第8話 人生を変える出来事が起きた理由
「妹がやった事とはいえ、紫音様への数々の無礼な振る舞い。大変、申し訳ございませんでした!」
国語の時間中にまた、隣の席にいる紫音へ絡み出したギャルの麻友だったが、途中で寝ると言って、眠った結果、金色の髪がいつもの黒髪に戻り、いつもの麻友が目を覚ました。そして、授業が終わった瞬間に、麻友は紫音に向けて、土下座して謝罪行為を始めていた。
(いつもの麻友さんも、もう一人の自分が紫音さんにウザ絡みした記憶はあるんだね…。)
「いいのよ、麻友。優樹くんに夜の営みを断られて、傷付いたのよね。分かるわ。私も蓮さんが襲ってくれないから…とっても辛いもん。」
紫音は麻友の無礼な振る舞いを許したあと、優しく寄り添って、さりげなくギャル化したのは、僕のせいだった事を話していた。
(あの言い方をされると、僕がそう言う事をするのを断る度に麻友さんはギャル化するって事?)
「優樹くん、分かったでしょ?女は好きな人から相手にされないと心が枯れちゃうの。私もレスが続くと、ストレスでお肌や狐の毛にツヤが無くなっちゃうもん。」
紫音は僕にギャル化を防ぐ解決方法を話したあと、さりげなく、神里先生との恋愛に進展が無いことに不満を漏らしていた。
「あっ、でも、妹の麻友ちゃんは興味の無い物には集中力が無いからすぐに寝ちゃうし、自然に姉へと主導権が移るのを待つ、って言うのも手だよ?でも、ギャルの麻友の方が好みだって言っちゃったら…。」
紫音がそう言いながら、麻友の方へ投げ掛けると、
「姉の私は邪魔な存在なので…死にます。」
最上級に重い答えが返ってきた。
(ギャルの妹が主に無礼な振る舞いをしたせいで、心がいつも以上に病んでる…。)
「大丈夫だよ、麻友さんは常識があるし、母さんも料理上手の娘が出来たみたいで嬉しいって言ってたし、僕もまだ慣れなくて、ドキドキするけど…、楽しいです。」
彼女が元気になってくれるように、褒めてみると、
「ありがとうございます…。優樹さん。大変、厚かましいお願いがあるのですが、本日も紫音様の護衛をお願いしてもよろしいでしょうか?私はお義父さまたちにも、朝に起こした非礼な振る舞いを謝罪しないといけません。菓子折りに最高級の品の準備せねばなりませんので、夕方に少しお時間を頂きたいのです。」
ギャルの方の彼女が朝に僕の両親へ失礼な何かを言ったらしく、高級な物を買って謝罪をすると言っていた。
「そんなに気を使わなくて良いと思うんだけど…、麻友さんが納得するなら…。」
病んだ女性に否定の言葉は良くないと感じた僕は彼女の思う通りにしてもらう事にした。
「ありがとうございます。今日は優樹さんの好きな食べ物で夕食を作りますので、楽しみになさって下さいね。では、お先に失礼します。」
僕に褒められた彼女は少しテンションが上がったのか、機嫌よく、僕たちよりも先に帰って行った。
「さっ、私たちも帰ろっか?」
紫音が帰宅を促したので、護衛を頼まれた僕は彼女を家に送り届ける事にした。
「紫音さん、昨日の病院での事なんですけど…、僕が紫音さんに触れるとなんで、尻尾の数が増えたんですか?あの力はなんなんですか?」
下校中、二人きりになった僕は紫音に昨日の不思議な現象の事を尋ねると、
「う~ん、答えても良いけど…、昨日も話したとおり、優樹くんは特殊な人間だから、この高校に合格したの。今年から理事長に就任した桜子さんは今年の入試の試験である特別問題の正解者には加点を付け加えたの。だから、私たちの高校の一年生全員には、素養の無い人は一人もいない。この紙を見てもらえないかな?」
紫音が僕に見せてきた紙には高校レベルの試験問題が書かれていた。
「これが高校の入試試験レベルの問題用紙ですよね?これがどうしたんですか?」
何故、こんな問題用紙を見せてきたのか疑問に思っていると、紫音はそれを近くにいた、勉強が出来そうな上級生っぽい女子生徒に見せて、「これが解けますか」と見せると、
「私はまだ…二年生よ?こんな大学入試レベルの難解な問題をすぐに解けるわけ無いじゃない。でも、ウチの一年生はまだ四月なのに、こんなにハイレベルな問題集をやってるのね、感心したわ。」
彼女はそう答えたあと、良い大学に入るのも楽じゃないと言って、立ち去って行った。
(どういう事?中三レベルの知識さえあれば、簡単な問題だと思うんだけど…。)
同じ問題用紙を見たのに、上級生の彼女には、まるで違う難解な問題用紙を見ているかのような言い方をしていた。
「これが今年の入試試験のからくりよ。ある一定の素養のある人間によっては紙に書かれている事が違って見えるの。素養の無い人がみると絶対にすぐには解けない問題用紙になるし、素養のある優樹くんが見るとわりと簡単な問題用紙に見えるの。
新理事長の桜子さんはこれで振るいに掛けてたの。だから、麻友はあなたの資質を見て、小鈴あたりのライバルに取られないように、すぐに桜子さんの所へ行って、交際の許可を得ていたし、先に自分が目を付けたのに、あなたを奪おうとした私や小鈴を全力で潰した。これで、平凡そうに見えるあなたがこの高校に入れた事と美人の彼女がすぐに出来た理由なの、分かった?」
紫音さんは分かりやすく彼女が持つ不思議な力と、その素養を持つ人だけが合格する入試試験のからくりを説明してくれた。ついでに何故、麻友が僕にこだわり続ける事も教えてくれた。
「僕は紫音さんみたいな狐耳も尻尾も超能力はありませんけど…。」
そんな力は、無いと否定すると、
「君には不思議な力が使えない…。でも、力を使うためのエネルギー源にはなるの。だから、麻友は君の子供が欲しいって、ヤバい発言を連発するの。まあ、私も似たような目的で桜子さんが勝手に決めた蓮さんとの交際を利用して動いているんだけどね。神里先生に紫音はあざとい女とか、チクらないでね?」
彼女はそう言って、僕と麻友の恋を全力で応援していると話してくれた。
「あっ、そうだ。今日はお父さんの仕事を手伝うんだけど…来る?麻友には私のバイトに付き添う護衛で優樹くんは夜遅くなるって、連絡をしてあげるからさ…。」
彼女は義理の父親の仕事を手伝うから見に来るかと言ってきたので、
「うん…、紫音さんや麻友さんの不思議な力の事も知りたいし、僕は付いて行く事にするよ。」
紫音の申し出に僕は付いて行くと返事をすると、彼女は君の知らない不思議な世界を見せてあげるよと笑顔で答えていた。
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