第26話 中学生を妊娠させた極悪人

「まさか、14歳の鈴音ちゃんに先を越されるとはね~。」


 いつもの紫音の教室でのガチ過ぎる恋愛会話に、


「小鈴様、勝負はまだ決まっておりません。負けませんよ。」


 麻友が小鈴との対決について話すと、


「妹の鈴音を妊娠させたクセに、ついでに襲った私は妊娠に失敗するって、何様なのかしら、あの男。妹の制服を着せて、同い年の私にお兄ちゃんって呼ばせる特殊な性癖に付き合ってあげたのに、ほんと、最低なクズよ!」


 二人の会話にしれっと、小鈴が加わっていた。


(やめて!教室の全員に聞かれてるよ!)


 妊娠ワードに特殊な性癖を教室で暴露された。


「えっ…、佐藤くんって、麻友ちゃんと付き合ってるのに、小鈴ちゃんとその妹にも手を出したの?マジ?」


 ほぼ、全員に聞こえる声で三人が喋り始めたため、クラスの他の男子、女子に会話が伝わり、真相を聞きたがるクラスの女子は小鈴に詰め寄っていた。


「そ、マジなの、アイツ…この間、義理の妹の麻友の恋人だから、家に呼んだら…、真面目に勉強している私と初対面の妹を立て続けに襲ったのよ?あり得なくない?」


 自分は妊娠しなかった事で、機嫌を悪くした小鈴が洗いざらい不満をぶつける形で他の女子にあの日の情報を与えてしまった。


「うわ~、避妊すらせずに、中学生の子を妊娠させるなんて、最低…。麻友ちゃん!こんな奴と別れなよ!」


 クラスの女子は麻友を不憫に思ったのか、僕と別れろと促した。


「いえ、その日のうちに気の迷いだとお認めになられて、やり直そうと言って下さったので…、私は優樹さんを信じる事に致しました。」


 優等生の麻友がメチャクチャ真面目に受け答えした結果…、僕の評判は地に堕ちて、近寄ったら妊娠させられる強姦魔扱いを受けて、学校の女子からは一番の嫌われ者に転落した。


「二人とも、やり過ぎだよ~。優樹くんが他の人からモテないように仕向けちゃダメだよ~。」


 イケメン英語教師と言う彼氏持ちの狐っ子の紫音は部外者に近い存在なので、どことなく麻友と小鈴を注意したあと、中立の立場で僕に接してくれていた。


「スゲェな、佐藤は美人食いばかりしてて…。」


 一部のクラスの男子からは、クラス一の美人の彼女持ちで、お金持ちのお嬢様で理事長の孫娘を妊娠させた強者として、讃えられていたが、それ以上に他の女子生徒の軽蔑の目が痛くて、嬉しくも無かった。


「うむ、佐藤のトリガーが妹だとすれば、私の大学生の妹もそのトリガーに入るのかな。豹変する別人格とやらが、気になるし、会わせてみるか。」


 上本先生には妹フェチだと思われたらしく、自分の妹を僕に会わせると言う、謎の検証を始めてみようと、まで…言われた。



「妹って、ワードがキャラ変しちゃうトリガーなのか~。優樹くんの過去に何があったんだろうね?」


 放課後、今日は僕が紫音の護衛担当のため、紫音と二人でもう一人の僕についての話をしていた。


「分かりませんが、鈴音ちゃんに触れられた後の記憶が無くて…、いつもなら、紫音さんや麻友ちゃんに触れるとその相手に力を与えて、特殊な力を強化するんですよね?でも、もう一人の僕は逆に相手の力を奪い取って、小鈴さんを普通の女の子に変えちゃったらしくって、お前が責任を取れって、今まで以上に迫って来るんです…。」


 僕は小鈴からの彼女にしろと言うアプローチが酷くなってきた事を話すと、


「うん…、弱体化、普通の女の子になると、体力面での能力低下が著しいから、小鈴と私がいつもビリ争いする羽目になっちゃったもんね…。まあ、基礎体力が元々、低い小鈴にも責任はあるし、責任の点では、無視しちゃえばいいよ。小鈴の力は真面目な妹の鈴音ちゃんに引き継がれた訳だから、神里家にとっては痛手を受けた訳じゃないし、ひ孫が出来そうな意味では寧ろ…桜子さんからすると、プラスじゃない?」


 紫音が言うには、僕はあの理事長にハメられたらしい…。だから、鈴音を妊娠させた事以外は、何も責任を取る必要が無い事を話してくれたのだが、


(その、中学生の鈴音ちゃんを妊娠させた事が問題なんだよ…。鈴音ちゃんは世界一好きな人の子供だから、産むと宣言されちゃうし…。)


 責任を取るって事は鈴音と結婚する事だと感じていた僕が今の恋人の麻友に別れようと話しても、


「本妻の私はあなたの血を受け継ぐ子供なら、受け入れます…。」


 と、何故か、許されてしまい、別れ話に発展しないし…。孫娘を妊娠させた事を理事長に謝罪し、責任を取って、鈴音に接すると言いに行くと、


「ダメよ、麻友とは別れさせないわ。鈴音には適当に相手を見繕うから、あなたは引き続き学校で子種を撒き散らしなさい…。その度に理事長の権限で、もみ消してあげるから…」


 理事長にはそんな風に言われて、三次、四次被害を助長してくる。


「でも、麻友って、私が優樹くんの子種を貰って良いかを聞くと、優樹さんの血筋に狐耳がある変な子を作ろうとしないでって、キレられたよ…。」


 他の女子なら、我慢するが、狐に取り憑かれた紫音だけは、僕との子供を作るのは絶対にダメだと言われたらしい…。


(主にだけ、やたらと厳しい従者って、なんなんだろう…。)


「麻友は義母の桜子さんの命令が絶対なの。だから、優樹くんとは何があっても別れないし、すでに相手が決まってる私の浮気は許さないの。だから…優樹くんが今、出来る最善の選択は、麻友を早く妊娠させる事だけよ。」


 紫音からは麻友との交際を発展させると良いとアドバイスしてきた。でも、そんな紫音も、


「お行儀の悪い方の優樹くんに襲われて妊娠させられたら、それはもう…事故だよね?私的にはそう言う事故が起こっても楽しいかも。今、優樹くんが豹変して、いきなり狐の私に交尾を迫って、それを知った親友の麻友に命を狙われるなんて…、スリリングな展開だわ。」


 紫音は相談に乗ってくれるイイ人だが、何故か、スリルを求める危険な子でもあった…。


(まあ…、あの麻友姉妹のご主人様がまともじゃないのは分かってたけど…。なかなか適当だよね。)


 そもそも、この狐耳の美少女と出会った事から、こんな事に巻き込まれたと思い、彼女に不快感を持って睨み付けようとしたが、狐耳をパタパタさせて尻尾をフリフリしながら上機嫌で歩く彼女を見ると…、


(すべてが可愛すぎるし、反則だよね。嫌いになれるわけ無いじゃないか…。)


 可愛い狐っ子美少女に癒されてしまう僕は、彼女から離れる選択肢を取れるはずは無かった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る