第十一話 お嬢様、宝箱を拾う

「まあ、腕生やせるからもんだいないですわ」


【コメント欄】

”腕生やせるんかいw”

”人外で草w”

”本当どういうスキルなんだよw”


「……言われて見れば確かに。これってどういう原理で生えてるのですわ? 有識者の方募集ですわ」


 そう、視聴者さんに問いかけてみますの。


【コメント欄】

”お嬢様も知らないのかよw”

”有識者って、誰も知らねえってw”

”もし、解明したいなら。ぜひ、是非俺にっ! 実験してぇ、実験させてくれっ‼

”なんか変なの沸いてて草w”


「ええ、気がつけばできるようになってましたし……ただ、右腕と右目は何故か再生できなかったりするんですわよね」


【コメント欄】

”え、そのマシンガンみたいな腕ってガチで義手だったの?”

”前の動画の時はまだ両手、両目あったし……その後ってこと?”


 そんなコメントが流れてきたのを見て、私は「ええ」と頷きましたわ。


「ええ、この右腕は義手ですわよ。とって差し上げましょうか? ほら……ごらんのとおり義手ですわ」


 そう言って右手を外して見せると、コメント欄が大きくざわつきましたわ。


「なのでまあ……私接近戦はガチで不得意ですの。接近戦技はさっきのパンチと、キックと。後ヘドバンしかありませんですわ」


【コメント欄】

”絶望的で草w”

”まあ、でもパンチはスケルトン一撃で吹き飛ばせるし……”

”ランク2のモンスターだけどなw”

”いや、ランク2でも一撃で倒せるのは結構な威力よ”

”まあ、確かにな”

”あれ? 汚嬢様、なんか宝箱出てない?”


「うぅ、皆さんフォローしてくれてありがとうございまし。それと、そうですわね……なんか宝箱出ていますわね。宝箱……宝箱っ⁉」


【コメント欄】

”いや、ワンテンポ遅れて気がつくの草w”

”ガチっぽくて癖になるわ”

”もしかして汚嬢様って……ポンコツ?”

”いまさらか? 俺はとっくに汚嬢様がポンコツだって見抜いてたぜ”


「ちょっと、皆さま私の事ポンコツって言わないでくださいですわ! 私別にポンコツじゃないですわよっ! 確かに、すぐにバラバラになって、戦闘は苦手で? テストだといつも0点で? 友達なんて一人もいなくて、家事とか全部任せっぱなしですけれど、別にポンコツなんかじゃないですわ……ないですわ?」


【コメント欄】

”ダメダメすぎて草w”

”自分でも懐疑的で草w

”ってか、友達……いないって……同志かよ”

”悲報お嬢様、ぼっちだったw

”ハンカチ、いるか汚嬢様?”


「ええ、ありがとうですわ。いただきますわ……って、別に私一人でも寂しくなんてなかったのですわ! 別にっ! 一人でもベイブレードできましたしッ⁉ 一人デュエマだって得意ですしッ! 一人パーティゲームだって……だって、ぐすんっ」


【コメント欄】

”いいって、汚嬢様……つらかったな”

”うぅ、悲惨すぎる”

”見事にぼっち極めてて草w”


「うぅ……ぐすん、ですわ」


 そう言って膝から愕然と崩れ落ちた私の目線の先に、ぼろい箱がありましたわ。

 あ、そう言えば宝箱ありましたわね。 


「……って、そうだったですわッ⁉ そもそもこの話題の前に宝箱が出てたのでしたわ!?」


【コメント欄】

”忘れてて草”

”宝箱、お前もハンカチいるか?”

”すまねえ、ハンカチニキ。俺にもハンカチくれねえか? 小さなころの黒歴史思い出しちまって……”

”ああ……ミドリムシとミジンコ柄のどっちがいい?”


「……別に、忘れてませんですわッ‼ ただ記憶の奏多に放り投げてただけですわっ! 後、私だったらミジンコ柄の方がいいですわねっ、だって食べ応えありそうですのっ……あれ!? 何の話でしたっけ!?」


【コメント欄】

”秒で忘れてて草w”

”もう汚嬢様って鶏なんじゃねえかな?”


「……あ、そうでしたの、宝箱でしたの。べ、別に忘れてたわけじゃないですわよ。と、とりあえず話題がそれないうちに、宝箱開けてしまうのですわ」


 コメント欄も『それがいい』という書き込みで溢れたのを見て(なんか一部ハンカチの話してましたが)、私は宝箱をゆっくりと開きましたわ。


「こ、これは……!?」

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