142話 はじめてのだんじょんはいしん(真) その4

たぁんっ。


良い感じにモンスターを狙撃中の僕。


けど、どうしよこれ……ほんと。

淡々とモンスター狩りをしながらだと、思考がループするんだ。


父さんたちに……いや、やっぱ信じないよね……。

むしろ僕が攫ってきて吹き込んだってなるだけだ。


男女で何かあったら、とりあえず男が悪い。


まぁ実際そういう割合の方が多いんだろうからしょうがないけども、本当、この世界は男に厳しい……。


女の子になってる現状は相対的に世界が僕に優しい。

なんか戻りたくなくなってきた……いや、戻りたいよねやっぱり。


ああ、まさかこの僕自身が幼女になって隠れ潜まなきゃいけないだなんて。


たぁんっ。


うん、良い感じ。

だんだん慣れてくるこの感じが良いよね。


【淡々と響く銃声】

【今日は徹底的に銃の日なのね】

【スリングショットだと風切り音だもんな】

【弓の弦音も好きなんだけどなー】

【まぁ調子悪いんなら素直に銃だろ】


腕が疲れるなら、普段とは違って狙う時間を短縮すればいい。


そう気が付いてから、モンスターをスキルで視認してから距離と方角を普段よりイメージ、それから構えて撃つって感じにしてみている僕。


……なんか射撃スキルも上がってる?


気のせい?


まぁいいや。

それよりもなによりも今と将来の不安の方が大きいんだ。


……幸いにして親は結構な放任主義だし、僕が変わり者だってのは分かってるはず。


年2回の帰省は……「いいとこの温泉取れたからキャンセル」って、それっぽく言い訳しよ。


いつもの気分屋ってことで、文句くらいしか言ってこないだろうし。


親の襲撃は……まぁ2回程度は無いとして、本業と副業の貯金で、とりあえず1年は何とかなるのかなって感じ。


それ以上は……うん、そのときになったら考えよう。

きっと何とかなるさ。


いざとなったら……やっぱダンジョンにでも籠もって時間稼ぐ?


