第七話 汚嬢様、配信者に復帰する。
昨日、自宅に帰れた私は……今、ダンジョンの中に居ましたわ。
何故、ようやくダンジョンから抜け出し、快適でお優雅な生活をおくろうとしてた私が、ダンジョンにいるのか。
これには、浅すぎる理由がありましたの。
そう、それは私が配信者に戻ると決意をした、すぐあとの事……
―――――
「はてさて、配信者として復帰すると言ったものの……どうしようですわ」
「どうしようって?」
「新しく始めた方が、いいかなって思いまして。ほら、私チャンネル持っておりましたけど、底辺配信者だったじゃないですか? それに半年前から配信と待っておりますし、ならいっそ新しいアカウントで、心機一転‼ という感じで、初めてもいいかなと……」
そう言うと、リオ姉さまは首を横に振った。
「ううん、前のアカウントで配信再開した方がいいと思うよ?」
「何故ですの?」
「だって……絵里のチャンネル特定されてバズってるからね!」
「ほう、特定されて……はいっ⁉」
そう言われて見た私のチャンネルの、登録者は……い、い、一万!?
「ツブヤキッターのアカウントも、三万人っ⁉ って、ツブヤキッターアカウントの方が多いですのっ⁉」
って、いえ。そうではなく。
確か半年前まで、私のアカウント……リオ姉さまの裏垢からしかフォローされてなかったはずですの。
「はわわ、た、たくさんの人から見られてますのっ‼ 最高に承認欲求が満たされて、ハイですわっ!」
「うんうん、友達からフォローしてもらって人を稼ごうにも、絵里はぼっちで友達なんて一人もいなかったもんね」
「うっせえですのっ‼」
全く、リオ姉さまは無粋ですわ。折角人が初認欲求満たして、ハイに慣れてるというのに。
「まあ、ともかく。姉さまが言うことは分かりましたわ、こう人沢山見られているのなら、前のアカウントでした方が得策ですわね」
「そういう事、とりあえず配信予約と、宣伝しておいたら?」
「そうしますわっ……えっと、『久々にアカウント観たら、とんでもない数にフォローされて驚いておりますわ。早速ですが、復帰配信を実施しようと思ってますの配信日は……』いつにしましょうですわ?」
そう、そこまで投稿する文章を書きこんでいた私の横から、すっと伸びる手が……そう、リオ姉さまですわ。
「『……配信日は明日。楽しみに待っているのですわ~』……これでよしっと」
「ぎゃあああ⁉ リオ姉さま、何勝手に投稿しているのですわ!?」
「ははは、ごめんごめん……お、早速反応来たみたいだよ‼」
そう言われて魅せられた画面に映るのは
『楽しみ』
『ワクワク』
『全裸待機』
と、言うコメント達。
「ほら~こんな楽しみにしてる人がいる……それなのに、まさか……まさか~さっきの発言は間違いなんていうわけないよね~」
「り、リオ姉さま……あんた、はかりやがりましたわね!?」
「ふふーん、だてに【ダンライバー】の切れ者なんて言われてないよ~」
「……まったく、はぁ……こうなっては仕方ありませんわ。楽しみにしている方たちに申し訳ないですし、とりあえず枠作りますわ」
「うんうん! その意気だよ! ファイト―‼」
そう言って、応援する姉さま……の、腕を私は引っ掴みましたわ。
「……あんたも手伝うんですわよっ‼」
「へ? え、いやー……私は『今から笑って欲しいとも』をみよっかなー……なんて?」
「あんたのせいで、明日配信することになったのですから、責任取れですのおおおおおおおお!」
「びえええええん」
―――――
……と、言うことがあったのですの。
あー思い返すと、なんか腹立ってきましたの。
帰ったらリオ姉さまにちょっと強めのコブラツイストをかけてやろうと思いますの。
「……まあ、せいぜい首を洗って待ってろ、ですわ」
そう言って私は、着々と配信準備を整えていきますの。
「えっと、ダンジョン配信用のドローンと……ダンジョン配信用のドローンって、すごいの出てきましたわね。半年前までありませんでしたわよ、こんな機材」
そう言って取り出したプロペラのないドローンを眺め、起動させますわ。
「さて、これで準備は出来ましたわね。後は配信開始を押すのみ」
そう言って、私はスマホを開きましたわ。
私はバズってる、だからこそ……きっとこの配信は、とんでもない人が来てくれるはずですわ。
正直、ちょっと今は不安がありますの。
だって半年前まで、誰も見に来てくれなかったわけですから。
もしかして、バズってるのは夢で、誰も来てくれないんじゃないか?
そう、思ってしまいますの。
「まあ、死なばもろともですわッ! やってやるですわっ!」
そう言って、私は強く……とても強く、思い切り配信開始のボタンを押して、私のダンジョン配信は幕を開けたのですわ。
「(ボキッ)……ぎゃあああ⁉ 指折れたのですわああああああ‼」
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