282話 【悲報・他の始原もやべーやつ】2

「――これで、分かったかの? 残る者も、彼らと同等の貢献をしておる存在。 まだまだ、秘密にしていることがある。 じゃからな?」


かつっ。


四度に鞘が鳴らされる。


「我らの目的は、『主神ハルの完成を守護』し、『対魔王軍との戦争に備え、「今度こそ」勝利する』こと。 それまでは――邪魔を、してくれるなよ?」


ひゅんっ。


「………………………………」


「………………………………?」


「………………………………!?」


老人の言に気を取られていたほとんどの人々は、彼がすでに剣を抜いて一振りしていた事実を、数秒の後に知る。


「……ふむ。 さすがに10年も経てば衰えるの。 ま、元からあの災厄で得た付け焼き刃よ。 苦労しておらなんだ分、やはりこうなるか」


かんっ。


そうして再度に、人々は、彼が刃を収めたのを、収めた後に知った。


――がしゃん。


――ばたん。


――どさっ。


そうした鈍い音があちらこちらで響いた後、慌てて立ち上がる面々。


【また息止まってたわ】

【俺も】

【成仏して】

【大丈夫、あの爺さんでも死ななかったから】

【草】

【こんなシリアスで尊死思い出させるなよ草】


【あ、大臣がぶっ倒れてら】

【ああ、泡吹いてる事務方が!】

【あ、げろげろしてる政治家たちが!】

【あ、もらいげろげろが】

【草】


【あー、泣きながら頭抱えてる報道陣が】

【草】

【阿鼻叫喚過ぎて草】

【画面越しでもこの迫力だ、現場にいたらやべーんだろうな】

【高レベルだろうし、魔力とか出てただろうし】

【一般人じゃムリだわな】


【もしもし爺さんたち?? ちょっと脅しすぎじゃない??】

【ていうかマジなんだなこれ……】

【おう、爺さんが新しく開けた配信、ハルちゃんがアクティブなとき並みの同接だぞ】

【草】

【ハルちゃんがアクティブって草】


【良かったね……今はハルちゃんがおとなしい時間帯で】

【だからこそじゃね?】

【あー、爺さんたち、だから今なのか】

【このタイミングで急にってのは……ハルちゃんが、明日からがんがん攻略するって宣言したからか】


【けどさ  ハルちゃん、主神になっちゃった?】

【朗報・ハルちゃん主神】

【俺入信したいんだけどどうすればいいですか?】

【おい、あんなやべー集まりに】

【でも始原だよ?】

【ならいいか】

【草】


【駄目だ、これまでの始原のイメージのせいで、文字だけで見ると笑いがこみ上げてくる】

【確かに】

【中身はこんなガンギマリばっかなのになぁ】

【なんでコメント欄じゃあんなにコミカルだったんだ……】


【もしかして:擬態】

【あー】


【ハルきゅんをこよなく愛するおねえさん「え?  普通に爺さんたち楽しんでたけど? ノリノリだったよ? 普段もそんな感じよ?」】


【草】

【姉御ぉ! バラすの早すぎるぞ姉御ぉ!】

【もはや姉御だけが癒やし】

【そのままの姉御で居て】

【あの……荘厳な顔つきのこの人たち、内心では姉御みたいに……?】


【あねごかも「え、じゃああんたたちもハルきゅんのことショタっ子として」】


【何が「じゃあ」なんだ姉御!!】

【申し訳ないがショタコンはNG】

【それはお断りします】

【俺たちハルちゃんのわずかだけど確かに確認できたお胸にににににににに】

【草】


【ちょっとノーネームちゃん!!】

【今大切な話してるの!!】

【あーあ】

【ま、まあ、今からないないされた人たちのとこ行くらしいから……】


【え、じゃあ今ないないされたら最短で帰れる!?】

【ハルちゃんのちっぱぱぱぱぱぱぱぱ】

【ハルちゃんのスリットからのぞくふとももももももも】

【草】

【あーあ】

【おいばかやめろ】


【ちょっと!! 今シリアス!! 特大の!!】

【確かにそうだよな……爺さん、征くんだよな……】

【なんか現実感ないけど、とにかくえらいことになってるのだけはわかるんだ……】

【とりあえずは姉御が悪い】

【だな】


呻き声と鳴き声と吐き声の音響する光景を満足そうに眺めた老人は――「ただの脅し」のために剣を抜きながら下段まで降りていたのを、ゆるりと登り始める。


「――では、征くとするかの。 ああ、以後儂は死人扱いで構わん。 そう皆にも伝えてある故……好きにさせて貰うぞ」


そう宣言する会長へ、始原の一同が――そして釣られてその場の誰もが、深く頭を下げる。


『ないない』。


『ノーネーム』が活発になった数ヶ月前から――いや、『ハル』の配信で暴言やセクハラ、そして外国の少なくない諜報部隊員が、すでに異空間への拉致をされていた現象。


その被害者は、もはや膨大。


――その誰もが生死不明、期間の目処は立たず。


一応は「大切にしている」とのことだが――誘拐犯の言うことを本気で信じる者など、誰も居らず。


ましてやそれが人外、推定モンスターまたは「ダンジョンそのもの」。

その行動原理はただ1つ――「推し」のため。


だから、彼の宣言は「自ら死地へ赴き、せめて拉致された人々の姿を――カメラに収める」。


そして、その地で朽ち果てる。


だからこそ老人が率先して、ただ1人向かう。


そう、とらえられている。


【爺さん……】

【いよいよ行くのか……】

【ないないが実際どうなってるのか、確かにみんなが知りたいところだからなぁ】


【もう先月の段階で、知り合いの誰かの家族がないないされてるレベルだしなぁ】

【改めて聞くとやばすぎて草】

【だからこそ、ここまでやってるんだろうが……】


【え? でも、爺さんどうやってないないされるの?】

【ノーネームちゃんに頼むんじゃね?】

【そう言ってたよな……?】

【でもさっき、姉御がさ  爺さん、普段は始原だって】

【草】


【始原だもんな!】

【始原なんだ……嫌な予感がしてきた】

【奇遇だな】

【俺はわりと最初からだぞ】


【きゅーとなあねご「楽しみにしててね」】


【ひぇっ】



◆◆◆



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