第15話 大嫌いな女に、男としての本能を感じ取られてしまった

 乃蒼の写真集は、第二弾、第三弾が発売された。いずれも大好評で、多くの人から支持された。


 小さい長所をたくさん持っているより、大きな長所を一つ持っていたほうが大金を得られる。写真集の発売後に、そのことを感じるようになった。


 乃蒼は男たちから、サインを求められていた。彼女は面倒くさそうな顔をしながら、ファンの要望に応えていた。写真集を買ってくれるお客様を、ぞんざいに扱わないようにしているのを感じた。


「乃蒼様、ありがとうございます」 


 乃蒼様という呼び方は、男の中ですっかりと定着。写真集をたくさん売り上げたことで、神様さながらに崇められるようになった。


 逆タマに乗りたいのか、告白する人も急増。不純な男たちと思いつつも、人間はそういう生き物なのだとわりきる。行動基準の最優先事項は損得勘定だ。


 乃蒼は告白については、お断りをしていた。交際を申し込むのはいいけど、交際を申し込まれるのは許さない。客観的な思考に基づいても、傲慢にしか映らなかった。


 豊は男子生徒から声をかけられた。


「乃蒼様にサインをもらおうぜ」


「写真集を買ってないから・・・・・・」


 男子生徒の目は、大きく見開いた。


「嘘だろ。あんなに素晴らしい写真集は、なかなか見つからないぜ」


「まったく興味ないから・・・・・・」


 乃蒼は話を聞いて、こちらにやってきた。


「豊君、一冊プレゼントしようか」


 豊はまったく興味を持たなかった。


「いらないから・・・・・・」


「豊君なら、10冊くらいプレゼントしてもいいよ」


「一冊もいらないから・・・・・・」


「写真はいらないのだったら、目の前で水着になってあげてもいいよ」


 乃蒼の水着と聞き、男の数人は鼻血をふきだした。わかりやすすぎる反応に、苦笑いするしかなかった。


「水着姿も見たくないから・・・・・・」


「水着が嫌なら、ヌードになろうか。私の裸は絵になると思うよ」


 乃蒼のヌードと聞いて、心はちょっとだけ動くこととなった。こんなにも嫌っているのに、どうして裸を見たいと思ってしまったのか。自分の胸の内に秘めた、オスの本能に嫌気が差した。


「男としての本能を感じたよ。私の裸に興味を持っているんだね」


「そんなことはねえよ」


「強がっているところがかわいい」


 乃蒼にちょっとした隙を見せてしまうとは。自分のほっぺたを100発、200発と叩いてやりたい気分だった。

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