第九話 汚嬢様、トラップを踏み抜く

 青スラにボコられるという幸先の悪いスタートを切った私の配信は、現在大きな盛り上がりを見せておりましたわ。


 どんな盛り上がりを見せていたかというと……


「ぎゃああああ⁉ またトラップを踏み抜きましたわああああ! オホォ」


 そう叫び、私は無数の飛んできた槍にぶっ刺されましたわ。


【コメント欄】

”またトラップ踏み抜いてて草”

”トラップあるもんだっけ?”

”普通はトラップに引っかからないように慎重に進むから少なく見えるだけ”

”ほへー、そうなのかー”

”勉強になるわー”


 なるほど、配信の裏にはそんな努力が……待ってくださいまし? 私、昔はあんまトラップ引っかかってなかったですわよ⁉  トラップに引っかかったのだって、死ぬときだけでしたし……

 

「まさか、私。最高に運がいいんじゃないのですのっ⁉」


【コメント欄】

”いや、運は良くないだろw”

”まあ、汚嬢様レベルでトラップに遭遇する事はほぼないから……運は悪い方だと思う”

”運悪くて草w”


「運悪くて悪かったですわね! ……っと、これで最後の一本ですわ」


 そう言って、脳天を貫いた槍を引き抜きながらそう、感想を返しますわ。


【コメント欄】

”なんか、汚嬢様が死ぬの見慣れてきたな。またかって感じに……”

”分かるw”

”やべぇ、分かっちまうw”

”調教が進んでて草w まあ、俺もだけどw”


「調教って、私何もしてませんわよ……全く。とりあえず、気を取り直して先に進もうと思いますわ。そう言えば、ダンジョンって宝箱が現れることがあるんでしたわよね。ダンジョンの宝箱……手に入れたいですわね」


 なんて話ながら、進んでいると……突然、地面の感覚がなくなりましたわ。


「ん?」


 お、おかしいですわね……おほほほー。ちょっと、足さん。ちゃんと私の触感を運んでくださいまし……お、おほほー。


 そう思いつつ、視線を下へと向けると……そこには、虚空が広がっていましたわ。


「あーこれって、落とし穴ですわねー……おほほ……おほほ……オホーーーー‼ またトラップ踏み抜きましたわああああ!?」


 そう言って、私は落とし穴へと落ちていきましたわ。


【コメント欄】

”また引っかかってて草w”

”普通の配信者じゃ、危なくて見れた物じゃないけど、汚嬢様ならあんしんできるわw”

”確かに……汚嬢様って死ぬことあるのか?”

”まあしぬんじゃねえか? 切られて、ミンチにされて、首飛ばされて、串刺しにされてるけど、死ぬときは死ぬだろ”

”不死身すぎて草w”


 ちょっと、コメント欄の皆さま!? そんな草wとか生やしてる場合じゃないんですわよっ⁉


「……私、普通にひどい目に合ってるんです……わっ、ほっ!?」


 そう言っている最中に落とし穴の底に到達し地面にたたきつけられてしまいましたわ。

 体のホネは砕け、内臓は破裂し、肉という肉がミンチになってしまいましたわ。

 こりゃ、大変なことになっちゃってますわね。


【コメント欄】

”お嬢様?”

”あれ? お嬢様、動かないんだけど”

”これ、マジでやばい奴か?”

”嘘、お嬢様死んじゃった?”


 コメント欄にそんな心配の声が流れていますわ。


「……あ、安心してくださいまし……こんなんでも生きていますわ」


 そう言って、再生した口を使って声を出しましたわ。

 そうしているうちに私の体はつなぎ合わさり、完全復活。

 全くひでえ目にあいましたわ。


【コメント欄】

”普通に生きてて草w”

”生きてて良かったー”

”マジでビビった”

”普通に心臓に悪いわ”


 そんな草と、生きていてくれたことにほっとするコメントがあふれていましたわ。

 わわわ、あったかいですわー。


「生きててもらって、喜ばれるって……やっぱいいですわね」


 そう、私がコメント欄の温かさに触れていた時……突然誰かが私の方を叩きましたわ。


「……ひっ⁉ だ、誰ですのっ⁉」

 

 ここはトラップの奥底。

 誰かほかに人間がいるはずがないのですわ。


【コメント欄】

”どうしたのお嬢様?”

”え、人?”

”何? 怖い怖い”

”誰かいるの?”


 ビビる私に、ざわつくコメント欄。


「だ、誰ですの!?」

 

 そう、怖がるのを隠すように背後を振り向いた私は、絶叫しましたわ。


『カタカタカタカタ』

「ぎゃああああ⁉ 骸骨ですわあああああ‼」





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