ふたつの海~AIリレー小説劇場~

山本正純

第1話 茜色の海

「もうすぐ時間です」

 時計台の前で待っている私達の元へ、係員の人が駆け寄ってきた。

「分かりました。行きましょう」

 私は凛花先輩の手を引き、観覧車へと向かう。観覧車はゆっくりと空へと昇っていく。


 地上を離れるにつれて、遠くの海は茜色に染まっていった。

「ああ。この海を見てると思い出しちゃうね」

 そう呟くと、私と向かい合うようにゴンドラの席に座っている凛花先輩が首を傾げる。

「何のこと?」


「昔、あそこで出会った男の子のことだよ」

 私が窓の外を指さすと、凛花先輩は「ああ……」と納得したように頷いた。

「私達が出会ったのは、海だよ。あの時も」

「……そうだね」

 私達は互いに顔を合わせて笑い合う。


 あの男の子の名前は何だっただろうか? もう忘れてしまって思い出せないけれど、こうしてまたあの日のことを思い出せる日が来るなんて思わなかったから、本当に嬉しく思う。

 もう絶対に忘れない。今日のことを。


 あの砂浜で大切にしてたストラップを落として、困ってた時に、あの子は私の前に現れたんだ。名前も分からない私と一緒に、あの子は一緒にストラップを探してくれた。数分で砂に埋まった大切なモノが見つかると、あの子は自分のことのように喜んでくれた。

 あの日の記憶が蘇り、頬が赤く染まる。



「どうしたの? 急に、ニヤニヤしちゃって」

「何でもないよ。……ただ、今日は楽しかったなって思っただけ」

 そう、すごく楽しかった。でもまだ今日という日は終わっていない。これから、楽しい出来事がまだまだ残っているんだよ。

 私は少し前のめりになって凛花先輩に尋ねる。

「ねぇ、先輩?」

「ん?」

「……明日もまた一緒に遊んでくれる?」

 私の問いかけに、凛花先輩は優しく微笑んだ。

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