?」

後輩 「私たちはどうなるの?」

みわこ「・・・」

後輩 「終わるって簡単に言うけど、私たち消えちゃうんだよ?」

フラン「後輩ちゃん・・・」

後輩 「私、先輩ともっと一緒にいたかった!」

みわこ「・・・」

後輩 「勝手に生みだしといて、ほったらかしにして、その上こんなのって酷いじゃない!」

先輩 「後輩・・・」

フラン「私だって…私だってこの人の敵を討ちたいわよ。でもね?」

後輩 「ずるいよ・・・ずるいよ、みわこは」

みわこ「・・・」

怪しげ「僕だって」

祖父 「おい、お前らこれくらいに・・・」

先輩 「いいだろこれくらい言ったって!」

みわこ「・・・ごめんね」

祖父 「みわこ・・・」



みわこ「みんな、私ね・・・靖子に、靖子にね、謝らなきゃいけない。心配させてごめんって。あと、お母さんのごはん食べたい。濃い味のごはんが食べたい。見たい映画も読みたい漫画もあるし。あとねフェス行ったことないし、近くの喫茶店だって一回も。行ったことない街どころか曲がったことない交差点だって。したいことも、しなきゃいけないこともいっぱい・・・それに、それに私さ、お父さんに言わなきゃいけないことがあるんだ、だからごめん」

