第20話 母親との年の差が無い場合…

 僕はすでに駆け引き上手の麻友と言う女性の手中に収まり、彼女のすべてが好きになってしまっていた。ウチの母親も彼女に染まり、魂が塗り替えられた結果…、


「優樹さんのお義母様とは、姉妹のように仲良く出来そうです。まあ…お母様となら、ベタベタされても、親子のスキンシップで浮気には含まれませんし、構わないですよ。」


 麻友は母親と引っ付いていても、嫉妬したり、嫌がったりしないと話してくれた。


(同一人物じゃないのかな…?)


「ただ…、元のお義母様に戻っていただきますね。似た性格の母と恋人が二人いると、優樹さんに私が捨てられかねませんから…。」


 麻友はそう言って、母さんはハグすると、彼女の髪の色が金髪から、いつもの黒髪に戻って行った。


「麻友さん、許してくれてありがとう。寂しい思いをさせてごめんなさい。」


 僕は麻友にそう告げると、


「はい…、これからは私だけを愛してくださいね。」


 彼女は優しく微笑んでくれていた。


「良いわね。若いって…。今日もガンバってみようかしら?」


 母さんは僕と麻友の仲が深まった姿を見て、自分も頑張ると言い出した。いい年をして何を言っているんだと思っていたが、母さんの姿が若いままのため、


「あの~、麻友さん。母さんが年齢が若いままの気がするんですけど…。」


 若返らせた張本人に尋ねてみたら、


「あら、優樹さん。何を言っているんですか?お義母様は私たちと同級生で一緒の高校に通っているのに、何を今さら、当たり前の常識的な事を言ってらっしゃるのですか?変な優樹さん…。」


 麻友の中では、ウチの母さんは元々、同い年でしょ?と言って、当たり前の事を大袈裟に言っているのは何故なのかを聞かれてしまった。


(うん?僕が変な事を言ってる事になってるぞ?)


「優樹、確かにお母さんはまだ今年で16歳だし、お父さんと書類上は婚姻関係じゃ無いわ。でも、お母さんが生まれた時から、優樹はお母さんの子供だったでしょ?それを忘れるなんて…、酷いわ。お母さんが若いからって、実の息子に親子関係を否定されるなんて…。」


 16歳の母さんはそう言って、泣き崩れてしまった。それを見ていた麻友は、


「優樹さん…。私と言う恋人が出来たからって、実の母親に産んで育ててもらった事を全部忘れて、否定するなんて、親不孝な行動は良くないと思います。お義母様に謝ってください。」


 麻友は、僕の発言で母さんが傷付いていると言って、怒り始めてしまった。こうなると、さすがにこのまま変だと言うのはこっちが間違いである雰囲気になっていたため、母さんに謝ると、


「優樹はお母さんが世界一好き?」という質問が出てきたため、


「ごめん、今は麻友さんが一番好きなんだ…。」


 麻友が一番好きだと答えると、


「そうよね、麻友ちゃんがいれば、お母さんは要らないわよね。」


 回答に困る発言をされてしまった。それを見ていた麻友さんは僕を耳元で、


「こう言う場合は、嘘でも母親が一番好きだと答える方がベストです。」


 とアドバイスをされたため、「やっぱり、母さんが一番好きだ」と言い直すと、母さんは喜んでくれたが、


「出来れば、恋人の私とすれば、やっぱり麻友が好きと言って欲しかったです…。」


 アドバイスをしてきた麻友の方がへこんでしまった…。


(これは…、どっちが正解だったの?)


 言っている事をそのまま言った事で、彼女の女心が複雑過ぎて、それ以上、最良の言葉の選択が何が分からずに困り果ててしまった。



「優樹…、父さんはお前の同級生に手を出したのでは無いぞ。年齢差を超えた愛がそこにあったので、決して…ロリコンでは無いぞ。」


 夕食を食べながら、16歳の母さんとイチャつく父さんは何故か、僕にロリコンでは無いと弁明していた。


(誰も、そんな事を言っていないし…。)


「優樹は母さんが幼いから、美人で大人っぽい麻友ちゃんとお付き合いを始めたのね…。反抗期だから、当て付けのように背が高くて、頭の良い麻友ちゃんを選んだのね…。」


 若い母さんは精神も幼くなったため、常に発言がベビーな状態だ。


(麻友さんに関わってからは、静かだった我が家が一変しちゃったよ…。)


 僕にはもったいないくらいの美人の恋人が出来たのはとても嬉しい事だったのだが、少し現実離れをし過ぎていて、付いて行けない状態だった。そんな僕は夜になり、今夜も麻友が求めてくるのかと思っていたが、


「私が調べたのですが、どうやら…優樹さんは女性に触れられると、性的な関係を拒む体質のようなのです。当初は心因的なストレスが原因かと思われましたが、その不思議な体質のせいで、過去に大切な女性へ何かをしてしまった事が考えられます。


 優樹さんに触れられた女性は例外無く、力を得て、元気になります。紫音様の時は、失われた内なる力を復活させたり、妹の時は私抜きでも、身体能力を飛躍的に高めたりしていました。過去に何が起こったのは確実なので、優樹さんが知りたいと仰るのなら、私はあなたに寄り添って、忘れ去ったあなたの過去を調べて行こうと考えています。どうでしょうか?」


 彼女は真剣な眼差しで僕の体について、今、どんな状態なのかを話してくれた。


「麻友さん…。将来、僕は君とそう言う関係になりたいと願っているから、原因を探ろうと思うし、知りたい…。だから、僕に何があったのかを一緒に見つけてくれないかな?」


 彼女にそう告げて、協力して欲しいと伝えると、


「はい!嬉しいです!では、今日からは本番に向けての妊活トレーニングを致しましょう。」


 いつもの過激な彼女に戻り、僕をベッドに押し倒してきた。


(麻友ちゃんは相変わらずの力強さだね。妹が姉より弱いって言うのは本当みたい…。)


 昼間に大ゲンカしていた妹の麻友と小鈴の二人は互角で争っていたが、姉の麻友は次元が違う強さなのだと、押し倒された僕が、まるでか弱い女性みたいにまったく抵抗できないので、その強さを再認識していた。


「今の私は大好きな彼を逆レイプしている気持ちです…。本当に可愛いてすね、優樹さん…。」


 その日も力強い彼女にされるがままになっていた僕だったが、朝になると必ず…、


「おはよ~う、優。アタシのおはようのキスはどないな気分?」


 綺麗な金色の髪を靡かせたギャルの妹がおはようと挨拶していてくる。


「おはよう、麻友。お姉ちゃんは寝ちゃったのかな?」


 朝は決まって、妹に体を譲っていた。


「う~ん、お姉はよう分からん時にアタシへ交代するからな。女は時間がいるし、そう言う朝の準備がメンドイだけかも…。」


 そう言って、妹は校則に引っ掛からない程度ギリギリのギャルメイクをしていた。


「確かに麻友の方が元気だし、眠そうな紫音さんを起こす担当なのかもね。」


 僕がそう告げていると、


「アタシは紫音ちゃんを可愛いがるけど、お姉みたいに、主の尻尾を引きちぎったりせえへんわ。」


 昨日の姉の行動に引いているようだった。


「ハハハ…。」


 僕は妹のぼやきに反応すると、怖い姉にも聞かれるため、笑うだけでコメントはしなかった。

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