炸裂と爆発

「お疲れ、楽勝だったな」


「ゼネくん、お疲れ〜! いやー、圧勝だったね!」


 対戦が終わり、転送で個室に戻ってきたゼネに声を掛ければ、


「当然だ。ここで負けるようなら、一から鍛え直しだ」


 澄ました顔でゼネは短く答える。


 なーにカッコつけてんだ。

 なんて軽く茶化そうかと思ったが、確かにここで躓くようじゃ、最上位勢に追いつくなんて夢のまた夢の話だ。

 言葉は悪いかもだが、ゼネの言う通り、さっきの対戦は勝って当然の相手だった。


「それで……試しに一戦やってみたが、お前らどうする。もう一戦観戦するか?」


「はいはーい! 次、わたしやってみたーい!」


「じゃあ、次はティアか。アラヤはどうする?」


「んー……どうすっかな」


 続けてティアの対戦を観戦するのも良いけど、俺も軽くやってみたくもある。

 よっぽどのイレギュラーを引かない限りはどうせティアが勝つだろうから、そこまでして観る必要もないだろう。


「俺は別部屋に入って潜るとするよ。何戦かやったら戻ってくる」


「分かった。じゃあ、後でロビーに集合する形にするか」


「オーケー。一応、部屋出る時はメッセージ残しといて。俺も終わったらメッセージ送るから」


 部屋の外に向かって歩きながら言うと、


「いってらっしゃーい。アラヤ、油断して負けちゃダメだよ〜」


「お前もな。負けたらゼネにほくそ笑まれるから気抜くんじゃねえぞ」


 ブンブンと腕を振るティアに片手で応えて、俺は違う個室へと移動する。

 部屋の中に入り、中の操作端末からさっきゼネがやっていたルールを選び、マッチングを開始する。




————————————


対戦相手が見つかりました。

まもなく戦闘マップへ転送開始します。


プレイヤー:ゲント(ランクF)

MAP:市街地A


————————————




 やっぱマッチング完了まで早えな。

 ソマガもこんくらい早ければ……いや、そもそもの母数が比較にならないか。


「ま、何にせよ記念すべきサガノウン初対戦だ。楽しんでいくとしようか」


 呟いたところで転送が開始される。

 一瞬、視界が白く暗転したかと思えば、俺は繁華街のど真ん中に立っていた。


 雰囲気や規模は東京の都心部のような感じがする。

 対戦専用に作られたマップなのか、それともどっかの陣営がこんな感じの街並みになっていて、それをモデルに作られたのか。

 少し気になるところではあるが、今は目の前のことに集中しないとな。


 前方には対戦相手の男性プレイヤーの姿が確認できる。

 ここらでは見ない隊服に袖を通しているってことは……別陣営のプレイヤーか。


「よお、対戦よろしく!」


「こちらこそよろしく!」


 一言挨拶すれば、爽やかな笑顔と共に返事が返ってくる。


 へえ、中々良い奴そうじゃねえか。

 それはそれとして、完膚なきまで叩きのめすけど。


 カウントダウンが始まる中、俺はショットガンと大盾を形成する。

 逆に対戦相手——ゲントはハンドガンとアサルトライフルを召喚する。


「なるほど、純正ガンナーか」


 アサルトライフルをメインに戦闘を組み立て、場合によってハンドガンと使い分けるって感じか。

 となると……メイン側のもう片方はナイフとかそういった感じの武器になるか。


 そして、互いに武器を構えたところで、カウントダウンがゼロになり——戦闘が始まる。

 瞬間——俺は大盾を構えて全力ダッシュ、ゲントの元へ接近を試みる。


 相手が誰であれ、俺のやる事は変わらない。

 盾のゴリ押しで無理矢理距離詰めて、ショットガンをぶっ放すだけだ。


 ゲントが俺を近づけさせまいとアサルトライフルを掃射するも、


「これくらいじゃ止まらねえよ!」


「うわ、マジか!?」


 パワーガードを発動させながら、最小限のダメージで肉薄する。

 それから俺が安定して当てられるショットガンの射程内まで間合いを詰めたところで、俺はショットガンを構え、散弾を炸裂させる。


 オーソドックスなガンナーであるなら、そこまで機動力は高くないはず。

 まずは一本仕留められる——そう思った矢先だった。


「くっ!?」


 ゲントの目の前に半透明の障壁が展開し、俺が放った弾丸を防いでみせる。

 これは——、


「”バリア”か!」


 武器枠を一つ使うことでセットできる盾系装備——”バリア”。

 盾ほど強固ではないが、ロール問わず装備可能なのが特徴で、ガンナーの弾丸や魔法攻撃に対して高い防御力を持つ。


「これはまた随分と厄介な……!!」


「いやいや、これは結構標準装備だろ!」


「そうだけど……よ!」


 使う武器が無ければこれをセットしておけ。

 なんて言われるくらいには、バリアは汎用性に優れている。

 だから警戒してなかった俺の方に非があるわけだが、対策がないわけではない。


 まず一つ、火力を集中して一気に崩す。

 バリアは盾武器よりも耐久値が低く設定されている。

 デュアルショットガンに切り替えて弾丸を叩き込めば、バリアごと貫通して撃ち抜けるはずだ。


 二つ、大盾でバリアを粉砕して散弾をぶっ放す。

 バリアは弾丸や魔法に対しては高い耐久を誇る反面、逆に物理攻撃に対しては脆いという弱点を抱えている。

 バリアに対してシールドバッシュや大盾でタックルすることで破壊を狙うのも選択肢の一つだ。


 まあ、そこまでしなくても、この距離であれば単純に撃ち合うだけで俺が勝てそうだけど——、


(ここは……敢えて)


 装備の切り替え。

 右手のショットガンを——グレネードランチャーに。

『G/hP』で買っておいた武器の一つだ。


「っ、この距離でグレラン!?」


「ああ、バリア諸共吹っ飛ばしてやるよ」


「正気かよ!」


 ゲントが慌てて後ろに飛び退く。

 だが、それよりも先に引き金を引き、榴弾を発射する。


 狙いは足元、でも細かい調整はは適当。

 放たれた榴弾はゲントの右側後方に着弾、僅かなタイムラグを挟んでから炸裂した爆風がゲントにダメージを与える。


「ぐ、あっ!」


 同時に爆発が発生した位置と反対側に回り込む。

 そして、再度持ち替えたショットガンをぶっ放すことで追撃し、そのままゲントを撃破してみせた。




————————————

グレランは至近距離で撃つともれなく自分も巻き込む恐れがあるので、使用には注意が必要です。


バリアは、飛び道具を持たないアタッカーがガンナーやソーサラーに対して射程の不利を補うのを想定して作られており、余程回避力に自信が無ければ、メインかサブ……もしくはその両方にセットすることが推奨されています。

また、ガンナーやソーサラーであってもタンクなしでの銃撃戦が可能になる為、下手な武器を追加するよりバリアを入れておいた方が良い場合が多いです。

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