第2話 焼き肉とノンアルビール
先日のピンスタメッセージ
「雄基くん!お久しぶりです。」
誰かと思ったら結衣ちゃんか!
あれから2年もたったのによく覚えててくれてたな。
「結衣ちゃんか!元気してた?」
「元気ですよー雄基くんは?」
「ぼちぼちかな、就職決まった?」
「はい!K市の美容院でアシスタントやってます。」
てっきり東京のオシャレなサロンとかで働いてるかと思った。
「こっち帰ってきたんだね。就職おめでとう!」
「ありがとうございます。就職祝いしてください!!」
就職祝いだと?まあ久々に顔も見たいし望むところだ。
「仕方ない!お兄さんが焼き肉をごちそうしてあげよう。」
「焼き肉好きです。ちなみに結衣は基本月曜日と木曜日が休みです!!」
「じゃあ来週の木曜日休みだからその日にしようか!」
「ありがとうございます。楽しみー♪」
あっさり再開することになってしまった。
てっきりもう会うことは無いと思ってただけにこんな自分を覚えてくれていたのが嬉しく年甲斐にもなくウキウキしている。
7つも年下の子と出かけるのにおっさんとは思われたくないのでUクロで新しい服でも買いに行こう。
それはそうとして昔ちょっと遊んであげただけなのに何で結衣ちゃんは自分のことを覚えているのだろう?少し疑問に感じながらも約束の日は近づいていく。
★
「成瀬ちゃ~んタオルの補充おねが~い。」
「はい!了解で~す。」
私は成瀬結衣20才。小さいころから美容師に憧れていてこの前やっと東京の専門学校を卒業して田舎ではそれなりに大きくてお洒落なサロンに就職することができた。
まだアシスタントで出来ることは少ないけど、しっかり技術を磨いて立派なヘアデザイナーになりたいな。
「成瀬ちゃん入ったばかりなのに作業覚えるの早いねー、期待の新人だ!」
「ありがとうございます。小林さんの指導のおかげです!!」
この人は小林さん、このサロンではベテランの頼れる先輩で2才の息子さんがいて写真をいつも見せてくれる。
「成瀬ちゃんが頑張ってるからだよ!それより最近なんかいいことあった?」
「いえ?特には変わりないですよ?」
「あれ?なんかいつにも増して幸せオーラ出てたけど気のせいだったかな、いい感じの男が出来たかと思ったのに!」
「そんなすぐには出来ませんよー!あっ、でも。」
「でも?」
「来週7つ上の先輩?お兄さん?と焼き肉行ってきます。」
「何それ大丈夫なの?」
「昔からの知り合いなので多分お互い兄妹みたいな感覚です。」
「そうなんだーまあしっかりご馳走になってきなね。」
「ありがとうございます(笑」
「変なことされたら直ぐ言いなね!!」
「了解です。」
「じゃあ私仕事もどるわー。」
ふふっ雄基くん全然信用されてない(笑
あと少し頑張れば焼き肉だ!頑張ろう。
★
焼き肉兼就職祝い当日を迎えた。
買ったばかりのUクロの服に袖を通し髭を剃って家を出た。
結衣ちゃんとは2年前に再開したコンビニに迎えに行くことになっている。
時間には少し余裕があるため、ガソリンスタンドに寄り洗車機にかける。
こうして待ち合わせ前に洗車をしていると元彼女とのデートを思い出して感慨深くなる。・・・知り合いを乗せるだけなのに俺は何を考えているんだ。
約束のコンビニに到着し2人分のお茶を買い車に戻る。
しばらくするとピンスタにメッセージが。
「つきましたー♪」
携帯から視線を駐車場に向けると・・・。
こちらに向かって手を振る絶世の美女がいた。
背は160cmは超えているだろう、それに2年前のような金髪ショートではなく少し暗めの茶色がかった色に肩くらいの長さの緩めパーマがかかった大人っぽい髪形。
服装は焼き肉だからかスキニーのジーンズにTシャツというシンプルな装いだが、彼女の素材が良すぎてモデルが歩いているかと錯覚してしまった。
「おー久しぶりじゃん!」
車から降り助手席のドアを開ける。
「ありがとーございます。気使わなくていいですよー(笑」
「お祝いだからもてなさせてくれよ。」
なんとか心のザワつきを誤魔化しつつ結衣ちゃんを車に乗せ自分も乗ろうとすると視線を感じる。
コンビニ前の喫煙所でたばこを吸っている土方系の若い3人がこちら(結衣ちゃん)を見ていた。
若干の優越感を感じながら車を走らせた。
「コーラとノンアルビール下さい。」
「かしこまりました。」
近所ではそれなりに有名な美味しい焼肉屋にてドリンクを注文。
「お酒飲んでもいいよ。」
「雄基くん今日運転で飲めないからまた一緒に飲みに行きましょう。」
・・・好きになってもいいかこれ??
何で昔からの知り合いなんだよ!!
「嬉しいこと言ってくれるね。」
そこでドリンクが届き瓶のノンアルをコップに注ごうとすると。
「私が注ぎます。」
「じゃあお願いしようかな。」
大人になったんだなーと感心すると共に美人にお酌してもらえる嬉しさもあり複雑な気分になった。
コップに泡比率7:3の美味しそうなビールを注いでくれた。
「ありがとう。では結衣ちゃん就職おめでとう、乾杯!!」
「かんぱーい!!」
人生1美味いノンアルビールだった。
肉はブランド牛ではないものの和牛の質のいい肉をたくさん頼んだ。
「おいしー!!」
結衣ちゃんはそう言って目を輝かせている。
「それはよかったよ!」
「ハツとコブクロうまーい!」
「おっさんか!!」
「だって美味しいんだもん。」
カルビやトモサンカクなどの脂の多い部位の余りは自分が食べることに。
「雄基くん食べないの?」
「この年になると脂がきついんだよ。」
「おっさんじゃん!」
「うるせー割り勘にすっぞ。」
「ゴメンって~。」
こんな調子で楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
帰りの車にて。
「美味しかったです。ごちそうさまでした。」
「どういたしまして~。」
「そういえば雄基くんは彼女とかいるの~?」
「いきなりどうした?いないけど。」
「ふ~ん、ちょっと気になっただけ。」
「なんだそれ。」
結衣ちゃんは窓の外を見ていて表情が分からない。
不覚にも一瞬ドキッとしてしまった。
「とりあえず今日は暗いから家まで送ってくわ。」
「ありがとうございます。」
さっきの会話から微妙に間が持たなくなってきた。
とりあえず何かしゃべっとくか。
「髪の毛切れるようになったら俺の髪切ってな。」
「もちろんですがんばります。早くしないと雄基くんの髪がなくなっちゃうから(笑」
「よし!ここから歩いて帰れ。」
「冗談だって(笑」
「じゃあ今日はありがとうございました。」
「はいよー、仕事頑張ってね!」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
そうして結衣ちゃんを家まで送り届け帰路についた。
家に帰り数時間ぶりのたばこを味わっているとメッセージが。
「今日はホントにありがとうございました。楽しかったです。」
「こちらこそ久々に顔見れて嬉しかったよ。ありがとう。」
「今日マイン交換し忘れました。また交換してください。」
「了解。」
俺も楽しかったよ。ありがとう。
たわいもないメッセージが終わり、夏の終わりのような楽しさと寂しさを感じながら1日が幕を閉じた。
7つ年下の子がかわいすぎ。。 はねもも @genki365
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