309話 子供たちと、ノーネームさんと

【10年ぶり!?】

【10年前て】

【悲報・この前の誰かの説、マジだった】

【えぇ……】

【じゃあ何? 10年前のハルちゃんもマジギレした?】

【どうやらそのようだな……】


【もしかして:女神ハルちゃん、魔王の地球侵攻を知ってぶち切れて乗り込んできた】

【もしかして:女神ハルちゃん、影で魔王ぶち転がしてた】

【でもあの魔王さんとは初対面じゃ?】

【居るんだろ……もっとたくさん】

【異世界もたくさんあるのか……】

【ひぇぇ】


【そういや、10年前のダンジョンポップのときって、最後は急激にモンスターの数が……】

【ああ……】


【<URL> これ  欧州のあっちこっちであった、当時見つかってた謎のえぐれた地形】

【あの、これ、ハルちゃんたちの足元の……】

【デカいダンジョンとかにたまたま隕石が……って書いてあるな】


【大量破壊兵器ギリ手前だけど、人間相手に使えなかった兵器を各国がこっそり使ったって予測だったが……】

【もしかして:ハルちゃん】

【世界中だぞこれ!?】


【やれるだろ  羽があるんだし】

【ああ……】

【それでいくつもでかいダンジョンが壊滅した結果、人類だけで収束させられたってこと……?】


【朗報・ハルちゃん、ガチで地球救ってた】

【マジか……マジか……】

【ぶち切れて言ってるんだ、ほんとなんだろ】

【今まではなんにも言ってなかったもんなぁ】


【知らないフリしてお酒飲んでたもんなぁ】

【草】

【お酒は必要ないだろ!!】


【もしかして:ハルちゃんってば昼行灯系】

【それだ】

【沸点が低すぎる天使で女神、でも怒ると】

【ああ……】

【人類がいじられてるのを見てぶち切れる女神様……】


【ままぁ……】

【なんてことだ、俺たちはハルちゃんという母に護られていただけだったのか……】

【まじでそうっぽくて草も生えない】


【崇めよ! 主神ハル様を崇めよ!】

【さらっと混じるんじゃねぇ始原】

【草】

【始原が否定してないってことは、本当に……?】


「はっしゃ」


「する」

「?」


お腹の底から震える振動に、お酒を飲むとき以上に酔ってたらしい僕。


真後ろから――なんか肩にあご乗せてきてるね、あったかいから良いけど――僕と同じ声で、でもたどたどしく尋ねられて、ようやく意識が戻ってきた。


「……あ、そうですね。 狙いもつけず、思わず適当にぶっ放すとこでした」


ちょっとぼんやりしてるうちに、大部屋全体がきんきらきんに輝いてまぶしくなってきてたのに気が付く。


危ない危ない。


ちゃんと指向性持たせないと、うっかりでセーフゾーンまで壊しかねないもんね。


「だって、ダンジョンの造りは、あちこちのコアを破壊すれば簡単に壊せるんだから」。


「………………………………?」


あれ?


そうだっけ?


【よくやったノーネームちゃん!】

【でもなんでハルちゃんの肩にあご乗っけてるのノーネームちゃん!】

【かわいいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいい】


【猫かな?】

【猫耳ノーネームちゃん……ふぅぅぅぅぅぅ】

【あーあ】

【草】

【ノーネームちゃん、処理能力はやっぱすごいよね……】


【※現在進行形で世界最大の動画サイトをジャックしてます】

【すっかり忘れてたわ】

【草】

【ま、まあ、もうハルちゃんについては諦めてるっぽいから……】

【今の被害はハルちゃんの配信が強制なだけだから……】

【む、むしろ同接がバグってていろいろほくほくだろうし……】


ふんっと力を込めると部屋の光がちょっと収まって、砲台がふたたびにまばゆくなる。


あ、そういえば全然居なくなってたモンスターさんたち、気が付いたらすっかり回復してずいぶん近くまで走ってきてるね。


「キィ――!!」


あ、鳥さんたちも。


――まぁ、そんなのは今から全部吹っ飛ばしちゃうんだけどね。


「じゃ、ばいばい。 なかなか楽しかったよ。 もう要らないけど」


【    】

【    】

【    】

【    】


【じょばばば】


もうめんどくさいし、なにより戦う気なくなったから、君たちとはもういいや。


だって、うざったいんだもん。


「ふぅ……っ」


まだ発動してない砲台の中を飛んできていた鳥さんたち。


その砲台に、最後の魔力を込めて――――――。


「――――――ホーリー、ジャッジメント」


きぃぃぃんっと砲台の輪っかひとつひとつがぐるぐると互い違いに回り出し、輪っか同士を繋いでる矢が勢いよくぐるぐると僕の視界を円周する。


その勢いは、まばたき1回ごとに加速していき――やがて、索敵スキルとこの体の性能とで盛られに盛られた動体視力をも置き去りにする。


それはまるで、僕の目の前からダンジョンの反対側の壁に向かってそびえている、純金でできた円錐形の砲台。


それぞれの円が左右への遠心力を伴って、発射されるのを待ちに待っている無数の矢たちに強力なエネルギーを与え続けている。


そのあまりの速度のせいか、魔力っていう実態のないもののはずなのに、まるで僕の目の前に金色の大砲が――ううん。


「僕の、鐘を――鳴らそう」


鐘。


僕から見て、ちょうど真正面の方向に釣られている鐘。


金色の、鐘。


【きれい】

【鐘!?】

【あの……それって、天国で鳴り響いてるベルのことじゃ……】

【ハルちゃん、ひとりごとだって思ってぽんぽんとまぁ……】

【でもなんか、画面越しだし世界越しなのに、俺までびりびりしてくるような――】


金色の、巨大な鐘。


それはとても綺麗な光を放ちながら甲高い音を響かせていき――。


「まもる」


それが耳に届かない音色を響かせ、僕を中心に放たれた瞬間――ノーネームさんが、ばさっと黒い羽を僕の前に広げて。


ダンジョンのボス部屋――かつて500階層でノーネームさんと戦った何倍の広さのその空間は――魔力で包まれた。



◆◆◆



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