タンク「みわこ、それがお前の選択なんだな?」

みわこ「うん、そう」

タンク「進んでいくって星条旗に誓えるか?」

みわこ「うん、進ませる。進まなきゃいけないもん」


タンク、やれやれというジェスチャーの後、すぐに


タンク「そういやあ、隕石が落ちてきたんだよなあ」

怪しげ「おい、相棒!」

タンク「黙ってろ、マイケル。女は泣かせるもんじゃねえ、そうだろ」

怪しげ「リッグス…」

タンク「俺たちの出番さ、ファッキンテロリストさんよ!」

怪しげ「あ、ああ・・・そうだったな相棒!俺達を敵に回したらどうなるか!あのファッキンイカ野郎に見せつけてやろうじゃないか!」

タンク「ああ!俺たちの最後の仕事だ!ど派手にいこうぜ!」

先輩 「ちょっと待てよ2人とも!!平和な日常を守る、それは俺の仕事だぜ?な、クロちゃん」

クロちゃん「その通りじゃ!わしらが平和を守らんでどうするんじゃ!」

後輩  「先輩!…生きて帰って文芸部に入ってもらうんですからね!」

先輩  「…ったく最後までめんどくさい後輩だぜ!…後ろは任せたぜ!」

後輩 「はい!」

ロジャー「フラン、1つ言い忘れてたことがある」

フラン「何?返してないポルノビデオでもあったか?」

ロジャー「ずっと愛してる」

フラン「ロジャー私もよ!」

タンク「へっ!こんなに集まってくれるなんて!まったくいい国だぜここは!」

みわこ「みんな・・・」

タンク「みわこ、最後になるが、俺達を作ってくれ

てファッキンありがとよ!・・・・いくぞ!」

先輩 「あれはなんだ!(空を指さして)」

フラン「こっちに近づいてくるわ!」

ロジャー「おおあ」

ジョン「ヨーコ!」

ヨーコ「ジョン!」

ウェイター「あっお代」

チンピラ1「(上手より妄想スペースへ)た、たいへんだー!」

タンク「どうしたんや!この梅田の兄貴に言うてみい!」

チンピラ1「へい、兄貴。それが!・・・」


鳴り響くイカ星人の鳴き声

構える一同


みわこ「そう、イカ星人だ・・・」


みわこがパソコンを打つ。銃声。そして暗転。



22 すべて終わって。


夕方明かりがつくと、みわこ茫然としている。

警官が入ってくる。


みわこ 「…やった?」

警官  「すごかったね今の文化祭みたいで。」

みわこ 「あ」

警官  「…や―すごいね」

みわこ 「…」

警官  「若い子の勢いって怖いな」

みわこ 「なんだかお騒がせしてしまって」

警官  「いやいや、いいんじゃない?これくらいの方が、わかんないけど」

みわこ 「・・・これ」

警官  「何?」

みわこ 「これ(警官に銃を見せる)」

警官  「ああ、これか」

みわこ 「返します」

警官  「うん、貸しただけだし」


みわこ 警官に銃を渡す。


みわこ「結局あなたって誰なの」

警官 「警官じゃね?」

みわこ「現実の?それとも私の?」

警官 「いいじゃん、そんなこと・・・動くかな」

みわこ「たぶん、打てたんで」

警官 「え、打ってたの?」

みわこ「え、ええ」

警官 「あー!」

みわこ「ごめんなさい!」

警官 「(みわこの話は聞かずに)いいなあ!」

みわこ「え、そうすか・・・あ、ねえ、戻ったら私どうすれば・・・」

警官 「俺さ!銃撃ちたかったんだよね、本当は。撃っていい」

みわこ「…どうぞ」

警官 「じゃあ…」


警官 空に向かって発砲。


警官 「(最初驚いてるが)おおおおすっげー」

みわこ「(つられて)は、ははは、は、すっげー」

警官  「…逃げては無いでしょ。おれは、ほら、あれだけど」

みわこ 「…」

警官  「凄いと思うよ、進もうって思ったことだけでもさ。うん、すげーよ」

みわこ 「・・・打ってどうだった?」

警官  「え?まあ、こんなもんかって…」

みわこ 「だよね」

警官  「じゃ、君の作品、楽しかったよ」


警官もいなくなって、みわこ一人だけ取り残される。

みわこもとぼとぼと自宅に戻っていく。



23 自宅


部屋に戻ったみわこ

父親 中央はけから登場。


父親 「…みわこか」

みわこ「あ、うん」

父親 「連絡返せよ」

みわこ「…ごめんなさい」

父親 「おじいちゃん、見つかったから」

みわこ「よかった・・・」

父親 「…夢でお前に会ったとか言ってた」

みわこ「…レイバンのサングラスしてたでしょ?」

父親 「知ってるのか?」

みわこ「逢ったもん」

父親 「なんだよそれ」

みわこ「ええ?冗談」

父親 「冗談ね…」



父親 「じゃあ」

みわこ「お父さん」

父親 「…何だ?」

みわこ「逃げてなんかいないから。うん」

父親 「(みわこを見つめて)…そうか」

みわこ「…うんそう」

父親 「ご飯のときぐらいちゃんと食べてやれ」

みわこ「食べるよ」

父親 「母さん、最近味覇にハマりすぎてどんどん味が濃くなってるんだ、俺一人じゃ食いきれん」

みわこ「…そうなんだ、うん」

父親 「あとな、誕生日、おめでとう」

みわこ「え?」

父親 「今日だろ、多分母さんケーキ用意してるよ。じいちゃんからも何か届くそうだ」

みわこ「…流石にケーキに味覇は入れてないよね…」

父親 「…そう信じたいな」


父親はけていく。

みわこ一人になる。

携帯を取り出して電話をかける

上手に靖子


みわこ「もしもし」

靖子 「よかった!全然連絡ないから」

みわこ「うん、よかった…ごめんね…」

靖子 「…書けたの?」

みわこ「…うん」

靖子 「変なの書いたの」

みわこ「うん。変なの書いた」

靖子 「もう駄目って言ったじゃん」

みわこ「うん。でもこれしか書けなかった」

靖子 「みわこ?」

みわこ「…皆でかいたけどさ、書けなかった」

靖子 「みんな?」

みわこ「うん、みんな。ほんとどうしようもないよ」

靖子 「いいよ。逃げずに描き上げたんでしょ」

みわこ「…うん逃げなかった。」

靖子 「じゃあ逃げなかったやつ見せてよ、今日来れるの?」

みわこ「今日?そっか・・・いや、まだ」

靖子 「なんで」

みわこ「清書が終わってない」

靖子 「書いたんじゃないの」

みわこ「あと、清書だけ」

靖子 「…じゃあ、待ってるから。」

みわこ「うん。明日、ううん、すぐ持っていくから」


携帯を切る。


みわこ テーブルに座って、ノートパソコンを開く、

そして一度背伸びをして、文章を打ち始める。でも進まない。

窓を見上げ、変なポーズをする。どうやら背伸びのようだ

窓からは夕日が指している。その光の中、みわこは文章を打ち続ける。

そしてその光が強くなる中、bloodthirsty butchersのJACK NICOLSON(参考URL  

http://www.youtube.com/watch?v=60hYAK8wcKwが流れる。)


みわこ「うがー!」


曲が止まる


みわこ「やっぱり書けない・・・みんな、たすけてようー…」


中央より、警官登場、みわこの部屋を覗きこむ


母  「(ハケから)みわこ―ごはんよー」


みわこ、その声に上手を見る。警官と目が合う


みわこ・警官「あ。」



警官 「…結局どうすんの?」

みわこ「書くよ!」


光に包まれる音楽も再び爆音で流れる。


終わり


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戯曲『物語は進まざるを得ない』 両目洞窟人間 @gachahori

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