268話 ノーネームさんが、ダウン
無いものねだりは意味が無いんだ、がんばるしかない。
ぶわっとでっかいのばっかりが出てきて動揺したのか、ちょっと思考が乱れてた僕。
それも、状況確認のために索敵スキルに集中すればクリアになっていく。
地上――下は、鉄の塊たちから狂ったように発射されてた弾丸の嵐でもくもくしていて見えない。
索敵スキル上では、僕たちの攻撃もラゴンさんたち以外にもホーミングして当てられてるはずだけども――人がどうなってるかは、煙が晴れないと分からない。
「ノーネームさん、みんなは」
「大丈夫でしょうか」――そう、言おうとしたけども。
「――まに、あった」
くらり。
「っと……ノーネームさん……?」
――くたっ。
ノーネームさんの頭が、僕に押し付けられる。
疲れてる?
どうして、こんなに急に?
【ノーネームちゃん!?】
【ノーネームちゃんが】
【ノーネームちゃーん!】
【え? ノーネームちゃんがダウン?】
【やっぱ空母とかまとめて即時ないないしたから!?】
【あの大質量だもんなぁ】
「大丈夫ですかノーネームさん? それに、間に合ったって……下の人たちの救助がですか? それは良かったですけど、どうしてそんなに――」
「――――――――――――成る程」
【!?】
【え?】
ぶわっ。
煙が、晴れる。
「――成る程成る程。 実に懐かしい戦場の空気よ。 乱戦は、儂らの得意分野よな?」
【ふぁっ!?】
【おい、爺の配信が】
【急に再開された!?】
【ってことはまさか!?】
【ああ、爺たちのないないって……】
――そこには、なぜかごつごつの格好をしたお爺さんが居て。
「ほほ。 てっきり差し違えたと思ったが生きておったわ」
「おう爺、なんだか老けてやがるじゃねぇか」
「お前らこそ爺じゃろうが」
「てめえだけでも生き延びてなんとかしろって言ったのによぉ」
「あれ? そういや俺たち、どうして生き延びてるんだ?」
「む? 千切れ飛んだはずの腕と脚がくっついておるわい」
「おお、首が飛んでから数秒耐えたと思ったが、くっついとるわい」
「お主の首、もげた後食べられとったぞ?」
「旨かったら重畳なんじゃがのう」
【ひぇっ】
【ふぇぇ……こわいよぉ……】
【怖すぎて草】
【あの、どう見てもやべーご老体たちが】
【これ、一般人が遭遇したら失神させられるレベルのじゃ】
【こわいよー】
【修羅過ぎて草】
【でも……かっこいい】
「てっきり我ら郎党、最後の一滴まで差し違えたと思ったが――いや、そんなことはどうでも良いか。 見よ、この戦場」
「応」
「地獄にしてはぬるい ぬるすぎるのう」
「もう一度でも剣が振るえるか。 謎の力を纏った、我が剣技を」
「その力は、魔力と命名されたぞ。 それに、お主らがないないされておった10年のあいだ――ちょいと世界をなだめておったからの。 ちいとばかし助けてはくれんかの」
「は?」
「ないない?」
「何を言っている爺」
「10年か……呆けるには充分な時間だな……」
「……耄碌したか……残念だ」
「可哀想にのう……儂よりも若いのに」
「お主も1度首、もがれてみるか?」
「違う! 違うのだ!!」
「言うな……痴呆は誰にも等しく訪れる」
「死と同じくらい確実にな」
「安心せよ、呆けて人様に迷惑をかけるようなら介錯してやる」
「やはり腹切りかのう?」
「うむ」
「然り」
「戦場で散る以外にはそれしか無いの」
【草】
【草】
【爺がボケ老人扱いされてて草】
【しかも介錯されそうになってて草】
【草】
【まぁ……そうねぇ……「ないない」だなんて、知らない人からすれば……】
【この感じ、どう聞いても……だしねぇ……】
その周りにも――おじいさん、おじさん、おばあさん、おばさん。
割と高年齢、だけども明らかにレベルの高そうな――そして、だいたい血まみれの格好な人たちが、
「……あのお爺さん……確か?」
――――――どすん。
ワープホールから出現してきてたモンスターたちを――ばっさりと、切り落としていた。
「――兎に角、じゃ。 儂らは、ないないから解放された」
「ないないとは何ぞや?」
「異界の神による、人類の救済よ」
「ほっほ、神か」
「悪魔の化生が舞い降りたんじゃ、神くらい来てくれぬとな」
「こんな不信心者を救うとは、よほど慈愛に満ちた神と言える」
「然り」
【速報・爺、ないない解放】
【始原の爺さん……!】
【爺さんたちのセリフがいちいち物騒で】
【薙刀の婆さんも居るぞ!】
【やだかっこいい】
【これはサムライ】
【てか爺にこわーい笑顔で話しかけてる、ちょっと普通じゃない格好とお顔していらっしゃる方々は……?】
【もう分かってるだろ?】
【もしかして:11年前の攻防戦で、撤退とかで殿務めたり、陽動のために突撃したりしてた決死隊の方々】
【あー】
【学校の授業で習ったわ】
【どうしようもないダンジョンとか、そういう人たちが抑えきったんだよなぁ】
【「若い命はこれからだ」って、だいたいが壮年以上とか軍隊の人とかが】
【ダンジョンの入り口を落盤させたりしてなぁ……】
【毎年のセレモニーで、その功績が紹介されたりしてなぁ……】
【え? マジ? この人たち、生きてるの?】
【そうだぞ ノーネームちゃんが、死ぬ前にないないしてたんだぞ】
【ノーネームちゃん……】
【きゅんっっっっ】
【草】
【お前ら! ノーネームちゃんに負担かけるんじゃねぇ!!】
【いや、これ、私欲ないないだから……】
【今のはさすがに恥ずかしがりすぎだよノーネームちゃん!!】
【草】
「下はとりあえず大丈夫……だけど、ノーネームさん……?」
「ないない」
ふぅ、と、ぐったりした彼女が見上げてくる。
「これで」
「もう」
「おしまい」
「……えへ」
◆◆◆
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