281話 【悲報・他の始原もやべーやつ】1

「――では、事情も飲み込めたということで、宜しいかな?」


「姉御」が暴れたことで弛緩した空気が、再度引き締められる。


――もしかして、これも計算の内か?


議場では、そう邪推する者たちも多かったが――大丈夫だ、今のは完全に「姉御」の暴走だ。


後で処されるから大丈夫だ。


「さて。 我ら始原――またの名を、『主神ハルを崇める者』」


【しゅしん……主神!?】

【朗報・ハルちゃん、主神になった】

【女神扱いか……】

【まぁ始原だし……】


腕を広げた拍子にばさりとマントの舞う老人の左右に広がる、「始原」の面々。


「――我らは『10年前』より、主神ハルの顕現を識っておった。 我らの特別な能力と事情により、起きうる未来を携えて」


静まったばかりの議場が、再度に騒々しくなる。


【えっ】

【は?】

【10年前ぇ!?】

【未来……えっ】

【???】

【ちょ、頭追いつかない】

【待って、じいちゃん待って、温度差で追いつけないの】

【も、もうちょいゆっくり……姉御! 今だぞ姉御!】

【草】


「故に、この危機のためにと準備してきた。 その最初のものが『始原』として『神となられる前の御神体を守護する』役割――我らが我らの智識を真実と見極めるために、必要だった自称よ」


【????】

【んにゃぴ……】

【なんか壮大だけどついてけねぇ】

【とにかくやべー事実暴露してるのだけは分かる】

【姉御と比べて情報量が多すぎる】


【じいさん、もしかしてわざと分かりにくく言ってない??】

【かもな】

【議員さんたちもぽかーんだし】

【外国勢も煙に巻くつもりかもな】

【まぁここまでやらかしてるんだ、全部織り込み済みだろ】


「今後のその役割は、この者たちに譲ることとする。 ――挨拶を」

「はっ」


老人が1歩下がる。

それに合わせ、1歩前に出たのは。


「――私はコードネームとして『部長』を賜った者です。 主に軍事、警察関係としてハル様を守護してきました」


すっ、と一礼する壮年の男性。


【あらダンディーなおじさま】

【きゅんっ】

【お前ら……】


「故に、軍事担当として申し上げます。 ――この瞬間をもちまして、私たちは独立した勢力を宣言すると。 全世界に展開する、独自の組織――軍隊として」


【?】

【は?】

【??】

【……えっと、これってぇ……】

【クーデター宣言かよぉ!?】

【ひぇぇ】


【怒らないでほしいあねご「あ、だいじょーぶだいじょーぶ、ただちょっと、全世界の軍とか警察にあたしらが混じってるって言ってるだけで、ハルきゅんとノーネームちゃんに悪さしないならなにもしない  なんだって!」】


【姉御ぉ! お前分かってないだろ!】

【しかもさっきから名前欄変え続けるやめろ!! 見づらいだろうが!!】

【草】

【姉御……】

【ここまで来たら姉御だけが癒やしだ……】


【姉御「あ、確かに。 でも当たり前じゃん、あたしがあんま知らないの。 だって入ったの、わりと最近だしさー」】


【草】

【ノリが……姉御のノリだけが軽すぎて……】

【温度差でカゼ引きそう】

【あの、今ので株価が……】

【えらいことになってら】

【わーたいへんだー】

【草】

【ああ、かわいそうに……】


「……では、次は私が」


髪もメガネもスーツもばっちりと決めていた「部長」が下がると、次は恰幅の良い中年の男性が前に躍り出る。


「私は『社長』として金策を。 現在245カ国のダンジョン商会を握っているね。 表の顔として、いろんなインタビューとかにも出てたから私のことを知っている人は多いと思いますが」


恰幅の良い――けれども目つきの鋭い壮年の男性は、そう言うとスマホを取り出し、どこへか連絡を始める。


「……以後、私たちの資金はハル様のためだけに運用されます。 そのために上場もして来なかったし、法律に従い税も納めてきた。 もちろん、これからもハル様の統治なされる世界に還元し続ける。 ――文句は、ないね?」


【アッハイ】

【さりげなく言葉のあちこちに感じられる狂信者感】

【やべぇよ……やべぇよ……】

【でも、用意周到すぎない??】

【ダンジョン商会って……10年前のあのあとにできたんだよな……?】

【ああ……】


【もしかして:こいつら、そのときから】

【えっ】

【10年前のダンジョン出現で大混乱のあのときから!?】

【えぇ……】

【なんなの? ハルちゃん関係者はみんなこうなの??】

【知ってただろ……】

【なぁにこれぇ……】


【姉御?】


【あねご「ごめ、めっちゃにらまれてる」】


【草】

【あ、確かにガン見されてる】

【総スカンになってる】

【姉御……】


【おお、もう……】

【あれ? これ、姉御、この後やばくない?】

【やばくないとでも?】

【姉御……お前はいいやつだった……かもしれないな……】


【あねごでいさせて「ひどい!!!」】


【草】

【名前欄がとうとう死にかけで草】


「……んじゃあ、次はアタシさね」

「ひっ!?」


老婆――というにはまだもう少しありそうな女性が、周囲を見渡す。


【あ、姉御が怯えてら】

【草】

【このばあちゃん……なんか魔女みたいだもんなぁ……】

【きっと怖い人なんだよ】


「アタシはね、あまり表には出て来なかったけど……ほれ、そこらの派閥の頭やってるのとかを面倒見てきた『マザー』だよ」


【マザー?】

【まま……いや、ないわ】

【草】

【ば、ばあちゃんってことなら……】

【なんかマジで魔女みたい】


【あ、見ろよ  大臣たちがみんな下向いてる】

【いや、よく見たら議員の大半が真下向いてる】

【冷や汗かいてる】

【真っ青になってる】


【草】

【いや、草じゃなくって  このババア、マジで上の人間なんじゃね?】

【えっ】

【あ、外国人の記者たち、何人か震えてら】

【もしかして:このバ……マダム、ガチの要人】


「主要な国の大体の政党に、アタシらは紛れ込んでいる。 先に言っとくけど、アタシらをどうこうしようとするんじゃないよ? ――しようとしたら」


そう言うと、彼女は年齢にそぐわぬ俊敏さでかつかつと段を降りて行き――外国の報道陣の前へたどり着き、いくつかのマイクをわしづかみにする。


『アンタたちの国――次の選挙で、政権がひっくり返るからね。 やんちゃしたら、その次の日からは――分かるね?』


と、いくつもの言語をちゃんぽんにし――ドスの利いた声で、ぼそりと宣言した。


【じょばばばば】

【ひぇっ】

【怖すぎる】

【何この婆さん怖いんだけど】


【こわいよー】

【怖すぎて草】

【裏のボス的な婆さんなのか……】

【これが、ハルちゃんの狂信者……】

【え、待って  始原って、みんなこうなのぉ……?】



◆◆◆



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