兄弟
光り輝く祝福は夢
【また……。また、いつもの夢だ……】
洋子は暗闇の中、独りで佇んでいる。もう怖くはなかった。
ただ……。
【寂しい……】
寂しさは今までの夢の中で一番大きいものになっていた。
洋子はその場に留まったまま、きょろきょろと辺りを見回す。
【彰くん……。幸愛さん……】
緑色の光も、赤色の光も、どこにも見当たらない。
【いないの…………?】
洋子が歩き出そうと一歩足を踏み出したら、途端に目の前が淡く光る。その光は緑色でも、赤色でもない。
淡いピンクの桜だった。
【綺麗…………】
一面に広がる、桜の花吹雪。洋子がそれに見蕩れていると、赤子の泣き声がふたつ、重なって聞こえてきた。
【彰くん……。幸愛さん……】
泣き声の聞こえる方へ、洋子はどんどん足を進めていく。洋子の中では、あの光は彰と幸愛だ。そう確信している。
暫く歩くと、大きな桜の木の下に人影が見えた。その人影の顔は見えない。見えないが、洋子を見つめて優しく微笑んでいるような気がした。
【……桜…さん…………?】
洋子が問いかけると、夢の彼女がニコリと笑みを深くした。ような気がした。
突然崩れた人影が、桜の花びらへと変化する。舞う桜の花びらは洋子を目掛けて飛んできた。そして、その桜の花びらたちに混ざって、緑と赤の鮮やかな光がくるくると踊るように舞っている。
【彰くん?】
洋子の問いかけにピタリと止まった緑色の光。洋子は同じように、赤色の光にも声をかけた。
【幸愛さん】
くすくすと、昨日聞いたばかりの子どもの笑い声を聞いて、洋子は目を見開いた。
【え…………?】
赤い光が緑色の光へと突撃していって、ひとつになる。その光は金色に輝いていて、とてつもなく眩しかった。
洋子が目を瞑っているうちに、金色の光もまたふたつに分裂し、洋子の両頬にそっと、優しくキスをしてくれた。
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