任務その四 決別(2)

 僕がねい姉えとリブラに協力を頼んだ作戦とは、

「イズモの一部をスマホ型の端末に変えてもらうから、それを世界の人たちに配布してくれ」

 ということだった。それで、

「僕らの戦いをライブ配信して応援してもらえば、人の意思を反映するウィルフレームは強くなると思うんだ」

 と、僕は説明した。それに対し、

「オッケー! 輸送ならうちらに任せな!」

 と、ねい姉えは快諾かいだくしながらガッツポーズし、

「リブラたちも、戦いに協力しマス!」

 と、リブラも快諾してくれた。



 そして今。世界中のあちこちの人たちが、僕らを応援してくれていた。

 その様子は、イズモから分離した端末を通じて僕らにも届く。

 例えば避難所で、端末の周りに集まった人たちが、

「頑張れ!」

 と僕らを励ます。

 例えば民家で、端末を囲む家族が、

「負けるな! いけーっ!」

 と、僕らに声援を送る。

 例えば都市部で、端末を拡大したモニターを見ている人たちが、

「そこだ! やれーっ!」

 と、僕らにエールを送ってくる。



 それを受けた僕らは、グリラをロックオン。ビーム砲を放つ。

 初めての命中。グリラの片脚が吹き飛び、姿勢が崩れた。

 グリラもすぐに再生するが、

『僕らだって負けてない……!』

 と、僕は強く想う。

 すると、イズモが変身したガレオンが、グリラに近いサイズへと巨大化した。敵と同等の推力で、僕らは敵を猛追する。

 発砲。僕らのサイズに合わせてビーム砲の威力も上がっているため、グリラの身体の三分の一ほどが吹き飛んだ。

『まだだ……!』

 と、亜沙人たちも粘る。再び急旋回・急減速して僕らの後ろを取り、熱線を放った。

 僕らも再び後ろを取る。攻撃ポジションの激しい奪い合い。僕らはグリラの後ろに回り込めた隙にビームを放つが、なかなかCPUを撃ち抜けない。

『あとは火力さえあれば……!』

 そう考えた僕は、次にグリラの後ろを取れた時、イズモを強力なライフルを持つガレオンへと変身させた。

 照準、発砲。津波のようなエネルギーの奔流ほんりゅうとなったビームは、グリラを丸ごと飲み込んだ。

 これで、敵を殲滅せんめつできた。しかし同時に僕は、唯一の肉親を失ったことになる。

 その想いに追い打ちをかけるように、

『――生きろよ、恵人』

 という声が、頭の中に聞こえてきた。

 頭の中が、いろいろな想いでぐちゃぐちゃになる。それに合わせるようにイズモが、

『同調率、八十……七十……六十……五十……四十パーセント。操縦が困難な同調率です』

 と告げてきた。

 僕はイズモを着陸させ、彼女との融合を解く。

 すぐに、両頬を涙が伝っていることに気付いた。にじむ視界の中、周囲を見回す。亜沙人の遺体など、彼が存在していたことを証明するものは――何もない。

 その事実を認めると、

「……っぐ、ひっぐ」

 と、嗚咽おえつが喉から漏れてきて、しまいには、

「――ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 という悲鳴に変わった。僕は、その場に泣き崩れる。

 そんな中、街中に《ゲート》が出現する。

 そして、食料を持っているらしいウィルフレームが現われた。そんな喜ばしい事実を目にしても、僕はなかなか泣き止めなかった。

 そんな僕に、イズモはそっと寄り添って、背中をさすってくれた。

 そうしてイズモは、僕が落ち着くまで、そばにいてくれた。

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