354話 【現代の神話の始まり】

「……? …………??」


【兵士さんが混乱している】

【そらそうよ……】

【あの、この人の腕章、うちの国の……】

【この人もないないされたのか……】


【え!? 戦場でハルちゃんへセクハラを!?】

【草】

【やめろ!!】

【ひどすぎる言いがかりで草】


僕を見て、倒れたモンスター見て、もっかい僕を見て、戦車を見て――あ、戦車も止まってる――そんな兵士さんのそばにすたり。


魔法と違って、銃弾はそこまで当たった対象を後ろに吹き飛ばす力はない……まぁ良くて中品質の銃と弾だし。


だから、いつぞやにすっごく後悔した、倒したはずなのに前に倒れてくるあの現象対策として、落ちてきた威力そのままにモンスターの頭を蹴って――吹き飛ばした僕。


そのまま降りたら、反射的にか銃口が向けられてどきり。


けどもすぐにびっくりした顔して銃を下ろしてくれたから安心だね。


「ノーネームさーん、まだ大丈夫そうなので同じ要領で歩兵の人たちだけ救出、そのあとで戦車でーす。 時間は大丈夫そうですかー?」



【OK】



「あ、離れてるとぴこんって出してもらった方が分かりやすいなぁ」


なんかでっかいし。


ていうかあれ、サイズ、可変だったんだね……便利だから良いけどさ。


【草】

【なるほど、確かに】


【呑気なこと言ってるけど、たった今、空から落ちてきながらモンスターたちにヘッドショットかまして、追い打ちで頭を蹴り飛ばした幼女のセリフである】


【女神様だからね、感覚が違うんだよ】


【けどさ……この人……】


「……子供? それに、羽……」


【しゃべったぁぁぁぁぁ!?】

【え? え?】

【ちょっと待って!? この人、知り合いの……今で言う軍人さんに似てるんだけど!】

【マジ?】


【でも、この人、11年前に殉職したって……】

【え?】

【生きてた?】

【でも11年だぞ?】

【ていうかなんで?】


「それ、通信できます?」


なんか普通に話しかけちゃったけども、よく考えたらこうして慣れてる言葉で会話するのは久しぶりかも。


子供たちはあいかわらずに片言以前だし、ノーネームさんはノーネームさんで話しづらいのかめんどくさいのかで単語単語だし。


「……え? 今……」

「その無線機。 あの戦車たちに」


「……あ、ああ…………え? 天使?」


【女神です】

【天使だよ】

【そういやいつの間にかハルちゃん=女神ってイメージが】

【やってることの規模が違うからね……】


「じゃ、伝えられるなら伝えてください。 なるべく集まって、同じ方向向いて下がりながら攻撃してって。 そのうちまたモンスターを吹っ飛ばすので、僕たち攻撃しないでくださいって。 退却方向は、あっちの町です」


久しぶりに他の人としゃべったからちょっと嬉しかったけども、よく考えたらこの人たち、モンスターに食べられかけてる場面でワープしてきたんだよね。


ほら、今も僕の顔見て――ぐしゃぐしゃでぐろくなってるモンスター見て、もっかい僕を見てってやってるし。


「まぁいいや……ノーネームさーん、行きますよー」



【GO】



【……今、政府の広報見てきた……マジだ、この顔写真<URL>】

【うわほんとだわ】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

【11年前に亡くなったはずの軍人さんが……?】

【ってことは、他の国の戦車とか、歩兵の人たちも……】


【速報・他の国の配信コメントも阿鼻叫喚】

【阿鼻叫喚ってよりは歓喜の嵐……?】

【そらそうよ……】

【軍人さんたちの家族って人がコメントしてて、亡くなる前に見た顔そのまんまだって】

【あ、配信で「死んだはずの自分の父親が」って泣き崩れてる】

【マジかよ】


【ってことは……?】


【……ノーネームちゃん……死者蘇生、した……?】


【いやいや……いやいや】

【さすがのノーネームちゃんでも……なぁ?】

【しかもこんなに大量だし】


【でもそれなら、あの町に来たことといい、町を地上に出したことといい、ハルちゃんに申し訳なさそうな顔しつつも派手なことばっかしてるのと何かが噛み合いそうな……?】


【あの  じゃ、さっきまでの人たちも……】

【……死んだ人たち……?】


【そういやノーネームちゃん、ハルちゃんへの説明で「死」とか「救出」とか言ってたな……】

【「絶滅」とか「書換」とか……】


【もしかして:今、神話が展開されてる】


【もし、そうなら……】

【この配信……】

【モンスター、魔王軍に食い散らかされたはずの人たちを……?】

【救出する、作戦を……】





きゅらきゅらきゅらきゅら。


「戦車さんたちは、他の人たち轢かないように離れてくださいねー」


あれからいろんな軍人さんたちを羊飼いして回って、今やちょっとした部隊が編成されてる光景。


まぁ大きさも形もばらばらだし、明らかに知らない言葉とか使ってる人たちとか、ツノ生えてる人たちとか――なんか戦車のくせに半分浮いてるのとかいろいろあって、ごちゃ混ぜだけども。


救出して回ってかき集めただけなのに、自然と陣形組んでるあたりはさすがって感じ。


ちょっとした部隊だね。


「あっち」

「はいはい、次は……ああ、戦闘機かぁ」


単純作業を繰り返してぼーっとしてきてる僕は、轟音を立てながら空中から現れて――その真後ろからドラゴンの群れを目にする。


「……え? 戦闘機? 飛行機?」


【二度見ハルちゃん】

【草】

【戦闘機!?】

【そっかー、せんしゃのつぎはせんとうきかー】

【もう何が何だか】

【とにかく戦力がインフレしてるのだけは分かる】


【なんかさ、最初は民間人、んで次は軽装の……古代とかの兵士っぽい人たち、その次がどんどん鎧とか馬とかで、お次が戦車とか戦闘機とか】


【明らかに順番……だよねぇ】

【民間人から順当に戦力が……】

【ノーネームちゃん、やっぱ計算してるわこれ】


【なぁ】


【ああ】


【ないないって、さ】


【ああ】


【モンスターに食べられたり殺されたりした人たちを――】


【そうじゃないな  「食べられる寸前の状態」で隔離して】


【救出する作戦  それも、最低でも11年掛かりの大作戦だな】


【そのために、ノーネームちゃんは……】

【ないないを……】

【どこからどこまでがノーネームちゃんの作戦なんだ……?】


【え? でも、ノーネームちゃんやハルちゃんにセクハラしてないないされたのは? 割とガチで人口ピラミッド崩れた国もあるくらいなんだけど】


【あっ】

【草】

【あ、あれは……ノーネームちゃんがイラッとしたから……?】

【草】

【ひでぇ】

【ノーネームちゃん! 職権乱用良くない!】

【草】


【しかも食べきれないくらいないないさせたしな! 人類が! 自分から!】

【ノーネームちゃんくらいかわいいと、食べられちゃいたいくらいかわいいって気持ちになるからね!】


【草】

【人類ってばかばっか】

【知ってただろ?】

【でも、そんな人類を見捨てずに救ってくれるノーネームちゃんは?】

【女神……】

【ハルちゃんとセットの女神だもんな!】



◆◆◆



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