友達が死んだので遺品をもらいにいったのだが……

にこん

遺品

俺には栄光っていう友達がいた。


高校生の頃からの大親友で卒業後も一緒にゲームしたり、それから心霊スポット巡りをしたりもした。


今どきオカルトだのそんなホラーな話に食いついてくれるのは栄光くらいのものだった。


んで、その栄光が事故死したという話が舞い込んだ。

栄光の母親から俺に連絡がきたんだ。


で、そうやって馬鹿をやってた俺に栄光の母親はこう連絡してきた。


"私達も遺品全部はいらないから必要なものがあったら持っていってほしい"


とのことだった。


それで遺品整理の手伝いがてら呼ばれたわけだ。

当時のことを思い出しながら遺品を見る。


心霊スポット行ったときとか、いっぱい写真も撮った。

2人で馬鹿やってる写真とか、心霊スポットに行ってそこで馬鹿騒ぎしてる写真とか。


いい思い出になるだろうって思って撮ってた。

特に心霊スポットで撮った写真なんかはなにか映るかもなんて期待を込めて撮っていたんだけど。


ついぞ映ることはなかった。

最初から最後まで俺と栄光と、それから建物や夜という時間特有の真っ暗な闇が映るだけ。


「やっぱ、いらないや」


見ていて思った。いくら大親友の遺品と言えど正直要らないという気持ちがある。


最初はすっげぇ落ち込んだよ栄光が死んだって聞いて。

でも遺品が欲しいなんて思わなかった。


言っちゃ悪いが年月が過ぎればどうせ全部忘れてゴミになる。

俺は何度もそういう経験をしたから分かる。


ならもうご家族の判断に任せていいと思うようになってた。


じゃあなんで来たんだって話なんだけど、なんでなんだろうな。

自分でもよく分からないけど、


【来れば気持ちが変わってなにか欲しいものが見つかるかもしれない】


そんなふうに考えたんだろうな。

でも気持ちは結局変わらない。


俺の心は言っていた。


要らないって。


だから遺品を集めた部屋に座り込んでいたが立ち上がった。


(おばさんに事情を話して帰ろうか)


遺品はどれも必要ありませんでしたってさ。

部屋を出ると。


「お、おわっ?!」


ドタっ。


驚いて後ろに倒れ込んだ。


おばさんが立ってた。


びっくりした〜。

こんな部屋出たすぐのところにいるなんて思わなかったから驚いたよ。


(それにしても生気を感じないよな。息子が亡くなったからしかたないんだろうけど)


シリを擦りながら立ち上がった。


「すみません。やっぱ遺品なんですけど必要なものはないです。だから帰りますね」


おばさんはスっと遺品部屋を指さした。


「もっと見て」

「いや、いいです。見ましたよ」


おばさんの横を通り過ぎる。


それで玄関まで向かって靴を履いて家を出た。

ここまでバイクできたのでバイクを止めてる場所まで向かった時だった。


ガシャン!!!!


背後で何かが倒れる音。


振り返ると


「お、おばさん?!」


栄光の家が崩壊してた。


やばい。

おばさんが中にいるのに。


助けに向かおうとした時だった。


「君?!何をしてるんだ?!」

「こら!待て!止まれ!危ないぞ!」


声をかけられて振り向くと2人の老人が立っていた。


そっちに向いて説明する。


「お、おばさんが!家が倒れて!」


2人は顔を見合せて。

眼鏡をかけた威厳のある老人の方が口を開いた。


「何を言っとるんだ君は」

「お、おばさんが!早く助けないと!」

「おばさん?何の話をしとるんじゃ?」

「栄光のおばさんが、倒壊に巻き込まれたんですよ?!」


すると老人はこう言った。


「もう一週間も前に倒壊しとるよ。で、いま最後の柱が今壊れたんじゃ。お主はその直前にこっちに来たんじゃ。良かったなぁ、巻き込まれなくて」


「えっ?」


背中を冷たいなにかが駆け回った。


「30分くらい前か。もうとっくに崩壊しとる建物の跡地に向かっていくから遺品でも見にきたのかと見ておったが、君はひとりで話し出すし不安になって見ておったらこうじゃ」


そこで俺は家の方を振り返った。


そこにはたしかに家なんてなくて。

家だったものの残骸が残されていただけだった。


「火災じゃったんじゃよ。最後母親が狂って家にガソリンを撒いて焼身自殺。かわいそうな話じゃった」


そう言われて俺は靴を脱いだ。

靴下の裏はススなんかの汚れで真っ黒になっていた。


「……」


声が出ない。

あのままあそこにいたら俺はどうなっていたんだろう。


考えるだけで身震いする。

そして、あの場で俺を引き留めようとした母親の声を思い出す。


『もっと、見て』


言葉通り遺品をもっと見ていたら俺は……


頭を横に振っていやな考えを消す。


「引き止めてくれてありがとうございました」


そう言うと老人はこう言った。


「近くで住職をしておる。多分君は憑かれているし、君のことを祓ってあげよう。無料でいいぞ。ここにきたのも誘われたんじゃろうな」


俺はその言葉に甘えることにした。


そうして一通り祓ってもらった。

その過程で俺はこれまでの経緯を話した。


住職は


「母親とのやり取りを見せてくれんか?」


と言ったので俺はメッセージアプリ【JINE】のやり取りを見せたんだ。


アカウントは栄光のアカウントで、母親を名乗る人物からのメッセージが届いていたことは覚えてる。


メッセージを開く。

するとこうあった。




縺医>縺薙≧:死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね



俺:栄光の遺品を?分かりました。時間が出来たら行きます


縺医>縺薙≧:殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す



「ここまでの霊に憑かれてよく生きてきたな君は」


住職がそう言った時だった。


JINEに着信があった。

画面を触ってないのに勝手に応答になった。


その時スピーカーから音が飛び出てきた



『熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!!!!!熱いよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!うぎゃぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!』


この世のものとは思えないような悲鳴が聞こえて。

ブツリと通話は切れた。



後日。

住職から聞かされたことだが、あの火事の後から栄光と母親の白骨化死体が出ていたらしい。


つまり死因は事故死ではなく焼身自殺だったらしい。



俺はこの出来事があったあとJINEのアカウントを削除して、電話番号も変えた


それきり妙な電話とかが来ることはなかったが毎日悪夢を見るようになった。


焼け爛れた顔の栄光が枕元で叫ぶんだ。




『熱いよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!死ね!死ね!死ね!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』



それから日に日に俺の体にはヤケドのような跡が広がっている。

病院にも行ってみたが原因不明で何も出来ない、と言われた。


自分でも不思議と分かる。


もう、俺の人生は長くないことは。



~おわり~


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