第24話 常に一番を目指す彼女
同級生の神里さんの家、つまり、ウチの理事長の家でもあるこの家はとても広くて、お金持ち感がスゴい。でも、そんな広い家の家事を取り仕切るのは、理事長の娘で小鈴の母親、神里 鈴花さんだった…。
「優樹くん、とても、お若いお母さんね。なのにとっても仲良しなのは羨ましいわ。ウチの小鈴ったら…、専業主婦の私を女としてのプライドがどうとか言って、外で仕事をしていないからって、全然、慕ってくれないもん。」
鈴花は専業主婦をしている事で、娘の小鈴が下に見てくるとぼやくと、
「それ、分かります~。ウチの優樹なんか…、同級生の母親とは、一緒に学校へ行きたくないってごねて、今朝も麻友ちゃんに相談してた所ですもん。10代の同い年の若い母親だからって、息子から舐められてるですよ、私。」
遅れて神里家にやって来たウチの母さんはどこの家にも反抗期の子供がいると大変だと言って、あったばかりの鈴花と意気投合していた。
(いや、ウチの母さんが普通に僕や小鈴さんの同い年の母親として、小鈴さんの母親に認識されてて、受け入れられてる…。)
訳ありの子供を持つ母親たちに年齢差は関係無いらしく、二人の井戸端会議が続いて、止まらないため、困りながら話を聞いていると、小鈴さんとほぼ、変わらない見た目の少女が家に帰って来た。
「あっ、鈴音、お帰り。今ね、小鈴の同級生のお友だちが来てるの。私が小鈴とケンカして、怒って部屋に帰っちゃったから、おもてなし中なのよ。」
母親の鈴花はそう言うと、「小鈴の二つ年下の妹、鈴音」と紹介してくれた。でも、その鈴音は僕と母さんにペコリと頭を下げただけで、慌てて、奥の部屋に駆け込んで行ってしまった。その態度に、
「ごめんなさい、ウチの鈴音は男性が苦手らしくって、人見知りで…、叔父に当たる、私の弟たちにも、あんな態度を取るのよ。男の子が苦手なのは分かるけど…、あれじゃ、お嫁に貰ってくれる人も出てこなくなりそうで心配だわ。」
鈴花は姉とは違う意味で心配だと言って、ウチの母さんにまた悩みを聞いて貰っていた。
(僕って、完全に放置されてるよね?)
僕を呼んだはずの小鈴は帰って来ないし、母さんは母親同士の会話で楽しんでいる。そんな放置されている僕に気付いた鈴花が、
「あっ、優樹くん。鈴音が帰って来たし、二人にアイスティーとお菓子を持っていってくれないかしら?二人は姉妹で仲良く同じ部屋にいるはずだから…お願いね。」
彼女は二人の井戸端会議を暇そうに聞く僕に気を使ってくれたのか、手作りっぽいアイスティーの入ったボトルとグラス、なんか高そうなクッキーを僕に渡して、二人の部屋を教えてくれたあと、「男ならビシッと乗り込みなさい」と告げて、背中を押してきた。嫌ですとは言えない僕は仕方なく、部屋の前まで行くと、
「お姉ちゃん、あのカッコいい人は誰なの?お姉ちゃんの彼氏じゃないの?」
僕をカッコいい?呼ばわりする鈴音が姉の小鈴に僕が何者かを聞いていた。
「鈴音…あなたの視力は悪いの?あのどこにでもいそうな平凡男の容姿のどこが良いのよ。まあ、あなたの理想のタイプではあるわよね。女慣れも女遊びもしなさそうな、真面目そうな男…。
でも、アイツは麻友と私の私生活を乱そうとしてくるダメ男よ。まあ、私も麻友もあの男の事ばかりを考えてしまって、数学赤点のダメな狐女に英語のテストで負けて、お婆ちゃんから、お説教を受けちゃったの。だから、アイツは女を惑わすダメ男なの。」
小鈴はドア越しに僕がいる事を知らずに、ダメ男呼ばわりしていた。
(英語で95%以上も正解する優等生の麻友ちゃんと小鈴さんは100点満点じゃない事で、理事長にかなり叱られたのか…。でも、平均点しか取れなかった僕は恥ずかしいよ…。)
良家のお嬢様や神里の養女は成績ナンバーワンの座を取れない時への否定の眼差しがスゴい事を知った僕は、高飛車な彼女にも悩みがあって、苦しんでいる事を知った。でも、
「アイツの子供を身籠れば、お婆ちゃんは私を認めてくれるはずだから、私が麻友から奪い取ったあとは、あの男は鈴音にあげるわ。付き合うなり、結婚相手にするなり、好きにしなさい。」
そう、姉が宣言をしたら、
「本当?お姉ちゃん、頑張ってね!優樹さまが、私の物になるのが楽しみ!」
鈴音は姉のおこぼれ彼氏ゲット発言を聞いて、ものスゴく、嬉しいそうな声で喜んでいるようだった…。
(うん…、実に歪んだ姉妹関係だね。女性陣に物として回されるその発言、今さらだけど…僕は聞かなかった事にしたいよ…。)
中学二年生の妹お嬢様、鈴音は僕の見た目が好き、同級生の姉お嬢様、小鈴は僕を子種程度にしか考えていない。麻友の本当の気持ちは…どうなんだろうと考えていた僕がドアの前から去ろうとした瞬間…、
「仲良し姉妹の話を盗み聞きとは、庶民のやる事は…下品ね。まあ、良いわ。それを持って来たんなら、ティータイムでゆっくりと今後の事を話し合いましょうか?」
小鈴にはバレていて、部屋の中でお茶にしようと言ってきた。逃げたら、あとが怖い僕は黙って部屋の中に入ると、鈴音は僕の顔を見るなり、恥ずかしそうにベッドにある布団に体をくるめていた。
(人見知りなのは本当なんだね。本心を僕に聞かれて、顔が真っ赤だよ…。)
何もかもを聞かれてしまった姉妹と聞いた僕が二人の部屋で沈黙していると、
「悪かったわ。今日のノルマをこなしてたから、アンタの存在を忘れてたの…。まあ、寛いでててよ。私は勉強してるからさ。」
彼女は何事も無かったように学習机に座り、勉強を始めてしまった。僕の小鈴へのイメージでは、勉強をそこまで頑張る感じがしなかったため、少し驚いていると、布団にくるまっていた妹の鈴音が僕の側にやって来て、
「お姉ちゃんは麻友ちゃんに負けて悔しかったんです。だから、優樹さまの事を麻友ちゃんから奪おうとしているみたいです。学校成績でも、女としても負けたく無い気持ち…は男性の優樹さまには、理解しにくいかもしれませんが、本気だと言う事は知っていて下さい…。
そして、私はお姉ちゃんのおこぼれを貰おうとしている…、優樹さまへの気持ちは本気なんです…。」
鈴音はそこまで僕に話すと、顔を真っ赤にして、布団の被って隠れてしまった。そんな妹に勉強をしていた姉は、
「鈴音は私や麻友みたいに優秀な能力を持っている訳じゃないし、平凡な自分への劣等感を持っていて、器用じゃないの。分かったら、平凡な人間同士で仲良く、そこでのんびりしていなさい。」
彼女はそこまで僕に話したあと、勉強に集中し始めて、僕や妹の事などを気にもしなくなった。
(女同士の世界って、複雑だよ…。それにさっきから、鈴音ちゃんの視線がイタイ…。)
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