真っ白なおじいさん
今日は見たものを真っ白なものに変えるおじいさんに会った。
真っ黒な僕は、そのおじいさんに真っ白にしてもらおうと思ったけど、いくらおじいさんが見つめても、僕は真っ白にならなかった。
「君みたいなやつは始めてだ。」
おじいさんはそう言って驚いた。
そして、僕はなぜおじいさんに真っ白にしてもらいたいかを話した。
「少しでも黒い人間は、死んだときに地獄に行ってしまうんだって。僕はあまりにも黒いから、みんな僕に触ると黒いのが移ると思って、避けられて、気持ち悪がられるんだ。だからおじいさんだったら、僕のことを直してくれると思って…」
そう言うと、おじいさんはこう答えた。
「みんな真っ白なものが大好きだが、私は私の見つめるものすべてが真っ白になってしまうから、もう見たくないんだ。真っ白いものなんて、ただの空っぽだ。もう私は、すべてを空っぽにしてしまう自分が嫌になったんだ。だから、真っ白じゃない君に会えて本当によかったよ。ありがとう。」
そう言っておじいさんは、隣にいる僕を見つめたあと、真っ白いビルの屋上から真っ白い地面に向かって飛び降りていった。
本当は、真っ白になれなかったら、僕も一緒に飛び降りようと思って隣に立って居たのだけど、生まれてはじめて、おじいさんが僕を必要としてくれたことが嬉しくて、でも居なくなったのが悲しくて、寂しくて、泣いた。
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