第22話 急に増える友達

 時間の流れが普通と違う…変な共通点を持つ紫音に母さんが同級生に変換された謎を聞いていた。


「君のお母さんは麻友が一度、体に入り込んだ影響を受けて、体が麻友と同じ年齢になった。でも、麻友が出ていった瞬間に元々、佐藤くんのお母さんは私たちと一緒の年代だった事に改変された。実の息子と同い年、そんな辻褄が合わない事象なのに、世間の人間は誰も気付かない。もちろん、君のお母さんはまだ未成年の高校生なのに、同い年の君を産んで育てた記憶はあると言う、通常ではあり得ない事態を世間は普通に思っているって事だ。」


 彼女は僕に今回、起こった事を噛み砕いて、説明してくれた。あり得ない話だが、生まれたばかりの母さんが僕を産んだみたいな状態で世間は認識して、まだ18歳未満のため、婚姻関係は無くなり、事実婚で母さんと父さんは一緒に過ごし続けているって事に世間の流れは変わった。


(想像するだけで、頭が痛くなって来たよ…。)


 そんな同級生の実の母親が待つ教室へ僕たちが向かうと、母さんは麻友と他の同級生の女子たちと楽しく会話をしていて、僕は話した事もない同級生の男子グループに呼ばれた。


「佐藤のお母さんって、メチャクチャ可愛いよな。まだ、結婚はしていないって事は、ワンチャン有り?他の女子よりも母性があって、良い感じなんだよな~。」


 彼らは僕の他の女子よりも群を抜いて大人っぽい母さんがタイプらしく、息子の僕を自分たちのグループへ引き込む事で、母さんと話すきっかけを作ろうとしているようだった。


(アレだ。前に紫音さんと麻友ちゃんが話してた、外堀を埋めて相手に近付くっていう、恋愛テクニックだ。この人たちは昨日まで、上本先生が良いって言ってたのに…。


 この年代の男子は僕も含めてだけど、しっかり者とか、大人っぽい女性の方が好きになりやすいから…、実質、最年長のベテラン女子のウチの母さんに上本先生は人気を持って行かれたって事だよね?)


 上本先生は変だけど、嫉妬とかはしなさそうなので、母さんが疎まれる事は無いはず。それに…、


「上本先生は紫音さんをイジメるのを生き甲斐にしてそうだもん…。」


 僕はクラスの男子からの変な友達宣言を避けるように教室へ抜け出した先で、男子からの人気を失った上本先生の事を独り言のように呟くと、


「うむ、その通りだぞ、悩み多き青年。あの狐をモルモットのように扱うのは実に楽しいからな。」


 いつの間にか、上本先生が地獄耳のように側に立っていて、紫音を自分の実験動物だと言っており、私を理解しているお前は見所があると言って褒められてしまっていた。


(この人…、僕の心をいつも読んでくるから、油断出来ない…。)


「分かるぞ、青年、その気持ち…。実の母親が近くにいると、男子の同級生に母親を奪われないか、ヒヤヒヤしている…そんな顔だな。実に興味深い生き物になったな君は…、その私の好奇心そそる行動を取る君には、もっと面白い物を見せてやるからな。楽しみにしているといい。」


 上本先生は僕の隣で散々、僕の心を読んで楽しんだあと、職員室のある方向へ楽しそうに歩いて行った。


(あの人は変態教師だ…。)


 彼女は僕に興味を持ったらしく、何かを見せてくれるらしいが、そもそもガチの理数系人間が社会科の教師になったのかが理解出来ない。やはり、ギャルの麻友が言っていた通りで、童顔で胸の大きい社会科の女教師と言う、ミステリアスな設定を自分の売りにしているのか?と思うくらいに関係ない分野で働く教師だった。


「あっ、優樹。どこに行っていたの?授業が始まるよ?」


 普通に僕の隣の席にいる母さんは教科書を出せとか、スマホはカバンの中にしまえとか言って、世話を妬いてくる。それを見ていたギャル麻友は面白がっていて、隣の紫音相手に母さんの真似をして、いつものウザ絡みを始めた。


(姉の麻友ちゃんは紫音さんに対して、世話を妬く母親っぽいけど、妹は長年連れ添っている親友感覚みたい…。ギャルの麻友から授業を受ける妨害をされても、彼女は嫌な顔をしないし、彼女の苦手科目の数学に至っては、教えを請う感じで麻友へ質問をしている。)


 同級生の母さんは難がある生徒の世話を妬くのが好きらしく、お嬢さまの神里 小鈴がずっと一人でいるのを見て、麻友の所へ連れて行き、無理矢理、仲を取り持って、母さんは満足していた。


「あんたの母親はお気楽な人間ね。女同士をまるで分かってないのよ。」


 小鈴が僕の所へ来て、同級生だから、仲良くしろと言ってくる母さんに呆れていた。僕も彼女がなんでいつも一人で行動をしているのか疑問に思って、どうしてなのかを聞くと、


「あんな祖母を持つ、私に仲良くしてくれる女がいるわけ無いでしょ?いつも強引でなんでも勝手に決めちゃうし、自分に逆らう人間は社会的に抹殺しようとするし、子供の頃の私が何度、知らない男たちに拉致されたか分かる?あの子には近付いたら危ないからダメって、何度、同級生の親に言われたか分かる?だから、麻友にあんたへは余計な情報を与えるなって伝えてるの。」


 彼女は自分に関わると命がいくつあっても足りないと言って、みんなを遠ざけていた。


「でも、紫音さんと麻友ちゃんは君の味方だよ?少なくとも二人は君の事を嫌いじゃないよ?」


 紫音と麻友の二人は君の事を分かってくれると言うと、


「あんたもお気楽な母親と一緒ね。叔父様に近付く、あの狐だけは絶対に認めない。それに麻友のお陰で私は神里の家での立場を失った。お婆ちゃんからも養女に負ける愚かな孫として罵られた。」


 彼女はそう言って、紫音と麻友の二人とは仲良く出来ないと告げて、


「どうしてもって言うなら、あんたとは仲良くしても良いわよ。麻友からあなたを奪えば、私は優越感に浸れるし。」


 彼女は上から目線で僕となら、仲良くしても良いと言ってきた。


「いや、僕は仲良くならなくてもいいかな~。」


 紫音以外の女子と仲良くすると、麻友が怖いと感じて、やんわりとお断りすると、彼女は母さんの所へ行って、息子が私とは仲良くする気はない事を告げ口すると、


「優樹!小鈴ちゃんに面と向かって、なんて事を言うの!この子は将来に麻友ちゃんと結婚したら、親戚になっちゃうのに、こんな可愛い女の子に向かって、仲良くしたくないって…何様のつもりなの?」


 母さんにメチャクチャ怒られた僕は結局、


「今日の夕方は親子で神里さんのご実家へ謝罪に向かうわ。女の子に罵声を浴びせて、傷付かせた事…反省しなさい!」


 小鈴の実家に謝罪する事となってしまった。怒る母さんの後ろで、


「バーカ、女を甘く見るからよ」小鈴はそんな心の声を僕へ聞かせるように、僕と母さんをハメて、楽しそうに笑っていた。

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