311話 ダンジョンの先へ

『めさい……』

『ごめさい』

『あるあ……』

『のうむ……』


「良いよ、無事だったから」


抱きしめてしばらくするまで、子供たちの体は震えてた。


……きっと怖かっただろうし、悪いことしたって分かってる。


じゃあ、僕は許すしかない。


『……のうむ?』

『のーむ?』


「そう」


「のーむ」


【ノーネームちゃんかわいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいい】

【これはかわいい】

【ないないされるのも致し方なし】

【いや、それはおかしい】

【草】


ぱらぱらと上から降ってくる小石とかが、地味に邪魔。


そう思ってたらしい僕の無意識は、気が付いたら頭上の輪っかを広げて鍋のフタみたいにしているらしい。


こつんこつんって上から音はするけども、もう石とかは、


ごいんっ。


……結構おっきい岩とかも、無事だね。


【なんだ今の音】

【わからん】

【ハルちゃんがちらっと見ただけだし、大丈夫じゃね?】

【ハルちゃんが安心してるなら安全だな!】


「……ふぅ。 さて、と」


感動の再会もほどほどに、立ち上がって改めての実況見分。


「……撃った方向は完全に壁が吹っ飛んで……まだ土ぼこり上がってて」


地面が、さっきのノーネームさんのやつで放射状にえぐれてたのを、何倍にも拡大したようなのが対面の壁まで届いて、さらに突き抜けてて。


「……左右は……うん、正面ほどじゃないけども、普通の岩肌が見えてるね」


くり抜いた洞窟の壁みたいになってるのかな?

遠すぎて、近づかないとはっきりとは分からないけども。


【改めてやばすぎる】

【なぁにこれぇ……】

【ダンジョンが鍾乳洞みたいになってるぅ……】

【ハルちゃんを怒らせた罰だよ】

【神罰だな!】

【良かったなトカゲ! これ食らわなくって!】


【ああ、あのときはまだ幼女モードだったから……】

【人間モードなんじゃね?】

【非戦闘モードとか】

【あー】


【幼体だから戦闘力がなかったのか、それとも魔力を切らすどころかマイナスになってたりしたのか】


【でもそれでちょっとおかしい動きしてたよ?】

【そこは種族差って言うか】

【ハルちゃんだからって言うか】

【ちょっとおかしいのがハルちゃんだから】

【草】


しばらくきょろきょろしてみたけども、今すぐに崩れるとかいう雰囲気はないみたい。


「……無意識でまだちょっと魔力残ってるし……いざとなったらこの子たち抱えて飛べば大丈夫かな、上の階直通になってるし」


【えっ】

【まだあるのぉ!?】

【あんな戦略級魔法使っておいて……】

【やっぱ女神だって  だから魔力とかケタ違いなんだって】

【もうそれで良いや……】

【ていうかもうほとんどの人の認識はそうよね……】


『あるて?』

『かり?』

『ないない?』


「あ、ううん。 もう狩るのは居ないよ」


【好戦的な子供たちで草】

【ないないやめて!! 俺たちこわいの!!】

【地球人特効のワード  それがないない】

【nai-naiで地球丸ごと発狂だよ!】

【草】


落ち着いてきたからか、いつもみたいに周囲を興味津々な子供たち。


こういうのはほほえましいけども……ん?


「あっち」


「……何かありそうですか?」


「ある」


「何が?」


「………………………………」



【存在】



ぴこん、と。


表現が難しいらしく、ちょっと困った感じでいつもみたいにポップアップ。


「? ……よく分かりませんけど……」


【何があるんだ?】

【さぁ……】

【ノーネームちゃんが言い方に困っている】

【かわいいいいいい】

【なんだろうな、表現に困る?何かっての】





「意外といけますね、これ」


「いがい」


『あるあ♥』

『あるてー』

『のうむぅ』

『のーむ♪』


【かわいい】

【かわいい】

【なるほど、今までは羽担当がハルちゃんだけだったから】

【1回に1人しか運べなかったけど】

【今はノーネームちゃんもいるから……】


【1回につき2人で1人ずつ抱っこしながらちょっと飛んで、そこに連れて来た子置いて引き返して、んで走ってちょっとだけ進んでた子たちをまた抱っこで飛んでか】


【こういうときにイスさんが懐かしいな】

【イスさん……】

【せっかく格好良かったのにねぇ……】

【きちゃない袋さんみたいに出てくるかと思ったけど……】


【なぁ  もしかして、出てきてたんじゃね?】

【え?】

【いや、だって、あの戦いで落としたきちゃない袋さん出てきたじゃん?】

【でもないよ?】


【だからさ  ハルちゃんがあのぶち切れ攻撃で粉々に……】


【あっ】

【草】

【えぇ……】

【あー、確かにボス部屋なら宝箱ありそうねぇ……】

【で、大抵はモンスターたちの来る方向に台座があるわけだが】


【ないなぁ……】

【ないねぇ……】

【あるわけないなぁ……】

【吹っ飛ばしちゃったからねぇ……】

【草】


【まさかの報酬ごと破壊しちゃったハルちゃん】

【ま、まあ、本気で怒ってたし……】

【あったかどうか分からない宝箱さんは犠牲になったのだ……】

【宝箱さんかわいそう】

【モンスターたちの巻き添えでマジでかわいそう】


「……ん?」


もう5、6回目になる、ノーネームさんとのバケツリレー的なやつ。


それが、元壁があっただろう残骸の近くになってきたとき――ふと、きらりと光る何かが目に入る。


「なんでしょう、あれ」

「たから、ばこ」


「でも埋まってますよ?」

「うまる」


【草】

【あったよ! 宝箱さん!】

【よかった……よかった……】

【何で俺たち、無機質なはずの宝箱さんの存在に感動してるんだろうなぁ……】

【もう分かんないよ……】


【ハルちゃんに情緒を定期的に破壊されてるからな、もうみんなだめなんだ】

【これが……沼……】

【ああ、人類丸ごとハルちゃん沼だよ】

【それって世界統一宗教って言わない?】

【もうそれでいいや……】



◆◆◆



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