第15話 彼女にフラれた夜と告白された夜

「ねえ、麻友…、母さんに何が起こって、見た目が若くなったの?」

 

 部屋に戻り、僕の枕を抱き締めて匂いを嗅いでいる麻友に何をしたのかを聞くと、

 

「ん?優は紫音ちゃんの話をどこまで信じとる?世の中には不思議な力があるって、言うとったやろ?」

 

 彼女は紫音の話す事を信じているかを聞かれた。信じると話すと、

 

「ん、なら話したる。アタシたちは優を伴侶に決めたから、優の遺伝情報を手に入れて、自分たちの体に適合するようにしたんやけどな。だから、優に近い優のママにも適合出来る体になってん。

 

 ほんでな、優のママってな、ホンマは子供をもっと、欲しがっててん。でもな、優が子供の頃に卵巣の病気になってな、妊娠しにくい体質に変わってもうて、諦めてしまったんをアタシたちは優のママに聞かされたんや。」

 

 麻友は僕の知らない母さんの過去を話し始めた。

 

「女にとって子供を産めへん体になるんてな…、男が考えてるよりも深刻な事なんやで?でもな、優のパパがずっと、不妊に悩むママを支えたからな、今の明るい優のママが存在してんねん。だから、優のママには自分の子供が欲しくないとかを絶対に、安易に言うたらあかんで?分かったな。」

 

 母さんの過去を聞いた以上は、子供に関する発言は慎重にしないとダメだと言われた僕は黙って頷くと、

 

「ほんでな、お姉もやたら、子供を欲しがるやろ?でも、優は何かと理由を付けて断るやん。その傷と優のママの心の傷は結構、似とんねん。だから、優のママの願いをお姉は叶えてあげてん。自分の魂を優のママに溶け込ます形でな。これをやったら、優のママの体は一時的にお姉の年齢、つまり、16歳の時の体まで遡る事が出来んねん。まあ、出産までの期間中だけやけどな。」

 

 麻友がそう説明してくれたので、

 

「つまり、今、麻友の体には姉の麻友ちゃんはいないの?そして、母さんの体で出産を終えたら、また、麻友ちゃんは自分の体に戻るって事?」

 

 何となく理解した僕が麻友にそう話すと、

 

「そやで、お姉が戻りたくないって言うたら、お姉は優のママの体でずっと過ごすかもしれんけどな。つまりな、お姉は優が子供を作るのを拒み続けるから、優の事が嫌いになり始めててん。

 

 今回も風呂でアタシがお姉を押し退けて、勝手に出てきた思てるやろ?それは、ちゃうで、元々、アタシにこの体を好き勝手する権利は無いねん。風呂場であんたの上っ面の誉め言葉にお姉は呆れて、イラついて、自分からアタシと交替を促してきてん。」

 

 僕はこの時、初めて…麻友から名前を呼ばれずにあんたと呼ばれたあと、

 

「ここまで言われたら、もう、気い付いたやろ?あんたはお姉に見限られてフラれてん。もっと、言うたろか?お姉はあんたよりも、ママの体に魂を移動する事で、パパの嫁になる事を選んでん。ちょっと、付いて来い!」

 

 僕は麻友に無理矢理、連れて行かれると両親の部屋の前に立って、

 

「あなた…愛してる…。大好き。」

 

 姉の麻友の魂を受け入れて若返った母さんが父さんを押し倒して、性的な行為を始めていて、二人は愛し合っていた。両親のそんな姿を見ていられない僕は逃げるように部屋へ戻って、ベッドに飛び込むとすぐに麻友が戻って来て、

 

「逃げたって、失ったもんは帰ってこうへんで…。真面目で頑張り屋で優の事が大好きな麻友お姉ちゃんはもう、おらへんねん。」

 

 そう話して来た、彼女もどこか悲しそうな顔をしていた。

 

(二度と姉に会えないのは君もおんなじ何だよね?それは悲しいよね…。)

 

 妹の立場からすれば、麻友の体を押し付けられた形になるため、これから、彼女が本物の麻友となる。それを知った僕は彼女に、

 

「僕が嫌なら、別れてもいいよ?無理に僕の彼女でいる必要は無いし…。」

 

 嫌ならとギャルの麻友に語りかけると、

 

「え?なんで?アタシは優が世界一好きやで?これからは制限なく優とイチャ付けるし、こんなに嬉しい事はないやん。」

 

 彼女はそう言って、ベッドへ飛び込んできて、ベタベタ甘えて来た。

 

(そう言えば、さっきも僕の枕の匂いを嗅いでたし、こっちの麻友はまだ、僕の事が好きなのかな…。)

 

「優もあんな重過ぎる、お姉よりもアタシの方が好きやろ?あ~、明日から、うるさいお姉もおらんのやったら、紫音ちゃんを弄りたい放題やし、ホンマに楽しみやわ~。その前に…。今日は寝かせへんで!」

 

 その夜、すべての主導権を得たギャルの彼女は僕を激しく攻め立てて、朝まで寝かしてくれなかったため、次の日は普通に遅刻をしそうだった。しかし、そんな事よりも、



「母さん!それは麻友の制服だよ!なんで、着ているの!」


 父さんが家を出たあと、若返りした母さんは勢いを余って、僕の部屋に来て、麻友の制服を着ていた。


「だって~、麻友ちゃんが今日は学校に行きたくないから、代わりに行ってきてって言うんだもん。」


 ベッドから出てこない麻友は学校をサボると言っていて、若返った16歳の頃の母さんに代わりに行ってと伝えた結果…、ウチの制服を着た母さんが仕上がっていた。


「でも、似合うでしょ?麻友ちゃんの代わりって事は、優樹の彼女代理…。優樹…今からこの姿でお母さんと、しよっか?お父さんったら、昨日はたった三回で、疲れて寝ちゃったのよ?女を満足させずに寝ちゃうなんて…信じらんない!」


 麻友の魂の影響を受けた母さんは16歳の体に若返り、父さんとの夜を楽しんだが、父さんは50歳手前のおじさんのままなので、三回目で疲れて寝てしまったらしい。


「母さん、若くなったからって、欲求不満にならないで欲しいんだけど…。それから、麻友の代わりに学校に来るのは絶対に止めてね?見た目は16歳だけど…、体型が違う時点で偽者ってバレちゃうから。」


 僕は若い時の母さんがこんなにアグレッシブな人間だとは思わなかった。


(麻友ちゃんの魂は母さんである事を受け入れてるから、自分が麻友だったって事は覚えていないらしい…。ただ…)


「学校には若くて活きの良い男性がたくさんいるわよね~。でも、一番好きなのは…。」


 母さんはそう言うと僕に抱き付いてきて、


「お父さんがダメなら、優樹との子供が欲しいな~。」


 子供が欲しいと体をくっ付けて来た。


(これじゃあ、昨日までと一緒だよね?求められる人間が若い母さんに変わっただけだよ…。)


「僕は母さんよりも麻友の方が好きなので、ごめんなさい。」


 さすがに若返ったとはいえ、母親は無理だと話すと、


「そうよね…、優樹はお母さんなんかより、麻友ちゃんの方が良いよね…。」


 母さんは姉の麻友と同じように病んだ発言をしたあと、残念そうな顔をしながら、若すぎて似合わないスーツを着た母さんは仕事へ行ってくれた。そして、サボる宣言をした麻友に目が覚めたら、授業に来なよと告げて、今日は一人で学校へ行くことにした。

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