第10話 回復の背中の謎

 この一家は全員の血の繋がりがない不思議な家族で同じ仕事をしていた…。白河社長の義理の娘の義理の娘が狐っ子美少女の紫音で紫音の義理の父親は四日前に出会ったばかりの男性。でも…、


「ほ~、佐藤くんには変な力が備わっとるんか~。だから、力を使い果たした紫音が朝まで寝んでもかまへんようになるんやな。」


 紫音をおんぶして家に送り届けるとその頃には彼女は目を覚ましていて、僕は何故か、彼女をおんぶしたまま、白河社長の所に来ていた。


「優樹くんの背中は、私専用の回復の背中なんです。こうやって運んでもらえてるうちに私は元気になって行くんです。」


 紫音は僕の事を回復の背中と呼んで、目を覚ましたのに、なかなか降りようとしなかった。


「あの~、紫音さん。そろそろ帰らないと、親と…」


 僕は帰りたかった、何故なら…。


「優樹さん…、これはいったいどういう状況なのかを説明して頂けますか?」


 愛が重い彼女の麻友が待っているからだ。


「あっ、麻友。優樹くんを待てなくて迎えに来たの?私は仕事で力を使うと意識を失うの、だから、優樹くんの体に触れて回復してるのよ。」


 彼女が麻友に説明をしようとしていると、


「なるほど…、だから、昨日に優樹さんは…、大切な物まで元気が無くなってしまわれたんですね…。」


 彼女は何かに納得して、僕の背中にいる紫音を僕から引き離して、下ろしたあと、


「紫音様は確かに我が主ですが、これだけは許さざれぬ行為です。」


 麻友が紫音のお尻に思いっきり蹴りを入れた。一撃で崩れ去った紫音に、


「さあ、紫音様…、私の優樹さんから、愛を奪った罰、受けてもらいましょうか…。」


 完全にキレた麻友が倒れ込む紫音に他にも何か危害を与えようとしたため、僕は慌てて彼女の手を取って、


「麻友さんダメだよ、紫音さんが死んじゃうよ!」


 今の彼女には僕の声も届かないらしく、困り果てた僕は麻友に抱き付いて止めると、麻友の髪の色が金髪になって、妹の方が出てきた。


「あ~、優…マジ、助かった。このままお姉に任せたら、紫音ちゃんが殺される所やったしな。」


 ギャル妹の麻友は僕にお礼を言ったあと、紫音のお尻を触って、


「アハハ、お姉!紫音ちゃんにタイキックはやり過ぎやで、普段よりもケツ大きなって、パンパンやん。」


 ギャルの麻友は僕の右手を掴んで、無理矢理、紫音のお尻を触らせてきた。


「何をしてんの!麻友さん!」


 麻友の手を振りほどこうとしたが、力が強過ぎて全然、動かないうちに麻友が本気で蹴りを入れて腫れた紫音のお尻が僕の回復の力?的なモノで元に戻った。


「これで元通りやね、ほな、優、帰ろか。紫音ちゃん、お姉がマジ蹴りして、スマンかったわ。」


 用は済んだから帰ろうとギャルの麻友が言うので、僕も倒れてグッタリしている紫音にお詫びしたあと、彼女に付いて行き、そのまま帰宅する事にした。


「ねえ、麻友さん、どうしてお姉さんの麻友さんはあんなに怒ったのかな?」


 帰り道に妹の麻友に姉がキレた理由を尋ねると、


「あ~、さん付けを止めてくれへん?アタシは優の嫁になるんやろ?偉そうに麻友とか呼び捨てしたり、麻友ちゃんとか、可愛く呼んだりあるやん。お姉もさん付けで呼ばれて、距離を感じ取るんやさかい、可愛くちゃん付けで呼んだれや、分かったか?あっ、アタシは今度からは呼び捨てにしてな?」


