バックサイドからの進撃
「とりあえず完全に裏取れるところまで突っ切るぞ! 進路は俺が切り開くから、ティアは不届き共の露払いをしてくれ!」
「ラジャー!」
スプレッドショットとシールドバッシュでスラッグスライムやらラスティゴーレムやらを強引に押し除け、敵陣の奥へと突き進む。
横方向から襲い掛かってくるブラッドラビットやマンティピオンは、ティアのデュアルマシンガンで迎撃する。
無理に撃破を狙う必要はない。
数秒動きを止めさえ出来れば、今はそれでいい。
まず最優先すべきは、敵の数が少なくなる地点まで抜け出ること。
本格的に応戦するのはそれが済んでからだ。
それから包囲網を完全に突破したところで、
「……よし、ここら辺でいいか。ティア、そろそろ反撃すんぞ!」
「オッケー! まずはお掃除からだね!」
後ろを振り返れば、敵陣を潜り抜ける際に接触したアンノウンの群れが俺らを追いかけてきていた。
砦に向かうよりも俺らを倒す方を優先してきたか。
けど……それならそれで、寧ろ好都合だ。
前線から敵を引き剥がすことで防衛組が楽になるだろうし、ついでに俺らだけで討伐できるから経験値もたんまりと貰えるからな。
「わーお、わたし達と〜ってもモテモテじゃんね」
「ありがたいけど、この熱烈なラブコールはあんま嬉しくはねえな。コイツらには悪いが、お断りの返事をしてやらねえと」
「ですな〜。でも、言葉が通じない相手にどうやって断ろっか」
「あ、んなもん決まってんだろ。言語が通じなきゃ……
一瞬だけサブウェポンを大盾から旧式散弾銃に変更。
敵が距離を詰めてくるまでの僅かな間ではあるが、二丁のショットガンで散弾を景気よくぶっ放す。
命中精度なんて二の次。
とにかくリロードが完了次第、惜しみなく弾丸をバカスカ撃ちまくる。
ちゃんと狙わずとも敵が大量にいるおかげで、誰かしらには流れ弾が当たるだろうからな。
そんな俺の目論み通り、適度に散らばった弾丸の大半はどれかしらのアンノウンに命中していた。
「おお〜、アラヤにしては良い命中率」
「うっせ、お前も無駄口叩いてねえで攻撃しろ」
「は〜い」
二丁のマシンガンを構えると、ティアも攻撃に参加する。
ただ適当に弾をぶっ放す俺とは違い、腰だめで撃っているにも関わらず、ティアはちゃんと狙った上で敵を撃ち抜いていく。
「うっわ、何でそれで当たんだよ……!?」
ソマガでは魔法がメインの攻撃手段で、マシンガンはあくまでサブ的な運用が大半だったけど、ティアって意外と高い射撃技術を持ってんだよな。
それこそFPSとかガチったら普通に最上位層狙えるレベルで。
腰撃ちでの高い命中精度は当然として、それを維持しながらメインとサブのマシンガンそれぞれを違う役割で動かしている。
例えば、攻撃力の低い初期武器マシンガンで敵を牽制したり、動かしたりしながら、本命のマシンガンをガンガン当てて削り倒す……といったように。
ソマガだとこっちほど武器の切り替えがスムーズにやれなかったから、今ほどデュアルスタイルを披露する機会はそう多くなかったが、対戦でたまに使われるとくそウザかったのはよく覚えている。
逆にパーティー組んでいた時は、同じくらい凄え頼りになった記憶がある。
「にしても……よくそんな器用なことが出来るよな。昔も聞いたことある気がするけど、それどうやってんの?」
「え? 右の銃はよーく狙って、左の銃は大雑把〜に狙ってるだけだよ。全体をパーって見渡しながら、どの敵を重点的に攻めた方がいいか優先順位をつけてね」
「うん、普通に意味分からん。俺だったらどっちも明後日の方向に飛んでく気しかしねえよ」
じゃあ、なんでそんなクソエイムなのにガンナーやってんだよとか、それならガンナー辞めて違う武器持てよ、とか思うかもしれないが、ぶっちゃけ俺も自分でそう思う。
けど、なんだかんだ紆余曲折を経て、最終的に落ち着いたのが今のショットガンスタイルだ。
だから側から見れば違和感はありまくりだろうが、俺はガンナーが適正なんだと思われる。
——尤も、本来のガンナー像とはかけ離れた、亜流で且つ邪道なスタイルだろうけどな。
「……うし、大分削れたか。そんじゃ、ここらで攻めるとするか。ティア、前に出て何体か敵を惹きつけるから、あぶれた奴のスイープ任せた」
「りょりょ! 任された!」
サブウェポンを大盾に戻してから俺は、プロヴォークを発動しながら敵のど真ん中に躍り出る。
ガードアビリティと回避を上手く使い分けてあちこちから飛んでくるアンノウン共の攻撃を捌き、カウンターに散弾を喰らわせいく。
それと並行して、ティアが残りHPの少なくなったアンノウンを一体ずつ着実に撃破していく。
さっきは散らす弾丸と削る弾丸を使い分けていたが、今はどちらのマシンガンも一体だけに集中させ、瞬間火力で叩き潰すスタイルにシフトしていた。
「本当、味方だと滅茶苦茶頼りになるな……!」
スプレッドショットでラスティゴーレムのコアを粉砕し、ブラッドラビットの飛び掛かりをパリイで弾く。
体勢を崩したところに間髪入れずにシールドバッシュでぶっ飛ばす。
直後、無防備になったブラッドラビットに対してマシンガン二丁の集中砲火が叩き込まれると、そのままポリゴンとなって霧散していった。
「ナイスキル!」
「そっちこそ! ナイスパス!」
それから程なくして、襲いかかって来た敵をあらかた片付けることに成功した。
「ふぅ……どうにか倒せたね! さてさて、次はどこに向かおうか?」
「そうだな……このまま少しずつ蹴散らしながら進むのもいいけど、狙うなら大物が良い……って、ん?」
ふと、一体のアンノウンが視界に入る。
かなりの細身で全身影のように真っ黒な人型っぽいシルエットをしている。
「なあ、面白そうな奴見つけたぞ」
「あ、ホントだ。あれ狙っちゃう?」
「ああ、当然」
なんか手を出したらヤバい類のような気もするが、倒せそうになかったら増援が来るまで足止めする方針に切り替えればいい。
「……よし、MP回復したら攻撃仕掛ける——」
「あああーーーーーっ!!!」
「——っ!!? おい、いきなり叫ぶな——」
「だってだって!! アラヤ、あそこ!!」
「……あそこ?」
俺の言葉を遮る程に忙しない様子でティアが指を差した先——アンノウンの大群の中から飛び出したのは、二振りの短剣を手にした金髪の青年だ。
攻撃魔法であろう光の弾丸を放ちながら敵に接近する初期防具姿は、使用武器こそ微妙に違うが、俺とティアがかつて行動を共にしていたアイツと瓜二つだった。
瞬間——俺とティアは呆然とした表情で顔を見合わせ、無言で活性アンプルでMPを回復させてから、
「っしゃあ、あそこに突撃するぞ!!」
「おー!! ゴーゴー!!」
脇目も振らず、ソイツの元へ全力で駆け出してみせた。
————————————
主人公が現在のショットガン+盾の戦闘スタイルになったのは、ソマガ時代に悪友二人からフルボッコにされまくった過去が関係していたり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます