第十七話 お嬢様、映画館で逃走する
ファミレスを出た私とリオ姉さま……それとレナさんロナさんを加え私たち一行は、映画館へ向かっていたのですわ。
「実は絵里と一緒に映画見たかったんだよね」
「フーンそうだったのですわね」
そんな感じで話していると、レナさんがリオ姉さまに恐る恐ると言った様子で訪ねましたわ。
「あの、本当に良いんですか? 私たちは構わないんですけど……姉妹水入らずって感じだったみたいですけど……」
「ん? いいのいいの~映画ってみんなで見て、感想言いあうのがたのしいし~……ってなわけでチケットチャチャッと買ってきちゃうね!」
「あ、先輩……って、行っちゃった」
「どうしたのレナちゃん?」
「いや、なんていうか……あの先輩がちゃんとチケットを買えるかなって、不安になって……」
「あ、確かに」
確かに、あのリオ姉さまが無事にチケットを変えるビジョンが見えないのですわ。
心配……
「あ、そう言えば今日見る映画の話聞いてませんでしたわ。すみません、お二人とも……もしよければ今日見る映画教えて欲しいのですわ」
「あれ? リオ先輩から聞いてないの?」
「ええ、無理やり体切断するような勢いで連れ出されましたので……映画見に行くことも今の今まで知りませんでしたわ」
「……あー、リオ先輩ならそう言うことしそ~」
そう言って苦笑いした後ロナさんは一点を指さしましたわ。
それは、映画予告が流れているモニター。
写っていたのは、青白い肌をした、まるで死人のような人たちが襲い掛かる動画でしたわ……
「あれだよ」
「あれ……アレはっ⁉ ぞ、ぞ……」
『ゾンビハザード』ですのっ⁉
ホラーホラーなのですわッ⁉
私、ホラー苦手なのですのっ‼
あ、いえ……苦手というのは嘘……ではありませんわ、けど私全然ここここここここ、怖がってませんのっ‼
「はれ? どうしたの大丈夫そんなに震えて?」
「ごごご、御心配ありがとうですはロナさん。べべべべ、別になにも……別に、ホラーが怖かったりしませんのののののの」
「いや、見た感じ怖がって……」
「みんな―只今~」
と、私が謎のピンチに陥ってる丁度その時、リオ姉さまが帰ってきましたわ。
リオ姉さま、ナイスタイミングですわッ!
「あれ? 先輩。ソレ三枚しかないんじゃ……」
「ほへ?」
そう言って、リオ姉さまは手に持ったチケットを見た。
「あっ!? しまったー!? 三人分しか買ってなかった――⁉」
「それは大変ですわー、あーこれじゃ一人映画見れないのですわー困ったこまったなのですわー」
ほ、良かった……これで断る口実ができたのですわ。
リオ姉さま、本日二度目のナイスですわッ!
「どうしよ、今から買いに行けば間に合うかな?」
「行ってみましょうか先輩」
そう言って券売機の方に歩いていくリオ姉さまとレナさん。
「ちょ、そんな余計なことしなくていいのですわぁあ⁉」
【
結局、新しい席は買うことができず、私を覗いた三人で映画を見ることになったのですわ。
何でもギリギリで時間切れだったみたいですの。
いやー、私ついてますのっ!
「……本当に良いの?」
「ええ、三人で楽しんできてくださいですわ。私は、少し疲れましたので、一人お優雅にフォンタのブドウ味をたしなむことにしますわ」
「そっか~」
ふ、これで合法的に断れましたの。
もしここで、券が買えてたりしたら……十中八九リオ姉さまに捕まれて強制的に映画を見ることになってしまっていましたの。
いやーラッキーラッキーですわ~。
あ、一応言っておきますと……私、別に怖いのが苦手とか、そう言うのじゃないですわ。ええ、無・い・の・で・す・わ!
おーっほっほっほっほ……
「ねえ絵里ちゃんって……怖いの苦手なの?」
「ビクッ、ですわッ⁉」
心の中で高笑いしていましたら、ロナさんがそんな事を言ってきましたの。
「わあ、やっぱり怖いの苦手なんだね~」
「な、何言ってますのぉ!? い、いや、怖がってねえのですわッ‼」
「え? ゾンビなのに……怖いの苦手なの?」
「だから怖がってねえのですわッ⁉」
「そうそう、絵里って間違って『死霊の裸踊り』観ちゃって……昔からむっつり気質だったんだよね~」
「だから、怖がって…………それ今関係ありませんわよね⁉ 確かに『死霊の裸踊り』ホラージャンルですけれど、ホラーですけどっ‼」
なんかリオ姉さまが変な事言い出して、思わず突っ込んでしまいましたわ。
「……有名なクソ映画ってあの? 『死霊の裸踊り』を? アレを見たの? アレを?」
「レナさん……知っているのですね。ええ、見ましたわなかなかに狂気を感じる作品で……ホラーと謳っていながら……いえ、ある意味ホラーんですけれども……六十分間裸の女性が躍るだけですからね、人間……あそこまで狂気的になれるのかって、逆に感心して全部見てしまいましたわ……」
「あ、結局全部見たんだ」
そう言って私は遠い目をしましたわ。
本当、あの時の私はなぜとち狂ってVR機器使ってみたんでしょうね? はあ、過去に戻れるものなら過去に戻ってみる前にVR機器叩きつけてyら痛いですわ。
「へえ、『死霊の裸踊り』見たことあるんだっ、私も見たことあるんだけどさ、あの映画って……
「あ、ロナさんも、見たことあるんですわね……ご愁傷さまですわぁ……」
「『死霊の裸踊り』最高の映画だよねっ⁉」
「ここにとんでもなく刺さってる人いたのですわッ⁉」
嘘でしょですわ、あれが刺さる人間がいるなんて……さすがはドスケベピンクと言ったところでしょうか?
「あ、そうだ……レナちゃん最近暇だし、今度一緒に見よっ‼」
「え、私は遠慮し……」
「良いよねっ⁉」
「え、あ……分かった……にゃぅ」
そう、圧を駆けられて折れたレナさん……ご愁傷さまですわ。南無南無ですわー。
そんなことをしてたら、映画開始まで数分というところに時計の針差が差し掛かりましたのですわ。
「あ、そろそろ時間だ……ポップコーン買ったりするの含めたらそろそろ行かなきゃ」
「お? そうですわね……それじゃ、三人とも映画を楽しんできてくださいですわ、私は、お優雅におコーラでもたしなんで待っていますわ。
――……一応、一・応‼ 再度言っておくと、べ、別に~私怖がっていたわけじゃないんじゃあっ⁉ なななな、ないのですわ~~~わわわわ」
「すっごいビビってるね~」
「ビビってねえですわッ⁉」
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