ああ、こんなときに「彼女と過ごすから」って絶対に信じられない言い訳ができない悲しさ……。


むしろそう言ったら「変なのに引っかかったんじゃ!」ってアパートに来られるまである信頼感。


悲しいね。


……けど。


視線を下に向ける。


子供用のズボン。


その下にあった女の子のあそこって……ダメダメダメダメ、ダメだってば。


この体、幼女、見る、事案、逮捕、刑務所、性犯罪。


どうやら僕は混乱しているらしい。


……多分、こうしていつも通りのことをしてる内に現実感が戻って来て、そのせいでまた女の子になってるのを自覚してるんだろうね。


感情も動きやすいし、この体のせいもある。


女の子への免疫がなさ過ぎるあまりに幼女にでさえこうなってるのもある。


ならしょうがない。


確認のための目視だけは仕方ないにしても、何度も思い出さないようにしないとね。


ヘンタイさんになっちゃうからね。

ロリコンさんにはなりたくないんだ。


あれになったらなんか男として……って言うか人生がもうダメになる気がするんだ。


最後の一線だ。


……けど、びっくりするくらいつるつるですっきりした見た目だった……じゃなくて。


たぁんっ。


……あぶな、今ぎりぎり当たった……考えごとはほどほどにしないと。


【淡々と画面外のモンスターをワンショットキルし続けるハルちゃん】

【調子上がってきたな】

【今日は低血圧だったり?】


【いや、普段からびっくりするくらいにテンション一定じゃん、ハルちゃんって】

【そういやそうだった】

【なおさら今朝のが心配だけど……大丈夫だよな……?】


あ、そっか。

どうせトイレとお風呂で毎日見るんだ。


うん。


なるべくやらしく考えなきゃセーフセーフ。


そうそう、トイレとかおふろは、いとこの赤ちゃんのおしめ変える感覚で行こう。


僕に赤ん坊に欲情するヘンタイさは無いんだ、だったら堂々と見ればいいんだ。


良し。


何が良いのかは分かんないけども、僕の中で納得が行ったらしく、今朝読んでた数学書を思い出すと頭の中は数字だらけに。


頭の中で浮かび続けていた女の子のおまたが、ようやく消えてくれた。





すっきりした僕は、この体の感覚にも慣れてきて……普通にダンジョンを捜索。


で、お昼になったけどもおなかは空かない。


でも動き回ってるからバテちゃいけないって、入り口のコンビニで買ったおにぎりをもぐもぐ中。


【昼休みが終わってしまった……】

【今日何食べたよ?】

【昨日徹夜だったからお粥だな】

【徹夜は10年後に響くぞ】

【リアルすぎてなんか嫌】

【俺の経験だからな】

【おろろろろ】

【草】


【ハルちゃんは……まだ湧き待ちか】

【良いポジション確保したみたいだからな】

【あれからは外さなくなったみたいで一安心】


【しかしハルちゃんでも外すことあるんだな……】

【誰だって調子出ない日はあるよ。 でも持ち直したんだからやっぱハルちゃんすごい】


……読書用のタブレットさえこの手にはでかい。


と言うか、そもそも目が良くなってるからこんなに大きい画面要らないかなぁ……。


あー、そうだよね。

子供ってちっちゃいものでも見づらいとかないもんね。


……けども、本当に別人の体なんだなぁ。


目が良くって鼻も利いて、味も濃く感じる。

忘れちゃったけども、多分子供ってこんな感じ。


いつの間にか大人になっちゃって……25年なんてあっという間なんだなぁ。


【あ、画面ちょっとブレてる】

【昼寝か? 珍しいな】

【転び掛けてたし……大丈夫かなぁ】


……昨日は正直、寝るのが怖かったんだ。


だから昨日もお酒呑んだし、朝も早く起きちゃった。


だって怖いよ。

起きたら別人になるんだもん。


……最初こそ「こんなかわいくてちっちゃい子に」って、女体への免疫ゼロな男心でどきどきしてただけだけど。


そうだよねぇ……体が変わっちゃうとか、ホラー以外のなにものでもないよね……。


【船こいでる?】

【こいでるな】

【うとうとハルちゃん】

【ペロペ……え、寝ちゃう?】


【あ、カメラの目の前に荷物置いてる岩が】

【とうとう寝落ちか……?】

【ま、まあ……いつも通りに発見されない高所だから……】

【寝ててもハルちゃんのスキルならある程度は大丈夫なはず】


……あ、だめだ。


僕、ダンジョンの中で――


【床から5メートルくらいのくぼみに入ってたし大丈夫だろ】

【ま、まぁ、リストバンド付けてるなら……】

【ハルちゃんの隠蔽なら、睡眠で少し落ちても大丈夫……だよな?】


【……ハルちゃんはいつも通りに見ていないから伝えるし、伝えたらすぐに消す。 儂の部下をだな――】





……ん。


【あ、起きた起きた】

【ハルちゃんおはよー】

【しかし3時間とはかなりがっつり】

【やっぱ体調崩してたんじゃ……】


「?」


岩の中。


いつものリュック。

いつもの装備。


……いけないいけない、こんなに寝ちゃってた。


無意識ながらに隠蔽MAXにしてたから大丈夫だっただろうし、現に今もモンスターが目の前とかむしゃむしゃされてるとかは無いけども……待てよ?


幼女?


……睡眠時間、検証しなきゃ……明日からダンジョンはお休みで家で過ごそう。


大切なことを忘れていた僕は、また血の気が引いた。


……1週間分の睡眠データ取って、どのくらい寝なきゃいけないのか検証しないと。


そうだよね、子供なんだから睡眠時間だって変わるはずだ。

ダンジョンで日銭を稼ぐ以上、今まで以上に体調管理が大事なんだ。


【お  珍しく画面にモンスターが】

【普段はほとんど画面外で一撃だからなぁ】


ちらっと下を覗いてみると、部屋の中には数体のモンスター。

さすがに3時間経てば湧きは回復してるよね。


……夕方になってるけども、結構寝たしまだまだ行ける。


ダンジョンの中の人は……全体的に少ないみたい。


なら、今日の稼ぎ、もうちょっとだけ……。


【起きてすぐに始まる殺戮】

【モンスターさんたちかわいそう】

【いつものだろ?】

【いつものだな】

【さー、午後もがんばるかー】





「――以上が、一般の人間をかませての依頼で得た情報になります」


再度に、とある重厚感のある部屋。

そこには老人と壮年の男性が対峙していた。


「……………………………………」


「……ご覧の通り、事前に提供された座標には、その……」

「……いや、これで良い。 助かった」


壮年の男性が手渡した資料をじっと見つめていた老人は、少しの沈黙の後に口を開く。


「……配信の電波……発信源は変わっておらぬのぅ。 じゃが、ハルちゃんは『彼』だったはずなのだが……」

「ええ、以前の調査では……」


「――ハルちゃんが、めんこい女子に。 いやいや、そんなことはあるはずがない」

「ですが、配信へのログイン端末も、なによりリストバンドの個人識別番号も……」


「ふぅむ。 ……少々内偵が必要のようだのう……?」



◆◆◆



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