312話 ダンジョンの先には――「地上」があった

【さて】

【ハルちゃんたちが宝箱を掘り出したわけだが】


【……でかくね?】

【でかい】

【ハルちゃんたちの身長の倍くらいあるんじゃね?】

【ありそう】

【なんだこの宝箱】


ふむ。


よく見たら台座っぽいのと一緒に地面に埋もれてた宝箱。

途中でサイズには気づいてたけど……やっぱでかい。


「こういうのってちっちゃい方が良いのが入ってるって……まぁいいや」


うっかり宝箱のあった台座ごと壊しちゃったから、宝箱も蝶番が外れてフタが半開きの状態。


こうなったらもう罠とかあっても壊れてるから安心だね。


「さて、今回は何が入ってるのかな」


「わくわく」


【わくわくかわいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいい】

【ノーネームちゃん、今はそっちに集中しよ?】



【無問題】


【思考】


【分裂】


【copy】



【え?】

【草】

【朗報・ノーネームちゃん、分裂した】

【つまり、こっちにもノーネームちゃんが居る……?】

【何その天国】


もうサイズ的に、普通には空けられないからぱたぱた飛んでフタをもぎ取る感じに。


さりげなくノーネームさんが反対側でおんなじことしてくれるから楽々だね。


「……うおぅ」


あ、なんか変な声出た。

びっくりしたからしょうがないね。


【草】

【ハルちゃん】

【なんちゅー声】

【ハルちゃん、そんな声も出せるのね】

【中身! 中身が微妙にカメラさんが捉えてない!】


2人でぺいってフタを投げ捨てて、中にひらひら入り込んで。


「良いですか? ……せーの」

「せーの」


無口なりに話してくれるノーネームさんと、息を合わせて「それ」をゆっくりと持ち上げていく。


その、一辺が2メートル近くあるそれは。


【……ホバークラフト?】

【でかいドローン?】

【わからん】

【四角いのは確かだな】

【あれ、中心にあるのって】


「イスさん……?」


「SU-1」


……確か、魔王さんの自爆から逃げるときは格好良かったはずのイスさん。


それが、中央に鎮座している感じの……不思議な四角い物体。


【イスさん!】

【イスさぁぁぁぁん】

【朗報・ついにイスさんも戻ってきた】

【感動の再会だね!】

【ああ……!】


【トカゲよりも先に思い出してもらったイスさんだもんな!】

【草】

【そろそろ忘れてやれよ】

【主神への恨みは命より重いんだ】

【分かる】


「よっと」


どさっと地面に降ろす、イスさん改。


「……見た感じ、本当に初期のイスさん……の乗るスペースを増やしただけみたいな感じ、かなぁ」


僕が寝てたゆりかごみたいなやつじゃなくって、そこから変形して4人くらいなんとか乗れるようになってたあれのことね。


試しにと中に乗ってみるけども、特段の感慨はない。

まぁ乗りやすそうではある。


そういや前のイスさん、手すりが低くって乗ったみんなが落ちそうになってたっけ。


今度のは手すりどころかちゃんと1メートルくらいの壁で囲われてるから、それなりに無茶しても落っこちないね。


「ちょうど良かった、みんな、このイスさんで行くよ」


『いーす?』

『すい!』

『かり?』

『かりないない?』


【草】

【あんまり分かってないっぽい子供たち】

【見た目がね……】

【性能は約束されてるのにね……】


【見た目は大切なんだ、本当に大切なんだ……】

【イスさん、もっと流線形だったのに……】

【微妙な評価で草】

【ハルちゃんたちを救ったときのイスさんは格好良かったから……】


イスさんの中心部にあるイスさん――ややこしいけども、実際学校のイスがひっくり返ったみたいなオブジェなんだからしょうがない――に触れると、懐かしい操作パネルが表示される。


「魔力は充填されてる、のかな」


子供たちが乗り込んだのを確認して……浮いてみる。


『!?』

『あるてー!? あるてー!!』

『ないない! ないない! ないないないない!!』

『のうむ! のうむぅぅぅー!』


「大丈夫だってば」

「だいじょ、ぶ」


【草】

【子供たちが未知の感覚に恐れおののいている】

【かわいい】

【今日何回目かの絶叫中の子供たち】

【まぁ、ホバークラフトとかヘリとかそういう概念がないと怖いよね……】


【ハルちゃんたちに抱えられて飛んでたのは平気そうだったのに】

【まー、エレベーターとかも知らなきゃいきなり浮く床とか怖いだろうなぁ】

【あー】


「あ、僕運転するので、ノーネームさん、その子たちなんとかなだめておいてくださいね」


前よりも大きくなったからか、ちょっと動作がもたつく感じ。

ちょっと慣れないと、うっかりで子供たち落としちゃうかもだし。


ノーネームさんも懐かれてるし、大丈夫でしょ。

今はしゃべれるんだし。


「!?」


【草】

【ひでぇ】

【丸投げハルちゃん】

【ハルちゃん……そういうとこだぞ……】

【ハルちゃんってやっぱいい加減よね……】

【目の前の物にしか興味が無いだけだから……】


……ふぃぃぃぃん。


高度を上げて、前に進み出すと懐かしい駆動音。


「じゃ」


僕は、土埃が晴れて来始めた、破壊尽くした正面へ。


「あの先を見て――――――え?」


……進んだら煙は晴れて。


その先には。


【ふぁっ!?】

【えっ】

【……ビル?】

【ビルだな】

【あの、なんでダンジョンのある地下に明らかな人工物が】


【もしかして:この世界の町】

【!?!?】

【朗報・この子たちの世界、文明めっちゃ進んでた】

【あの、ビルが無数に薄暗い中に立ってるんですけど……】


【でもこの子たち、イスさんに怯えてるよ?】

【草】

【イスさんだからねぇ……】

【イスさんだもん……】

【この見た目と動きが合わないのよ、致命的に】

【性能はピカ一なのに、肝心の見た目がなぁ……】


【ちょ、そんなこと言ってる場合!?】

【分かってるだろ?  地球以外の明らかな文明発見して動揺してんだよ】


【あ、国連会議中継  全員発狂してる】

【泣きながら神様に祈り捧げてる】

【いい大人が地べたに這いつくばって発狂してる】

【草】

【そらそうよ……】


【ああうん、地球外生命体と地球外文明が完全に確定しちゃったからねぇ……】

【地下都市……マジか……マジかぁ……】

【子供たちの反応的に、子供たちの出身ではなさそうだが……】


【地下都市……あるいは、ここがかつての地上……?】



◆◆◆



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