第2話 水平線の彼方

 夏らしい入道雲が青空に浮かぶ。熱せられた砂浜の上と彼は一人の少女と共に、裸足で歩いた。


「この海の向こうに、何があると思う?」

 少年は立ち止まり、水平線の彼方を見つめながら言った。

「分からない」

 少女も隣に立ち、同じ方向を眺めた。

「世界の終わりだよ」


「せかいの、おわり……それって、ワールドエンドってこと?」

「いや、どうして英語に訳した?」

「あれ? 話してなかったっけ? 昔、アメリカに留学してた話」

「聞いてないよ! よし、話を戻そう。世界の終わりというのは、あくまで比喩表現だ。水平線の彼方には未知のセカイが広がっている。それはこっちのセカイの常識は通用しない」


「例えば?」

「魔法とか」

「えー!? そんなのあるわけないじゃん!」

 少女は大きな声で笑い出す。その声に反応して、近くを泳いでいた魚達が一斉に逃げ出した。

「でもさ、もしも魔法があったらどうする?」


「そうだね。強いていうなら、好きな人と死ぬまで一緒にいられる魔法かな?」   

 少女が顔を赤らめて言う。一方で、少年は少女の本音に気づかないまま話を続けた。

「そうか。俺は魔法の杖からかっこいい炎を出して、悪いヤツを倒してみたい」

 そんな彼の言葉を耳にした少女はクスっと笑った。


「相変わらず子どもっぽいね」

「うるさいなあ……」

 少年は照れ臭そうに頭を掻いた。そして二人は再び歩き始めた。太陽に焼かれた砂の上で、二人の影がくっきりと浮かぶ。少年はその影を見ながら呟くように言った。

「俺達はいつまでも一緒だ」

「うん」


 水平線の彼方を見つめながら、ふたりは手を繋ぐ。それは友達から恋人になった瞬間だった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふたつの海~AIリレー小説劇場~ 山本正純 @nazuna39

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