任務その二 同調(3)

 それから二日後に、早朝にイズモが迎えに来て、

「本日、《ゲート》の防衛作戦があります。来てください、恵人さん」

 と告げた。



 僕はイズモに、その日に《ゲート》が出現する場所と時刻を教えられ、彼女を戦闘機形態のガレオンに変身させてそこへ向かう。そこは、とある都市部だった。

 そして、《ゲート》出現の予定時刻まで、ステルス性重視のガレオンに彼女を変身させて、《ゲート》出現予定の位置のそばで敵を待った。

 それから、予定時刻近くになると、現れた。地平線の向こうから、敵が。今度は戦闘機の一団だ。その数、五機。

 僕らは、敵の接近をじっと身を潜めて待つ。その間、

『そう言えば、敵はどうやって《ゲート》出現の時刻や位置を知ってるんだろう?』

 と僕が疑問をイズモに発すると、

『敵に寝返ったウィルフレームが、《ロードマップ》を知っているからでしょう。それより今は、敵の迎撃に集中しましょう』

 と、彼女は答えた。

 そして、敵を射程圏内に捉える。僕はそこで、イズモを火力重視のガレオンへと変身させた。

 僕らに気付いたらしく、慌てて回避機動を取る敵を、全機ロックオン。僕らは、敵に全武装での一斉射撃を浴びせる。

 ビーム、弾丸、ミサイルの雨あられが、津波のように敵に襲いかかった。

 敵もビームや弾丸を急旋回で回避したり、フレア――ミサイルを引きつけるおとりの照明弾――をばら撒いてミサイルを防いだりする。

 だが、僕らの弾幕の濃さは、そうした回避や防御をも上回るほどだった。敵戦闘機は少しずつ被弾し、削れていく。

 それでも敵機がしぶとく再生しては削れることを繰り返す中、僕らは見た。敵機のうち、フォーメーションの真ん中にいる一機が、CPUを抱えているのを。

 僕は、イズモを戦闘機形態のガレオンに変身させ、その最重要ターゲットに追いすがった。すぐに、敵のうち二機が僕らに向かってきて、他の二機はCPUを持つ一機を守るように僕らの進路上に立ちふさがる。

 向かってきた二機にロックオンされ、アラートが鳴った。続けてミサイルが向かってくる。

 そこで僕は、すかさずイズモをステルス性重視のガレオンに変身させた。機動力は落ちるが、レーダーに映らず透明になった僕らを、ミサイルは素通りしていく。

 ミサイル回避に成功し、向かってきた敵機たちとすれ違ったら、再び戦闘機形態のガレオンに変身。ビーム砲で、射線上に塞がる敵機越しに敵のCPUを狙い――発砲。

 僕らが放ったビームは、立ちふさがる敵機を貫通し、ターゲットである一機をも貫いたものの、CPUをわずかにそれた。敵は動き続ける。

 敵は、攻撃重視の戦いかたに転換した。CPUを守っていた二機も僕らに向かってきて、合計四機の敵機に、僕らは前後から挟み撃ちにされる。

 ミサイルアラート。四方からミサイルが向かってくる。ステルス性重視のガレオンに変身して回避。落ちる機動力。遠ざかるCPU持ちの敵機。

 このままでは、敵CPUを取り逃がしたまま、《ゲート》出現の時間を迎えることになる。だから僕は、

『多少被弾覚悟で行くしかない……! やってくれるか、イズモ?』

 と彼女に確認し、

『承知しました』

 との返事を得た。

 三度みたび戦闘機形態のガレオンに変身。再びミサイルアラートが鳴る。そして迫るミサイルに構わず僕らは敵機を照準し――発砲。

 僕らのビームが敵CPUを撃ち抜くほうが、敵のミサイルが僕らに到達するよりぎりぎり早かった。CPUを抱えた敵機も、他の敵機四機も、そしてミサイルもどろどろに溶けて、超音速で飛んでいた勢いのせいで飛沫しぶきになって散った。



 次の瞬間、僕の精神にプラスになることとマイナスになることが同時に起こった。

 前者は、半透明の漏斗のようなもの――つまり《ゲート》の出現。地上に出現したそれを見て、胸の内に歓喜の思いが湧き上がってくる。

 だが同時に、

『許さんぞ……! 宇宙を汚す病原体どもめ……!』

 という怨嗟えんさの声が、どこからともなく聞こえた。

 僕は、すぐに直観する。

 それは、敵の今際いまわきわの思いだと。

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