 妹の麻友は呼び名に距離を感じるから、そこから直せと言われた。


「じゃあ…、麻友。どうして、お姉さんはあんなにキレたの?」


 呼び捨てにしてもう一度、尋ねると、


「うん、それやね、呼び捨てはエエもんや。なあ、優は朝起きたら、アタシがおったんか、理由は分からへんか?」


 彼女は朝の出来事について聞いてきたので、首を傾げると、


「実はな、お姉が隣で寝てる優のアレを元気にさせようとしてたんやけど、手で触ったり、胸で挟んだり、慣れへん手付きで、がんばっとってん。でもな、全然、反応が無かったし、お姉は女として、魅力が無い自分にめっちゃショックを受けてん。」


 ギャルの妹は姉が寝ている僕にしていた事を全部バラして来たが、


(麻友さんはアッサリと諦めたんじゃなくて、寝ている僕を襲おうとしてたって事?)


 体験した事が無い行為を寝ている間にずっとされていた事に恥ずかしくて赤面してた僕に、


「ほんで、お姉はアタシに代わりよったんやけど、アタシは経験が豊富やから、原因はお姉じゃなくて、優にあるのがすぐに分かってん。自分…お姉の下着姿を見ても、興奮より恥ずかしい気持ちが勝ってたやろ?ほんで、今日に紫音ちゃんをおんぶしてる優を見てな、確信してん。紫音ちゃんに優が触れてエネルギーを奪うとな、心が同期して、優はその人間になったみたいな気持ちになんねん。


 優はおんぶしてる紫音ちゃんを同性の友達みたいな感覚でおぶってたやろ?その影響で昨日も隣にお姉が下着姿で寝てんのに異性と認識しいひんと、素直に安眠出来たやろ?」


 ギャルの麻友は昨日にいつも以上によく眠れた理由を話してくれた。


(ああ、だから、麻友ちゃんは紫音さんに対して、あんなに怒ったのか…。)


 大切な主に暴力を振るった麻友の謎は、夜のエッチな行為を紫音に邪魔された事が発覚したからだった。


「あっ、でも、姉の麻友ちゃんは激怒したのに、妹の麻友は止めたのは何故なの?君も僕の事が好きなんだよね?」


 僕はギャルの麻友が暴走した姉を止めた理由を聞くと、


「んなもん、決まっとるやん。お姉があのまま、紫音ちゃんをやってもうたら、アタシもお姉も義理のオカンにどやされるやん。まあ、そんときはアタシらは愛の逃避行をするだけや。おもろそうやろ?」


 彼女たち…姉は愛が重過ぎる分、ギャルの妹はかなり軽い。そう言う心のバランスを取る事で、この姉妹は上手くいっている事が分かり、


「僕は麻友ちゃんもステキな子だと思ってるけど、麻友も姉思いの良い子だと思うよ。ありがとう、色々と教えてくれて。」


 僕は妹の麻友にお礼を言うと、


「アタシも優が好きやで。結婚したら、お姉ばっかりじゃなくて、アタシも相手をしてな?」


 そう告げたあと、彼女は僕に抱き付いてベタベタと甘えて来たが、さっき言っていたとおり、恥ずかしくはあるけど、男性としての興奮をする事はなかった。


「優樹、ちょっと、座りなさい…。」


 自分の家に帰ると、母さんが何故か怒っていた。


「どうしたの?母さん。」


 理由を聞くと、


「どうも、こうも無いわよ!このろくでなし!麻友ちゃんみたいな可愛い彼女がいるのに、同じ顔の妹まで、部屋に連れ込むのよ!姉妹の両方に手を出すなんて…最低な男になるなんて、お母さんはガッカリしたし、軽蔑してる!」


 母さんはそう言うと、怒って部屋に帰ってしまった。


「う~ん、一緒の体におるんやけどな~、優。」


 ギャルの麻友はそう言って、「どうしよっか?」とベタベタと引っ付いてきた。


(妹の麻友は全然、どうするつもりもなさそう。むしろ、楽しんでる…。)

 

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