第4話 順調
「マジ今週のシオンちゃん可愛すぎたわ。やっとデレたんだよ初めて! 主人公ずりぃよ……変わってくれー!」
魂のこもった叫びが教室全体に響き渡る。
何でこんなのを陽キャ認定したのか不思議になるくらいに言動がアレだ。
会話……と言うより
「そんなに『シオン』が好きなのか……」
「少なくとも今期のアニメではぶっちぎりだな〜」
今期て……一体どれだけ把握してるんだ。
「そんなんでお前勉強大丈夫なのかよ」
「別に? 勉強は自信あるぜ!」
「そ、そうか」
堂々と言うなぁ。残念だが、
直後、ガラガラとドアの開く音が聞こえる。
「
もう来た。まあタイミングは悪く無いな。
茜はまるで俺に会いに来たかのように自然と2人の輪に入った。演技は得意な方ではなかったはずだけど、何回もやってるし慣れたんだろう。
「おー
「うん! 久しぶり、
茜が参加して間もないし、月島のソウルはもう少し会話を弾ませてから見た方がいいだろう。
「あ、そうだ。なぁ月島、茜に勉強教えてやってくれよ。現代文以外全くダメなんだこいつ」
「俺? まあいいけど」
「えっ!? あたしなんかが連人に教えてもらうなんて恐れ多いよ!」
なぜか茜は嫌がった。
多分2人きりになれるのに何でだ?
「何でだよ」
「だって連人はこの前の中間テスト、学年1位だよ!? あたしなんかに勉強教えてたら足引っ張っちゃうよ……」
「へ!? 1位!?」
おい、神。スペック差どうにかしろよ。
「俺もびっくりしたよ。まさか1位を取れるとはな〜!」
明らかに月島は嬉しそうだ。
「別に俺は教えてもいいよ? うまく教えられるかはわかんないけど」
「い、いいの……? じゃあ……お願いしちゃおっかな」
「それじゃ、いつどこでやるか決めないとな」
2人は楽しそうに会話をし始めた。
そろそろ見てみるか。
月島のソウルは……綺麗な黄色をしている。黄色は、喜んでいる時や楽しい時になる色。わかってはいたが裏表はないな。
それとソウルは嘘をついた時、水の中に墨が入ったみたいに黒く濁る。タチが悪いのが、その濁りは消えるのに数十分かかることだ。
だから、会話中とかに見たソウルが濁っていた時、濁る瞬間を見てない限りそいつが会話中どこで嘘をついたかわからない。
結果、疑心暗鬼になる。見た方が悪いんだけどな。
ソウルなんて見ても碌なことがない。
それでも気になって見てしまうのが人間か。
月島のソウルは濁りが全くないので少なくとも今は俺たちに対して嘘はついてない。
ガチで学年1位ってことだ、ちくしょう。
「あーすまん、一希。九条と話してて置いてけぼりにしちまった」
「いいよ。楽しいんなら続ければ」
茜は不安そうにこちらを見てくる。俺は何も言わずにグッと親指を立ててニヤリと笑ってやった。茜の顔がみるみる明るくなっていく。同時に茜の隣にあるソウルも、不安や恐怖を表す深緑色から黄色に変化していく。これでハッピーエンドだな。
「何してんの?」
「いや何でもない」
「まあいいや。それで近々九条と勉強会することになったんだけど、一希も来る?」
「俺? 俺は別にいいよ」
「えー……そんなこと言わずに来てよ! 一希も勉強すごいじゃん! 7位だっけ?」
何故か茜からも誘われた。せっかく2人きりで勉強できるチャンスなのに見逃すのか?
「おー、やるじゃん」
流石にそれは茜もわかってるだろうし、何か事情があるのかもな。
「わかった、行くわ。うまく教えれる自信はないけど」
「やったっ!」
「オッケー、あとは他に誰か誘ったりする? せっかくだしみんなでワイワイやりたいな」
「賛成!」
「茜がいいなら」
俺が誘えるやつなど1人もいないさ。
「あたし、
ねじ込んだな。
「
月島とは仲良いらしいしチャンスではあったか。
これで月島以外の3人全員が裏で繋がってるズブズブ勉強会のセッティング完了だ。
「どこでやるかはまた今度決めよう。もうそろそろ授業だし」
「あっ、ホントだ! あたし戻らなきゃ! 2人ともまたね!」
とびきりの笑顔で去っていく茜のソウルは見ていない。
だとしても、今の茜の感情が分からない奴はこの世にいないだろう。
出だしは好調、だな。
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