367話 乱戦、そして
「はーい、要救助者助けるから一旦砲撃中止ー」
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「ありがとうございます、ノーネームさん」
僕たちが来たからか、あっちこっちに出現し始める人たち。
そんな中でも景気よく船から戦車から砲撃されたらたまらないからって言ってみたら、ノーネームさんがあっちこっちにぴこぴこぴこってでっかいバツを表示させていく。
おかげで、これまで止むことのなかったどっかんどっかんがぴたっと止まって、世界が久しぶりにしんと静まる。
「それ、便利ですね」
「べんり」
「僕もできます?」
「んー」
「やですか?」
「や」
どうやら頭の上のぴこぴこはノーネームさんのアイデンティティーらしい。
アイデンティティーならしょうがないよね。
僕がお酒を禁止されるようなもんだもん。
それは嫌だよね。
【かわいい】
【かわいい……ほんとに】
【ノーネームちゃんがだんだん感情豊かになってきて嬉しい】
【分かる】
【最初のころは、ほんとただのAIだったからなぁ】
【そこからよくもまぁここまで……】
【ハルちゃんを百合妊娠出産するまで成長して……】
【推しの肉体すらコピーして……】
【草】
【今! 大切! 感動の場面!!】
【ああ、視聴者の語彙が】
【それにしても、こんなに異世界コミュニケーションは簡単なんだな】
【一部はわからなくて撃ってたけど、すぐにやめたね】
【そりゃあ自分たちを助けてくれた天使の片割れが何か合図してきたらとりあえずはやめるよね】
【確かに】
【こういうとき、ヘタに言葉でがんばろうとするよりも記号の方が楽だわな】
【ノーネームちゃん、誘導のときとか矢印ぴこぴこ出してるしね】
「みなさん、戦えそうになかったりケガしてる人の救助を最優先してください。 攻撃は最小限です」
上空の渦からは次々とドラゴンたちが。
けども、どうやらある程度の数が集まるまでは固まって防衛に徹して、数が揃うと一気に展開してブレスで範囲攻撃してくるってパターンはつかめてる。
「なら、ないないされた人たちも」
「くる」
「!」
ぶぉん。
今度は黒い渦が――ワープホールが、地上に。
「たたみかけてくるなぁ」
「たたみ」
【ひぇっ】
【なぁにこれぇ……】
【町をぐるっと囲むように、ワープホールが】
【上空のもだいぶ町から近いところに出てきてるな】
【魔王軍の物量戦……どんだけあるのぉ……?】
ぶぉん。
ぶぉんぶぉんぶぉんぶぉん。
みんなが構築していた戦線のはるか、内側。
町の、真ん前。
そこへ――でっかいモンスターたちがすきまなく出現し始めている。
「……戦ってくれてた人たちは、とっさに防御陣形してくれてる……けど」
しゅいんしゅいんしゅいんっ。
もう無意識で展開できるようになってきた魔法に、ノーネームさんの黒が混ざり合う。
「今出て来たのはまだ良いけど、このペースだと……せっかく出てきてくれた人たちが、外と内から挟まれて……」
――――――どんどんっ。
さっきまでよりも軽い音が混ざってるけども、さっきまでよりも濃い弾幕が空を覆う。
【小さい船までが攻撃するとこうなるのか】
【空母からも慌てて発艦し始めてるし、ちょっとは何とかなるか】
【駆逐艦の主砲ってでかいんだな……】
【がんばってる戦車たちのことも褒めてあげてください】
【見た目はどう見ても豆戦車なのにドラゴンを悶絶させる威力ある戦車たちがんばえー】
【チハたんがんばえー】
【チハたんばんじゃーい】
【あれ、どう見ても戦車の中の戦車、アイドルの中のアイドルのチハたんなんだよなぁ……】
【草】
【せ、戦車は地上での機動性がメインだから……】
【チハたんだって、機動性と装甲と砲撃性能さえ上がれば……もう別物じゃねーか!!】
【こんなの俺たちが愛するチハたんなんかじゃない!!】
【草】
【ちっこいドローンも無数に飛んでってるし、ミサイルも飛んでるし】
【ここにハルちゃんノーネームちゃんのジャッジメントが降れば何とかはなるか】
【けどさすがに……】
【犠牲無し は、ムリだよなぁ】
【ハルちゃん……】
【まぁそれでも、ここに居る人たちが全滅してた過去よりはよっぽど良いはずだし……】
【そうだけど、でもなぁ】
【ノーネームちゃんがこんなにないないしてがんばったんだ 1人でも多く生き残ってほしいよなぁ】
「――――――ホーリー」
「えびる」
速度重視で、とにかく数を減らすことを第1目標に。
町をぐるりと囲んでいるモンスターたちへ――余りそうな矢は、そのワープホールへ。
「ジャッジ――ノーネームさんっ!」
「めんと」
――その瞬間に上空に出現してきた、たくさんのドラゴンさんへ目標を強制変更。
「GYAAAA――――――!!」
「……ノーネームさんっ、地上は!」
僕たちは――しょせんは個人。
羽とか生えてるし、厳密に人かどうかは置いといて、とにかく僕たちじゃ対応できる数には限度がある。
そう、今みたいに数で強襲されると僕たち自身を守るので精いっぱいだったり。
あと、少し。
あと少し――これまでの陣形を遮断するようにポップしてきたのを、せめて抑えられたら。
あと少し、手数が多ければ。
別に、それほど強くなくて良い。
ただ、それなりに動ける人たちが、数を揃えてくれたら。
「中級者以上のダンジョン潜りさんたちが、何百人か居れば」。
「何とかならないかな」。
そう言おうとして、何も考えずに横にある無表情な顔を見た僕は。
「………………………………」
「……ノーネーム、さん?」
――ちりちり。
一瞬だけ――彼女の羽と輪っかが、消えた。
そんな気がしたけども……まばたきをしたら戻っていたし、きっと気のせいだろう。
◆◆◆
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