第25話 もう一人の自分

 神里 小鈴の家に来ていた僕は、僕を家へ呼んで来たはずの小鈴に放置されて、妹の鈴音の話し相手を務めていたが、その鈴音が僕に一目惚れしたらしく、話し掛ける度に彼女は喜んでくれる…謎の時間が過ぎていた。所が…、


「あれ…、眠ってた?」


 いつの間にか寝てしまって、何故か、姉妹のベッドの中で眠っていた。


「優樹さま…、ありがとうございました。私に優しくして下さって…。」


 隣には鈴音が裸で寝ていて、お礼を言って来られた。


(えっ…、どういうコト…。)


 慌てる僕に、


「優樹、あんたにそんな趣味があったとは知らなかったわ。同い年の私に鈴音の制服を着せて、お兄ちゃん呼ばわりさせるなんて…。」


 ベッドの側にいた小鈴は鈴音の中学生用の制服を着ていた。どういう状態かが、分からずに慌てて飛び起きると、


「やっと、正気に戻ってくれたのね…、まったく、人の家の、しかも妹のベッドで私たち姉妹を強姦するなんて、信じられないわ。お婆ちゃんの話が無かったら、アンタは警察行きよ?」


 小鈴は呆れながら、僕へ話をしてきたが、身に覚えの無い話だったため、オドオドしていると、裸の鈴音が、


「優樹さまが私を拐かして下さったあと、物足りないから、お姉ちゃんに私の制服を着させて、俺の妹なんだから、奉仕しろって言われた時はビックリしましたが、それはそれで…とても男らしくってステキでした。」


 鈴音は僕にベタ惚れしているらしく、喋りながら、姉へ「私たち、赤ちゃんが出来るかな?」と聞いていた。


「まあ、どんな性癖があったとしても、私が妊娠してたら、麻友との勝負は私が勝ちだから、二週間後、楽しみにしてなさい。今回、妊娠してなくても、お兄ちゃんって呼んで、またエッチをしてあげるから、いつでも、相手をしてあげる。」


 彼女はそう言うと、正気に戻ったならと言って、僕が汚したであろう制服を着たまま、「アンタのせいでベタベタだから、先にお風呂へ入るわ」と言い、部屋を出ていった。


(どうしよう…、全然、覚えていない。)


「あの、優樹さまはあとで私とお風呂に入りましょうね。」


 鈴音はそう言うと、裸のままで僕にしがみついて甘えて来たが、何が起きたかを理解出来ない僕は、彼女を振りほどく事も、押し倒そうともせずにベッドの上空を見上げる事だけしか…出来なかった。



「何かに取り憑かれていたから、覚えていない…ですって?」


 小鈴、鈴音、僕が交代交代でお風呂で体をキレイにしたあと、僕は小鈴にまったくの記憶が無い事を話した。すると、彼女は付いて来いと言って、祖母の部屋に案内をしてきた。そこには学校の理事長、神里 桜子がおり、無言で僕を観察していた。小鈴が「今からはここで話をするわ」と告げてきて、


「まっ、そんな所でしょうね。ヘタレのアンタじゃ、鈴音はもちろん…私に偉そうな態度でマウントを取るわけ無いものね。アンタの体の中には、背の低い年下に過度に興奮する変態野郎がいる…。


 麻友は背が高くて大人っぽいから、その変態野郎が出てくる事が無かったけど、鈴音に手を握られた途端に別人のアンタが前に出てきて、いつものアンタの意識を奪って、強姦したって、所ね。」


 僕の中には変な奴がいて、妹の鈴音が別人格の僕を呼び起こした事を話した小鈴は、鈴音の意識がなくなるまで、彼女を襲ったあと、近くで勉強していた姉の小鈴すら、力ずくで押さえ付けて、中学生の制服を着ろと命令して、強姦をしたらしい…。小鈴がもう一人の僕に従った理由は、


「アンタの体には怪物がいる。今のアンタが私や麻友たちに力を与える存在なら…、裏のアンタは私たちから力を奪う存在だった。久々に非力な普通の女の子へされちゃった…。」


 彼女はそう言って、少し前に帰って来た自分の祖母である理事長に僕の事を報告したあと、自分の力が妹の方へ移行したから、今後は家業を手伝えないと話して、僕を置いて、立ち去ってしまった。


「佐藤くん。小鈴と鈴音、二人の純潔を奪ったそうね…。やれば、出来る子じゃない。小鈴か鈴音に子供が出来たら、ご祝儀のプレゼントを上げないと…、何が良いかしら?グループ系列の会社の持ち株か、それとも…取締役の座か…。」


 孫娘を二人も強姦した僕を褒めたあと、なんだかスゴい物を譲渡すると言い出して来た。


(やらかしたはずなのに…褒めてきた?この人、僕を親族に迎え入れる気だ…。)


「あっ、謝罪は結構よ。君は…君の中のヤンチャな子はとても良い行いをしたの。それに、従順そうな君がヤンチャで言う事を聞いてくれ無さそうなもう一人の君の能力を使えるようになれば、一番ベストね。そこら辺の調整は麻友に任せようかしら…。」


 彼女は喜んでいそうで喜んでいない感じで話してくれたあと、引き続き、麻友の彼氏として、今度は麻友を妊娠させる事があなたの目標よと告げて、部屋を追い出されてしまった。


 部屋を追い出されてしまった僕は、いつの間にか帰ってしまった母さんを追いかける形で小鈴の家を出て行き、帰宅すると…


「お待ちしておりました、優樹さん。神里家でのご活躍はお聞き致しました…、お務めを果たせたようで、何よりです…。」


 とても嬉しくなさそうな声色で麻友が迎えてくれた。


(麻友さん、彼氏に公認浮気された惨めな彼女みたいになってる…。謝らないと…)


 僕は麻友さんを裏切った事を謝罪しようかと口を開くと、彼女は僕にキスする形で無理矢理に黙らせた。そして、


「私の事を思ってくれているのなら、これ以上の恥を私に与えないで下さい。あなたを振り向かせられない無能な私にあなたの妻としての再度のチャンスを与えて下さい…、よろしくお願いいたします…。」


 彼女は涙を流しそうになりながら、浮気した僕へ逆に謝罪をしてきた。


(僕の謝罪は献身的に尽くしてくれる彼女への侮辱に当たるのか…。これじゃ、悪い事をしたのは僕なのに、謝れないよ…。)


「麻友ちゃん…、もう一人の僕について、知りたい。それには君が必要なんだ。どうして、もう一人の僕が麻友ちゃんの前には現れないのかも気になるし、どうして、こんな不思議な事が起きるようになったのかも知りたい。最低な事をした僕がお願いするのも変だけど…、協力して欲しいんだ。お願いします…。」


 僕が何故、多重人格みたいになっているのかを知るために協力して欲しいと彼女へ告げると、


「チャンスを下さってありがとうございます、優樹さん…。私、頑張って、あなたの子供を必ず妊娠出来るように…頑張ります。」


 彼女はそう言いながら、僕を抱き締めてくれた。けど…、


(なんか…、違くない?その~、僕の子供を妊娠したら勝ちってルール…。)


 人の話を全然、聞いていない麻友に複雑な思いを抱きながらも、しれっと、彼女に浮気を許された僕がそこにはいた。

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