入学の日

はじまりの夢

【ここはどこ……?】


 少女は微睡みながら、そんなことを思った。少女が佇んでいるのは小さな公園。快晴の空が気持ちいいのだが、公園を見渡す少女の表情は何故だか暗かった。


【この公園は……】


 少女にも見覚えのある公園。その公園に、これまた少女がよく知っている小さな女の子が、大粒の涙を流しながら入って来た。


 少女によく似た、子どもながらにある程度整っているその顔は、泣き顔でクシャクシャに歪んでいる。


ヒソヒソヒソ……


 泣いている女の子を悲しげな表情でジッと見つめていると、いつの間にか黒い服を着たたくさんの大人達に囲まれていた。この光景にも、見覚えがある。


 女の子の泣き声に掻き消されて、何を言っているのかは全く聞こえていないが、正直気分が悪い。


 遠巻きにして、泣いている小さな子どもにチラチラと視線を送りながら何かを囁き合っているのだから、いい気持ちになどなるはずもなかった。


『ねえ……』


 今度は小さな男の子が登場する。ニコリと結ばれた口元以外に顔が全く認識できないのは、少女がその男の子の顔をよく知らないからだろう。


 それでも男の子が一歩、また一歩と近づいてくるたびに揺れる、ふわふわの髪を懐かしく思う。女の子のように長い髪を、後ろにひとつで括っているから、その髪はやはり歩くたびにふわりと揺れた。


 その髪の毛は太陽の光に照らされて、黒の中に青く輝いて見えた。


 あれだけ大粒の涙を流していた女の子も、いつの間にか涙を止めて男の子の事をジッと見つめている。


 吸い込まれるほどに美しい。顔も見えないのに、女の子も…そして少女も、男の子に目を奪われて離せないでいる。


『――――』


 男の子が何かを喋っているのがわかるが、何も聞こえない。それどころか、視界が急に歪んで、公園という場所に似つかわしくない機械的な音が聞こえてきた。

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