友情の祭壇

呪わしい皺の色

第1話

登場人物

七海ななみ

瑞希みずき


七海  小中学生の頃に日記を書く宿題があったじゃん。あれにネガティブなこと書かなかったんだ。書いちゃいけない気がして


瑞希  じゃあ何書いてたんですか


七海  給食の味


瑞希  へえ。試しにこのコーヒー飲んで食レポしてくださいよ


七海  (受け取って一口)苦い


瑞希  無意味な宿題だ


七海  でも、一回だけ書きそうになったことがあってね


瑞希  何をですか


七海  ……ネガティブなこと。とびっきりネガティブなこと




七海  ある時社会科の授業で世界宗教を扱うことになったんだけど


瑞希  まあ、ありますよね


七海  冒頭に先生がこう訊いたの、この世界に神様がいると思う人いますか? って


瑞希  えぇ……


七海  みんな笑ってたよ。笑わなかったのは私一人。手を挙げたのも


瑞希  やめましょう、これ以上は


七海  ここから先のことなんだよ私が日記に書きたかったのは


瑞希  でも、書かなかったんでしょう?


七海  うん。うちの教育方針が独特だったってこと、なんとなくわかってたから


瑞希  だったら終わりじゃないですか


七海  私の人生は終わってない!


瑞希  ……良いことじゃないですか


七海  鬱陶しいほど伸びていて、どこまでも悲しみがお供する。これが良いこと?


瑞希  ……三つだけ文句つけさせてください。

友情の祭壇に何を供えようと構いませんが、寸法と重量くらい考えるべきでしょう。あっけなく壊れますよ


七海  でも……


瑞希  二つ目に、揚げ足取りは単純にうざいです。


七海  はあ?


瑞希  自覚がないようですね。

三つ目に、同じ境遇の人を探したことはないんですか? きっと傷の舐め合いが楽しいですよ


七海  そんな言い方されて探す気になると思う?


瑞希  思わないでしょうね。やめたほうがいいってことですよ、同じ絵柄のトラウマを空しく探す神経衰弱は


七海  そんなこと教えてもらわなくても……


瑞希  四つ目に、


七海  三つじゃないじゃん


瑞希  人生にお供する憂鬱、でしたっけ。そいつはもうしばらくついて来るかもしれませんが、僕は、この僕はいつまでもついて行きますよ


七海  え


瑞希  嫌ですか?


七海  嫌じゃないし嬉しいけど、キモいなって思って


瑞希  ……友達やめます?

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