実戦訓練を終わらせて
『——敵性個体スラッグスライムの撃破を確認。これに伴い実戦訓練:Iを終了します。お疲れ様でした。十五秒後、ロビーへと転送します』
アナウンスが終わると、
『ふむ、意外とやるようだな未熟な雛鳥よ! だが、この程度で浮かれるなよ。実物のスラッグスライムはこれの二十倍は強いのだからな! 理解したのならこれからも血反吐を吐く覚悟で訓練に励むがいい! 吾輩からは以上だ!』
やっぱ相当クセ強えよ、アンタ。
もしかすると、他の陣営の教官もこんななのか?
……いや、流石にそれはないか。そうじゃないと信じたい。
「あとどうでもいいけど、二十倍は強さ盛り過ぎだろ」
そんなんしたら初心者はおろか中級者とかでも勝つのキツくなるだろ。
まあ、本来の難易度が上級者向けに調整されてるのなら納得はいくか。
チュートリアルだから本来の個体より弱く設定されてても何もおかしくはないし。
「……ま、とりあえずはこの調子で他のチュートリアルもサクッと終わらせるか」
修了認定試験を受けるには、実戦訓練をI〜Vまでクリアする必要がある。
挑戦条件を満たすまであと四つ、戦闘システムとか仕様とか色々確かめながら訓練をこなすとしよう。
そんなことを考えながら、俺はロビーへと戻るのだった。
II〜Vの内容は似たような展開の繰り返しだったからダイジェストで。
実戦訓練:II。
討伐対象——ラスティゴーレム。
赤錆したような金属で作られた人形型のモンスターで、高い攻撃力と物理耐性を持っているが、動きは鈍重だったから攻撃を避けて返しに弱点のコアに散弾ぶち込むだけで簡単に討伐できた。
実戦訓練:III。
討伐対象——ブラットラビット。
全身が真っ赤な毛皮に包まれた巨大角付きウサギで、素早い身のこなしと急所を的確に突いてこようとする行動ルーチンを持つ。
反面、攻撃力は低めに設定されていたから、盾で攻撃を受けて崩しを入れたところにショットガンぶっ放して撃破。
実戦訓練:IV。
討伐対象——マンティピオン。
カマキリのような鎌と蠍のような尻尾を持つキメラ的な昆虫型モンスター。
とりあえず攻撃範囲のギリ外側から散弾バカスカ撃ちまくって勝利。
HPを削り切る頃には何故かMPがほぼ尽きていたけど、勝ったからまあよし。
あと例に漏れず、こいつもスラッグスライム並みにデカかった。
虫がダメな人はかなりキツい相手だろうなあと思いました(小並感)。
実戦訓練:V。
討伐対象——ハーリスタス。
とにかく頑丈な岩石の甲羅を背負った巨大リクガメみたいなモンスターで、見た目通りにクッソ硬くて全然弾丸が通らなくてかなりグダったけど、最終的に無理矢理ひっくり返して動けなくなったところを集中砲火。
甲羅とは対照的に腹部は結構柔らかかったおかげで、ひっくり返してからはあっという間に倒せた。
——というわけで回想終わり!
「よし、終わったぞ。どうだ、見てたか鬼軍曹さんよ!」
『……ほう、見かけによらず中々やるようだな、未熟な雛鳥。よろしい、ならば修了試験の挑戦を許可しよう! 合格した暁には、貴様を一匹の鷹と認め、正式に我がセプス=アーテル防衛戦線の隊員に迎え入れようではないか!』
「あ、それはどっちでもいいや」
チュートリアルさえ終えられればそれでいいし。
『貴様の意思は関係ない!!』
「やっぱ理不尽だな、おい!」
……まあいい。
さっさと修了試験をクリアしてチュートリアルを終わらせるとしよう。
それからロビーに戻って一度ステータスを強化した後、すぐに端末から新たに追加された項目『新人訓練/修了試験』を選択。
もう一度シミュレーションルームに転送されれば、そこはさっきまでと違う空間に切り変わっていた。
「おお……なんか広くなってんな」
バスケットコート程度の広さだったのがサッカーグラウンドぐらいになっている。
それに伴って部屋の天井もかなり高くなっていて、環境的には屋外とそう変わらなさそうだ。
転送されてから少しすると、再び鬼軍曹の声が聞こえてくる。
『戻ってきたか、未熟な雛鳥! では早速、これから修了試験を開始する! 合格条件は、愚かにも我がセプス=アーテルに侵攻を仕掛ける不届き者——ガルーラダ、ランページジャガー、ヴィイミー三体の撃破だ!』
「……ん、急に難易度跳ね上がってね?」
『当然だ! この試験は実際に戦うことを想定して作られているのだからな! 戦場では一対多数で戦うことも少なくない! まさか貴様は、常に一対一で戦えるなどと甘えた考えを持っているわけではないだろうな!? そんな腑抜けた思考では、戦場で生き残ることは不可能だ!』
「まあ……軍曹殿の言う事も分からんでもないけどよ」
とはいえ、いくらなんでも一気に難易度上げすぎだろ。
仮に実戦訓練のモンスターくらいの強さだったとしても、初心者が同時に三体相手取るのは結構厳しいんじゃねえの?
思っていると、前方に三体のモンスターが出現する。
炎のようなオーラを纏った鷹のような怪鳥、ジャガーっぽい見た目をした二足歩行型の獣、それから顔面の大半が前髪で覆われた人形のモンスターだ。
「チッ、全部厄介そうなやつじゃん」
空を飛ぶ、動きがかなり速い、恐らく魔法を使ってくる……どれも俺の戦闘スタイルとは相性が良くない。
一番マシなのが人形、その次がジャガー、そして最もダルいのが鳥か。
普通のガンナーなら鳥を相手にするが一番楽なんだろうけど、俺のエイム+ショットガンの組み合わせだと当てるのに一苦労しそうなんだよな。
でも逆に、他二体は面倒ってだけでどうとでもなる。
だがそれらよりも問題があるとすれば、
「……MP足りっかな」
三体倒し切れるほど弾を撃てるかどうかだ。
俺の予想的には、無駄撃ちしなきゃワンチャンってところか。
「まあとりあえず……やれるだけやってみるか」
MPが尽きたら、そん時はそん時。
上手く対処して切り抜けるとしよう。
両手にそれぞれの武器を生成し、戦闘態勢に移行する。
さっきまでの戦闘でレベルが幾つか上昇し、ATKを強化したおかげでスラッグスライムと戦った時よりも大盾を軽く持ち上げられるようになっている。
どうやら、ATKはSTRの役割も果たしているという俺の仮説は当たっていたようだった。
そして、武器を構えたところで、鬼軍曹が大きく叫ぶ。
『準備はできたようだな! それでは試験を開始する! 雛鳥よ、貴様の実力が巣を飛び立つのに相応しいかどうか見極めさせてもらうぞ!』
瞬間、三体のモンスターが一斉に俺に襲いかかって来た。
————————————
書く場所がなかったので、初期ステータス載せておきます()
PN:アラヤ
Lv.1
所持金:1000ガル
ロール
レンジ:クロス
ポジション:ガンナー
クラス:タンク
パラメーター
HP:50
MP:20
ATK:10
DEF:40
SPD:10
TEC:70
LUK:10
アビリティ
スプレッドショット/パワーガード
装備
メイン:旧式散弾銃
サブ:タワーシールド
頭:-
胴:支給隊服(上)
腕:革手袋
腰:支給隊服(下)
脚:戦闘ブーツ
アクセサリー:-
※パラメーターはボーナスポイント込みです。
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