第30話 欲求不満だと思われる理由…

 授業中に眠っていた事で、上本先生から叱られた僕と紫音。紫音は寝たフリだが、日頃の態度が著しく悪いと言う事で巻き添えに遭っていた。そして、二人で戻って来たあと、麻友の事を紫音さんと呼んだ事で、被害が広がり…、


「つまり…、夢の中で私の姿をした紫音様に会ったから、間違えた…と言うわけですか?」


 名前を呼び間違えたら、麻友に問い詰められた。どこからが夢で現実かの境が無くなってしまった事を話すと、


「あの女教師が愛する優樹さんに薬物を投与したんですね…。」


 麻友はそう言うと、スマホを取り出して、何かをしていたので、少し怖いが尋ねてみると、


「いえ、少しお金を出して、あの女教師のやらかした薬を調査しておこうと思いまして…。内容によっては処分をせねばなりません。それに…」


 麻友は紫音を呼ぶと、彼女は犬のように尻尾を振りながら近付いて来た。


「私の能力を使えば…、紫音様の体に入る事も可能ですが、紫音様の魂を追い出すのは、さすがに不可能です。従って、私が紫音様になる事は可能ですが、紫音様が私になるのは不可能なのですよ。」


 麻友はそう言って、紫音の頭を撫でて狐の耳をマッサージしていた。


(犬?紫音さんは犬なの?)


 従者に可愛がられているペット主が、


「そもそも、麻友が優樹くんの体に入って、自分の体を犯せば…妊娠可能じゃないの?」


 頭を撫でられて気持ち良さそうな紫音が妊娠したいなら、そうするのがてっとり早いので無いかと言ってきたら、「出来るなら、とっくの昔にやってます。」と麻友に否定されていた。


「優樹さんは変な性癖をお持ちらしく、私が紫音様の真似をしないと興奮してくれないみたいなんですよ。本当に困った方です…。」


 麻友は僕を困った人間だと話していたが、どこか…嬉しそうだ。


「え~、もうマンネリ期間なの?優樹くんは飽きっぽいの?麻友、私の体で優樹くんとエッチする?」


 紫音が麻友に告げると、


「それって、欲求不満の紫音様がしたいだけですよね?本番への練習相手に私の優樹さんを利用しないで下さい。」


 麻友はその手には乗らないと言って、紫音の首根っこを掴んで持ち上げた。


(さすがは麻友ちゃん…、主相手にも容赦ないな。)


 体格差があるにしても軽々しく持ち上げた麻友は紫音を席に戻すと、僕に向かって、


「優樹さん、変態プレイなら、いつでもお付き合い致しますので、その日のメニューを決めて下さいね。その設定で、私が演じます。」


 僕の事が書かれている説明書みたいな物を作って、お品書きみたいなパターンが複数用意されているようだった…。


(麻友ちゃんって、真面目過ぎて、すべてをキッチリしたい派だよね。妊娠しやすい日はガンガン迫ってくるし…。)


 真面目な人間が取る行動パターン型に当てはまって来た彼女へ、


「もしかして…、麻友ちゃんって、楽しんでない?」


 今を楽しんでいるのか?と尋ねたら、


「私、好きな相手に攻められるのが、好きなので…、こちらの学校一の優等生を調教してみたシリーズを試していただけると、嬉しいです。」


 彼女は楽しそうな感じで、僕が麻友さんを学校でのアブノーマルプレーをして欲しいと懇願して来た。どうやら、彼女は好きな彼氏に染まってしまうタイプの人間らしい…。僕が特殊な条件を好む男性では無い事を説明すると、


「そう来ましたか…、健気な彼女を信用させたあとに…、よりハードプレイを始めるパターンの奴ですね。」


 僕の真面目な態度ですら、変態プレイの一貫として受け取られてしまっていた…。その後も、SMプレイのために上本先生から貰ったであろう薬物の投与は控えて欲しいと言ってきたりしていて、彼女は僕の事を完全に危ない彼氏だと思い込んでいるようだった。困った僕は休み時間を使って、どうして彼女はこうなったのか?を紫音に相談する事とした。


「優樹くんが変な子だから、麻友も変になっちゃったんだよ?元々、同居した初日に麻友を妊娠させていたら、普通の麻友のままだったのに、未成熟の女子にしか体が反応しないとか、体の中身が別人じゃないと興奮しないとか、そんな変な設定ばかりを盛り込んだのは、君だよね?ほぼ、裸の恋人に恥を掻かせて、追い込んだのは君だよね?」


 彼女に相談すると、麻友を変にさせたのは、僕だと言ってきた。珍しく、怒りながら、僕へ詰め寄って来たので、思わず彼女の頭を撫でてみると、


「それ、好き~。」


 彼女は頭を撫でられる事が好きだと言い出して、大人しくなっていた。


(紫音さんって…、可愛い…。)


 あまりに可愛くて、しばらく撫でていると、


「佐藤って、とことんまで、キモいわ。アンタ以外の男は誰もそのキモ狐を関わろうとしないのに…、性癖もおかしければ、可愛がる動物もキモいのね。」


 紫音が大嫌いな小鈴が僕を含めて、気持ち悪いと言ってきた。それを聞いた紫音は僕の耳元で、


「小鈴が嫉妬してるね。麻友は全然、嫉妬しないのに。」


 彼女が言うには、僕が紫音を可愛がる光景に嫉妬しているらしい…。反対に麻友は彼氏の僕が紫音の頭を撫でようが、メスの狐を可愛がっているだけ程度にしか思っていないようだった…。


(麻友ちゃんは急に大人になったよね…。キス以上の事をしない限りは怒らなさそう。ライバルの小鈴さんへの余裕を見せるため?それとも…)


 僕は麻友さんが自分の席で何をしているのかを覗くと、夜に僕と楽しむ変態プレー用の衣装をネット注文しているようだった…。それを紫音さんに相談すると、


「夜の生活で優樹くんを喜ばす方法が分かって嬉しいんだよ。今まで、相当、悩んでいたし、欲求不満だったんだよ?優樹くんのアレの原因を取り除いたんだから、いい加減、麻友との子供を作ってあげなよ?」


 紫音に麻友をこれ以上は待たせたらダメだと叱られてしまった。


「麻友ちゃんの嬉しそうな顔を見たら、僕の事が好きなのは良く分かってます。求められたら…必ず、答えるつもりです。」


 自分の事を思ってくれる彼女に出来るだけの要求には答えると紫音に告げたら、それを聞いた彼女は笑顔でまるで自分の事のように喜んでくれていた。


(紫音さんって、少し変な人だけど…、優しくて、良い人間なのは分かる…。)


「ふふ、これで…神里先生を追い込めるわ。」


 たまに不敵な笑みを浮かべて、怖い所もあるけど…。女子の情緒に高低さがあるのは、欲求不満の証なのかとも考えた僕は女性が怖くなる男の気持ちが痛いほど理解したのだった…。

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