353話 戦車ってかっこいいよね

「もう助けすぎて、みんな僕たちを見て最初は這いつくばるけども、助けた人たちの列を見つけて自分で合流するようになったね……疲れたぁー」


自動化って素敵。


でもそんなことよりも僕はだるんとしている。

疲れているんだ。


やっぱり僕、普通にくぼみに隠れて銃とかスリングショットでスナイプしてる方が良い。


動かないのが性に合ってるんだ。

いっそのこと何時間かぐてーってしてたい。


こんな風に空を飛んで魔力を使って攻撃するとか、こんなアクティブなこと、インドアでもやしな僕には似合わないもん。


「これが終わったら、絶対休んでやるんだから……ん?」


数回目とあって、町からかなり離れた場所まで来ている僕たち。


ノーネームさんがそれに合わせてか、助ける人たちを目の前に召喚していくけども――んー。


……なんか、やけにでかいシルエットが見える気がする。


「……戦車?」

「せんしゃ」


【ふぁっ!?】

【戦車かよ!?】

【いきなり時代飛んだな】

【いや、さっきはチャリオットとかあったぞ】

【着てる服装からして、ときどき近代くらいの人たちは居たけど……】


八角形みたいな金属のボディーにキャタピラー、あと細長い棒がくっついてるのって言えば戦車だよね?


厳密には軽戦車から自走砲までいろんな種類あるらしいけど、よく知らないし。


あ、一緒に出て来たモンスターたちも戦車よりでっかいね。


その戦車も、召喚されたモンスターも一瞬固まったけども――砲塔がゆっくり動いて。


――どぉん。


想像してたよりは軽いけども、近くで空気ごと震えるのに任せると意外と重い振動が体に伝わってくる。


「あ、撃ってる」

「ほうげき」


――けども、中型のモンスターを傷つける程度だ。


【あれって……】

【もしかして:地球の】

【合衆国のか……?】

【だな】


【大画面で見ると、ぎりぎり国籍マーク……国旗が見えるな  戦車の形からして見覚えがあるから分かってたけど】


【合衆国、貧食の国、あれはどこのだ……?】

【あの……うちの国っぽいのも……】

【あれ、まだ専守防衛時代のじゃ】

【多分だけど、モンスターが溢れて消滅した国家のやつもあるぞ?】

【どうなってるのぉ……?】


【確か11年前の最初の大攻勢で、まだモンスターの生態が分かってない段階じゃ、普通に軍が対応してたんだよな……各国】


【じゃあ、この戦車たち……】

【いやいや、あれは11年前だぞ?】

【だよな】

【でも……動いてるよ?】

【普通に撃ってるし、普通に機動戦してるし】


【あ、でも、普通に戸惑ってるよ】

【そらそうよ……】

【いきなり知らない場所なんだ、乗ってる人たちからすれば通信途絶だろうし】


モンスターたち数匹を相手に、きゅりきゅり動きながら軽快したりしてるっぽい動きが、なんだかかっこいい気がする。


あ、でも、エンジン音結構でっかいんだね。

なんかサイズとかはまるで違うけども、すっごく動くコンバインって感じ。


人とモンスターの声くらいしかない世界だし、しばらく車すら見てなかったから、なんか新鮮。


「……戦車って、あんなにきびきび動くものなんだ。 ほへー」


【草】

【ハルちゃん! 感心するところが違うよハルちゃん!】

【女神様、どうやら戦車を間近で見るのは初めてらしい】

【かわいい】


【この脱力っぷりよ】

【一切の危機感がないこの声が好き】

【分かる】


「とりあえず戦車に乗ってる人は大丈夫だろうから、外に出てる人とか優先で……これなら魔法じゃなくって」


かしゃん。


なんとなく、本当になんとなく――決して戦車とか武装した兵士の人とかを見て「メタリックで現代的な武器って良いよね」って思って銃を取り出したわけじゃない。


そもそもこれ、ここの地下のダンジョンのドロップで、結構古い型のだし。


「行きましょう、ノーネームさん。 魔力はなるべく節約方向です」

「せつやく」


羽をすぼませて、ひゅんっと急降下。


隣を見なくても、すぐに同じ動きをして追いついてくる彼女の感覚。


【ろろろろろろろ】

【大丈夫だ、もう吐ききって胃液しか出ない】

【吐いた人はちゃんと水分補給よ】


【安心してくれ、こうなると思ってスポーツドリンクを常備しているんだ  トイレに】

【ここの視聴者ならもうテンプレ装備だぜ!】


【草】

【視聴者たちが訓練されすぎている】

【思えば、リリちゃん救出作戦のあたりからあったからね、吐く機会……】


【吐く機会が当たり前になってる配信なんて……でも見ちゃう】

【分かる、クセになるよな!】

【なんならハルちゃんが動く予備動作でトイレに駆け込めるからな!】

【草】

【もうダメだこいつら】


まずは手近な兵士さん――戦車の外で銃を撃ってて、お腹周りとかいろいろくっつけててごつくてかっこいい――を食べようとしてるモンスターへ、


――たぁんっ。


【ひゅーっ】

【ヘッドショット来た!】

【なんだか久しぶりのヘッドショット】

【最近は魔法に頼りきりだったからね】


【やはりヘッドショットは精神の健康に良い】

【分かる】

【一撃で仕留めるこの精度よ】

【※100メートルくらい上空から急降下して狙撃してます】

【あ、ノーネームちゃんは近くのを普通に魔法で撃ち抜いてる】

【しゅごい】


「――――――!! …………!?」


「あ、撃たないでくださいね、痛いので」


【ひぇっ】

【銃口向けられて言うセリフ!?】

【痛いで済むのか】

【まぁハルちゃん、なんかすごいレベルらしいし】

【星持ちだもんな!】


【上位存在は星持ち  俺たちとは肉体の強度からして違うんだろうなぁ】


【いや、一応人間でも確認……いや、あれが純粋な人間かどうかは……】

【草】

【ひどい言い方で草】

【ま、まあ、今のところはっきりしてるのはハルちゃんだけだし……】



◆◆◆



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