一章 エリザベート・バースディ
第六話 汚嬢様、バズってる。
「そう言えば絵里って動画配信とか再開するの?」
「動画配信ですの? うーん、正直今はダンジョンに行きたくないというか……外に出たくないのですわ。ガクブルなのですわ」
そう言って、私はがくがくぶるぶると身体を震わせますわ。
「……がくがく、なんか物理的にも寒いですわね……って、なんで冬なのに冷房入れてるのですわッ⁉ 頭狂っていませんかですわっ⁉」
「え、そうか……ななななあ、そんなななな、おかしなななな、はなしでもないいいいいい、よよよよよよ……がくがくぶるぶる」
「リオ姉さまっ⁉ 駄目ですわ、寝てしまったら……」
「ごめん、絵里……折角再会できたのに……私、もう、ここまでみたい……ガクッ」
「リオ姉さまっ⁉ リオ姉さまああああああ‼」
そんな、リオ姉さま。なんで、なんで……
「……私たち何やってるのですわ?」
しらふに戻った私は、冷房を切り、暖房を入れたのですわ。
【
部屋も暖かさを取り戻してきた頃。
姉さまは、風呂へ。
私はソファーでお優雅にくつろいでいたのですわ。
左手にはコーラ、右手はマシンガン。
机にポテチ。テレビでは私が好きな実況者様の動画が……まさに最高の環境ですわ。
「いやーこんなん、ダンジョンにいた時は考えられませんでしたわ。最高ですわー」
そう言って私は、ティーカップに注がれたコーラをごくごく。
「ぷはー! やっぱりコーラはノーマルに限るのですわっ! それにしても……マシンガン、邪魔ですわね。外しといたほうがいいですわね」
と、私が右手のマシンガンを外そうとした時、丁度リオ姉さまが風呂場から顔を覗かせましたわ。
「絵里ー……ちょっといい~? って、ぎゃああああ⁉ 絵里の腕が、うでが外れたあああ!?」
「何驚いておりますの? こんなん、普通ですわよ」
「確かに‼」
「そうそう……って、何普通に納得しておりますのっ⁉ 突っ込みいれてくださいまし!?」
「はっ、確かに普通じゃなかった‼」
「そうですわよっ‼ って、何故にボケた側の私が突っ込んでおりますの!?」
はぁ……はぁ……全く、この姉は突っ込みというが概念をどこに置いてきたのですの?
動画では普通に突っ込み側でしたわよね? この人……
「それでなんか話しかけてきましたわよね? なんか用でもありましたの?」
そう、右腕のマシンガンを外して骨が見えたままの隻腕になった私は尋ねましたわ。
「ん? あ、そうそう。いやーなんか絵里ツブヤキッターでバズってるから聞いてみただけ」
ふーん、私バズっているのですわね……バズって……バズって……
「バズってるのですのっ⁉」
「ほら」
そう渡されたスマホ画面に映ったツブヤキッターのトレンド一位に書かれてあったのは、私の名前……エリザベート・バースディの名前がありましたわ。
そして、その下に連なる私に関連してそうなタグの数々……
「本当だ、私……私、バズって……バズって…………ちょっと、全裸汚嬢様ってタグなんてですのっ⁉ 私、汚くなんてないですわよっ!」
「え、でも半年ずっとダンジョンの中彷徨ってたじゃん? お風呂入ってなかったって言ってたし」
「あ、確かに私汚かったですわ……って、納得しちゃったですわっ!?」
ぐぬぬ……確かに、そう言われると納得するしかありませんわ。
「……ですが、私も女。乙女ッ‼ 汚嬢様などというレッテルを張られたままなんて断固としていやですわッ‼」
「じゃあどうするのさ?」
「こうなったら……こうなったら、仕方ありませんの。汚嬢様などという不名誉な仇名を撤回するため、私……絵里は……いえ、エリザベート・バースディは配信者として、お優雅な姿を配信してやりますのっ‼」
そう、宣言し。私は天に拳を突き上げたのですわ。
「……まて、もしかして私……姉さまに乗せられましたの?」
「そ、そんなわけ……ないよ?」
「ありますわね、こりゃ」
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