第14話 家族はすでに彼女の手中

 補習をサボろうとした狐っ子が魔女に拐われるのを見送った僕がまっすぐ家に帰ると麻友は家をピカピカに掃除してくれていた。わりと早く家へ帰って来た僕に、

 

「お帰りなさい、優樹さん。お風呂を沸かしていますので、一緒に入りましょう。」

 

 相変わらず、積極的に迫ってくるが、一人で入りますと断ると

 

「私は妻として…、どこが至らないでしょうか?」

 

 すぐに病んでしまうので、彼女を慰める。そこへお母さんが帰って来て、麻友はお風呂を一緒に入る問題について、義母に聞いていた。

 

「優樹…、同居する彼女から誘ってるのに断るのはダメよ?お母さんも新婚の時はお父さんと入ったりしてたし、夫婦なら、普通の行動なの、分かった?」

 

 母親の説得の元で、僕は麻友とお風呂に入る事となったのだが…、

 

「優樹さん…、紫音様に触れましたね?優樹さんの優樹さんが元気ありませんよ?」

 

 僕が麻友の裸を見ても、性的な興奮をしなかったため、

 

「あっ、そう言えば、上本先生が紫音さんを捕まえに来た時、彼女にしがみつかれたような…。」

 

 さっきの事を思い返すと、麻友が裸のまま僕の前に立って、

 

「紫音様とあの女はまだ…学校ですかね?」

 

 静かに怒り始めて、居場所を聞いて来た。

 

「さあ~、上本先生が自宅で狐を飼うとか行ってたし…。」

 

 僕はどこに連れて帰ったまでは分からないと答えながら、さりげなく離れるために浴槽へ入ると、

 

「あの女の家か…、襲撃するには少し手間ですね。SNSで顔を晒して、懸賞金でも、掛けましょうか? 」

 

 麻友は普通に浴槽にいる僕の隣に入りながら、上本先生と紫音の殺害計画案を考え始めていた。

 

「待って、麻友ちゃん。紫音さんや上本先生は悪くなくて、無意識で僕に触れただけで、ほら、今日は仲良くお風呂に入ってるんだから…。許してあげようよ。」

 

 恋人同士でお風呂に入っている変な状態のまま、彼女を説得していると、

 

「私のどこが好きですか?」

 

 隣にいる麻友が甘えながら聞いて来た。

 

「スゴくがんばり屋で真面目だし、背もモデルみたいに高めでカッコいいのに中身が可愛い所かな…、あと、その綺麗な黒い髪もステキだと思う。」

 

 僕が麻友の好きな所をたくさん挙げていると、彼女の髪の色が変わって、

 

「え~、アタシは嫌いなん?お姉の代わりにいつも、あの怖~い女教師の聞きたくもない授業を受けて、頑張ってるアタシは?」

 

 姉の黒髪を褒めた事が癪に触ったのか、金髪の妹が突然、出てきて、僕に詰め寄ってくる。

 

「麻友も好きだよ、いつも明るいし、ふざけているようで、お姉さん思いの優しい所はステキだよ。」

 

 こうして、妹のフォローをすると、愛が重めの姉も納得してくれるはずだ。

 

 一つの体を共有する姉妹について、前に紫音から聞いた事があって、妹を死なせたくない姉の麻友が自分の体に妹の魂を取り込んで、今のような特殊な体質へと変わった。つまり、本来は黒髪の姉の麻友だけが存在しているため、妹は姉の体にうまく適応出来ないから、疲れてすぐに眠ってしまうと紫音が話してくれていた。

 

(紫音さんはなんで、そんな事まで…知っているんだろうか?)

 

 麻友の事はなんでも知っている紫音には、何かの秘密があると考えていると、

 

「あ~、アタシの裸を前にして、アタシたち以外の女の事を考えてる~。お姉が怒っちゃうよ?」

 

 裸のままで密着してくる彼女は、

 

「しゃないなー、今日の晩はアタシがサービスして、他の女の事を忘れさせたるわ。」

 

 彼女は綺麗な金髪の髪を靡かせて、お風呂を上がろうとする僕に甘える感じで抱き付いたあと、押し倒される形で二人とも裸のままで脱衣所に出ると、母さんが洗濯物を回収するフリをして、僕たちの話を盗み聞きしに来ていた。

 

「二人とも、準備万端ね…。でも、ご飯は食べなさい。お腹が空くとヤれる回数が減っちゃうわよ?」

 

 盗み聞きの母親はすでに麻友の手の内に入っているようだった。


「優のママもアタシと一緒に妊娠しよ~な~。優のママはパパさんの子供をアタシは優の子供を産んだら、孫と自分の子供が同級生で仲良く育つんやで?」


 いつの間にか、仲良しになっている母さんに麻友が話すと、


「無理よ、私はもう40代半ばだし、パパとは長いことしていないもん。」


 年齢を理由に無理だと話した母さんに、


「アタシたちの力を使えば可能だよ?ちょっとそこに立っていてね。」


 そう言って、麻友が母さんにハグし始めたすると、母さんの髪の艶が良くなり始めて、見た目も少し若々しくなっていった。何を見せられたのかが分からない僕に、


「私が優樹さんのお母さんになれるとは思いませんでした…。母と子で子供を作るのも良いかもしれません。」


 若くなった母さんは麻友みたいなしゃべり方になり始めて、


「お姉、ダメだよ?今のお姉の旦那さんは優のパパでしょ?」


 ギャルの麻友が母さんをお姉と呼んでいると、


「それはそうでした…。麻友ちゃん、姉と呼ばれるのは嬉しいけど、私はあなたの義理のお母さんよ。」


 母さんは麻友に叱ると、


「ごめんなさ~い、優のママ。」


 二人はいつも通りの会話に戻り、夕食を準備し始めた。


(何が起こったんだろ?母さんが若くなった?)


 自分の母親が若返りをした事にも驚いたが、しゃべり方がいつもの母さんに戻ってしまったため、食事を取りながらも若い母さんを観察していると、

 

「優樹、どうしたの?お母さんの顔に何か付いてるの?」

 

 若い母さんに指摘されて、ドキッとしてしまうと、

 

「優の彼女はアタシだよ?優のママがいくら若いからって、アタシを見てよ。」

 

 母親ばかり見ていた僕に麻友が自分も見ろと不機嫌な感じで言ってきたので、麻友と二人きりになってから、詳しい話を聞く事にした。その後、父さんが帰って来て、若くなった母さんを見たのだが、


「なんだ、今日は何かご機嫌だな…。良い事でもあったのか?」


 父さんは若い母さんを見ても、何も感じていない。ご機嫌な母さんを見て、良い事があったのかを聞いてはいるが…。


「あなた…今日は優樹たちみたいに楽しまない?」


 母さんが夜の事を言っていて、誘っていると、


「優樹の前で…そんな事を言うのはアレだが、本人たちも毎日楽しんでるのを見たら…我慢が出来なくなるのも、無理はないな。やるのは、麻友ちゃんたちが部屋に戻ってからだぞ。」


 父さんも若い母さんを見て、我慢が出来ないのか、僕らが部屋に戻ってからなら良いと言ってしまっていた。


(ウチの家はすっかり、麻友のペースに流されてしまっているよね…。)

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