308話 楽しくて笑いが止まらないんだ

「――あははっ」


ふらっとしてきたところで、魔力の奔流をようやく制御。


……体のほとんどの魔力を込めちゃったみたい。


ちょっと反省。


だって、魔力が空になっちゃったらまた1ヶ月とかのんびりぐだぐだしてないと動けないんだもん。


ま、でも良いや。


だって。


「ぜぇんぶ吹っ飛ばしちゃえば――しばらく戦う相手なんて、居なくなってるんだからさ」


【ハル様! どうか鎮まりたまえ!】

【ハルちゃんこわいよー】

【どんなことがあってもローテンションなハルちゃんが】

【さっきからずっと笑ってて怖すぎる】

【あの、目の前、なんかさっきよりとんでもないことに……】


「……だいじょ、ぶ?」


「大丈夫です、ノーネームさん」


また、ふらっとしてよろめいたところを、あったかい感覚。


黒いノーネームさんが、ぴったりくっついてくれて支えてくれてる。


「子供たちは?」


「うしろ」

「さがる」


「……なら、安心ですね」


【あっあっあっ】

【ノーネームちゃんがガチ恋距離に!】

【かわいいいい】

【かわいいいいいい】

【かわいいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいい】

【お前ら……】


【分かる】

【ハルちゃんそっくりの色違いさんだからな……】

【普段は金髪に金色の眉と金色のまつげで慣れていたところを、全く同じ顔で黒だからな……】


【しかも……ノーネームちゃん、お顔、近くない?】

【近い】

【密着している】

【ノーネームちゃん、お前……】

【ことごとくセクハラしおって、このドラゴンっ娘……】


僕の魔力が光の砲台のすみずみに浸透していくにつれて、ダンジョン全体がごごごって音を奏で始める。


僕の中で溜めに溜めた魔力が、エネルギーだけの力が壁の中へと浸透していき――「ダンジョンそのものを、乗っ取っていく」。


「はぁ……いい音ぉ……」


ぱらぱらと降ってくる、天井からのちっちゃな石。

それらが奏でる雨音は、とっても気持ちが良いもの。


「ぜぇんぶ壊すのって……楽しいよねぇ……」


【こわいよー】

【怖すぎて草】

【ハルちゃん、やっぱり女神さまだったのね……】

【人類の感覚じゃないんよ……】


【鎮まりたまえ! 鎮まりたまえ!】

【あ、近所の教会がめっちゃ鐘鳴らしてる】

【草】

【一神教でさえ畏れたか……】

【まー、異世界の神様だからねぇ、ハルちゃんって】


【※海外の実況だと、広間とかでみんな泣きながら祈ってます】

【阿鼻叫喚すぎて草】

【草】

【まぁ、ガチ上位種族だとは分かったし……】


【本物の脅威を目の前に、宗派なんて関係なく心が1つに……】

【「異世界の存在なら」って、大体のとこでハルちゃんは例外扱いらしいし……】

【ハルちゃんガチギレでまさかの人類結束……胸が熱いな】


僕の魔力が浸透した壁や天井、床は金色にうっすらと輝き始めている。


この、居心地の良い空間が、丸ごと僕のもの。

そう思うだけで、もっともっと嬉しくなるんだ。


「じゃ。 壊そっか♥ 君の持ち物たち」


【    】

【    】

【    】

【    】


【じょばばばば】

【ひぇぇ】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

【胸がきゅんってするのにお腹もきゅんってしてる】

【上から下から体液が止まらない】

【おろろろろろろ】


【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

【ハルちゃんのマジギレだよ♪】

【笑いとは、本来威嚇のなんとやら】

【本気で怒るとこうなるのね、ハルちゃん……】

【本気で怒ってる割には静かな怒り方なあたりがガチっぽいな】



【恐怖】


【コワイ】


【泣】


【????】



【草】

【ノーネームちゃんでも怖いか】

【セクハラ分はがんばろうねノーネームちゃん!】

【そうだぞ、毎日お風呂とか胸に納まるとか羨ましすぎるんだかららららら】

【ちょっと! これでないないひどい!】

【草】


【ノーネームちゃんですら畏れるのがハルちゃんのガチギレ】

【聞いてるか合衆国! 理解したな合衆国!】

【もちろんだよなイモリ! もう二度と顔見せるんじゃねぇぞトカゲ!】

【草】


【ことごとく理不尽で草】

【だってあいつらサンドバッグだし】

【ハルちゃんを害そうとしたって点でギルティだし】

【ならどうでもいいや、ハルちゃんやっちゃえ!】

【いけいけー!】

【草】


ああ、嬉しい。


こんなに、ずぅっと我慢してたのを一気に吐き出す快感。


ああ。

そうだ。


僕はずぅっと、ずぅっと我慢してきたんだ。


「こんなの、ずぅっと前――10年ぶりだから、嬉しいなぁ」


あれ?


「なんで10年前なんだっけ」?


「あのときは、人に被害出さないようにって大変だったからなぁ」


あれ?


「そんなこと、あったっけ」?


………………………………。


……良く分かんないけど、多分そのくらいの頃に何かで怒ったのが最後なんだろう。


昔のこと過ぎてよく覚えてないけども。


10年前。


僕が、15のころのこと。

中学生、それとも高校生。


教室のすみっこで、図書館の棚で隠れる位置の机で。

体育館の影になるところで、グラウンドの茂みで。


そうして、ずっとずっと人から離れて、ひたすらに本と向き合ってたあのころの僕。


あれ?


「僕、本当にそんな青春時代過ごしてたっけ」?


……ま、いいや。


そんなのは、もう、どうだっていいもん。


だって僕、今はこの体だし――さ。



◆◆◆



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