第4話 狐っ子美少女の家は何か変だ

 なんかよく分からないうちに麻友と言う彼女が出来た僕は、放課後になり、麻友の主の狐っ子美少女の紫音を送り届けるのを頼まれていた。


「優樹さん、紫音様が可愛いからって、浮気はダメですよ?もし、浮気をしたら…紫音様と優樹さんはこうなりますからね?」


 そう言うと、麻友は改装工事中の廃材コンクリートにかかと落としをして真っ二つにカチ割ってしまった。それに恐怖を覚えた僕は、


「ハハハ…、僕は麻友さん一筋ですよ。」


 そう声が震えながら答えると、


「だと思ってるので、何も心配してませんよ。じゃあ、よろしくお願いいたしますね。」


 僕らに伝える事を終えた麻友は僕たちと逆方向へ歩いて行った。


「紫音さん…麻友さんって、なんであんなに強いんですか?紫音さんを圧倒していた小鈴さんを鯖折りしてましたよね?」


 僕は見てはいけない物を見た感じで麻友の主に尋ねると、


「う~ん、私が弱体化したから、近くにいる人間で、麻友に勝てるのは義理のお母さんぐらいじゃないかな?」


 紫音は自分が弱体化したと話して、神里理事長が一番強い事を教えてくれた。


(60代の女性が最強なの?)


 弱体化というワードも気になるが、理事長の強さも気になる僕は、


「うん、聞かなかった事にするよ。僕は麻友さんに殺されたく無いから、紫音さんも過激な行動は止めてくださいね。」


 そう言って、僕と紫音は静かに頷いてお互い、何もしないと約束した。


「ただいま~、さぁ、入って、入って~。」


 紫音が住んでいる大きめの家に着いた僕は紫音に上がって欲しいと言われて、玄関に到着すると、


「紫音ちゃん!お帰りなさい!お母さん、紫音ちゃんが心配で心配で、堪らなかったわよ~。」


 玄関に到着するなり、キレイな女性が紫音に抱き付いた。


(紫音さんのお母さんかな…メッチャ綺麗な女性だ。)


「こちらの方は、どなた?恋人?私の紫音ちゃんを奪うつもりね!」


 彼女はそう言うと、廊下を走って行き、すぐに塩を持ってきて、


「悪霊退散!」


 女性は僕を悪霊呼ばわりしたあと、全身に塩をかけてきた。その行動に、


「未央お母さん!止めて、この人は親友の恋人で初めて友達になってくれた、佐藤 優樹くんなの!」


 紫音が必死に止めて説明すると、


「ゴメンなさい、私ったら、勘違いしちゃった!ゴメンね、お風呂入る?」


 パニックを起こした紫音の母親は次に僕を抱えて脱衣所へ連れて行き、服を脱がし始めて、お風呂に入れようとしてきた。


(なんなの、この人…。)


「あっ、大丈夫ですから、紫音さんのお母さん!だから、服を引き剥がさないでください!」


 制服を揉みくちゃにされたけど、なんとか、お風呂に放り込まれる事態は避けれた。そのあと、全力の謝罪を経て、冷静を取り戻した紫音さんのお母さんは、「光さんが呼んでるわ、行かないと!」と告げて、お化粧と洋服を整えて、まるで別人のような姿になり、仕事に行ってくると娘の紫音と僕に挨拶をして、家を出ていった。


「光さんって言うのは、桜子さんの長男で神里先生のお兄さんに当たる人で、私の義理のお父さんなの。ちなみに未央お母さんも義理のお母さんよ。」


 紫音からの説明を受けたが、親族関係が複雑過ぎて、付いていけずに唖然としていたが、


「紫音さんのお母さんは何の仕事をしてるの?なんか、専業主婦から女優みたいな綺麗な格好をして出ていったけど…。」


 夜の仕事なのかな?と推測した僕は思わず、義理の両親は何をしている人なのかを聞くと、


「お父さんたちは死んだ人の未練や最後の願いを叶えて、あの世へ送り届ける仕事をしてるよ。あっ、でも、お父さんや私は死んだ人…、霊が見えるんだけど、未央お母さんは見えないから、区別が付かなくて、優樹くんを見て、お化けと勘違いしちゃって塩をかけたんだと思うの、本当にゴメンね。」


 紫音は義理の両親の仕事を説明してくれたのだが、


(霊が見える?霊をあの世へ送り届ける仕事って何?)


「あの~、紫音さん。全然、意味が分からないので、分かりやすく説明をしてくれると助かるんですけど…。」


 意味が分からないワードが多すぎて、理解出来ないと話すと、


「多分ね、優樹くんは、未央お母さんと一緒のタイプなの。霊は見えないけど、霊力を高めるタンクになる素養があるから、桜子さんが優樹くんと麻友の交際を認めたの。優樹くんと麻友が子供を作った場合、かなり優秀な能力者が生まれる可能性が高いの。だから、ウチの学校を合格したんだよ?」


 紫音は僕に分かりやすく説明をしてくれたつもりだろうが、


(分からん!全然、分からん!)


 僕が言われた事に悩みまくっていると、


「麻友に殺されたく無いから、私はもうしないけど…、この事実がバレたら、優樹くんの子供が欲しいウチの学校の女子はかなり増えるかもよ。」


 紫音がもっと分かりやすく説明してくれたが、僕の子供はスゴい才能を持った子が生まれやすくなるから、女子からはそういう、モテ方をすると言う事は分かった。


「前にも話したけど、ウチの学校で一番優秀なのは麻友よ。ただ、ウチの未央お母さんと同じで、少し重いから、扱いには気を付けてね。」


 女性とのお付き合いをしたこと無い僕に、彼女の麻友が重い女だと告げてきて、付き合うなら、覚悟をして欲しいと言ってきた。


(うん、知ってるよ、紫音さん…。浮気をしたら、きみすら、殺すって宣言をした従者まゆさん、だもんね。そりゃ、誰よりも重いよ。)


 そんな感じで不思議な会話を続けて、初めての女の子の友達とおしゃべりしていると、初老の男性がやって来て、


「紫音、スマンけど、留守番を頼まれてくれるか?未夢の見舞いに行って来るし。」


 男性は見舞いに行くと言って、紫音に留守番を頼んでいると、


「えっ、社長。未夢ちゃんって、生きてるんですか!」


 紫音が未夢って子の名前を聞いて、変な反応をし始めたら、


「なんや、未央から聞いとらんの?知らんのかいな…。まあ、エエわ。ワシの孫やからな…、昏睡状態でも、会いたなるんや。」


 そう言って、彼は悲しそうな顔をして出掛けて行ってしまった。


(昏睡状態の孫…か、なんか、重い話を聞いちゃったな…。)


 悲しい話が苦手な僕は、胸が痛む感じを覚えていると、


「う~ん、まあ、最初から変わってたし…、事故に遭った未夢ちゃんが生きてても、不思議ではないか…。昏睡状態…でも、九尾の再生力を使えれば…、治せるかも。」


 紫音がブツブツと一人ごとを話し始めたため、


「大丈夫?紫音さん?」と僕が声を掛けると、


「あっ、うん。大丈夫…。あっ、そうだ!ゴメン、優樹くん。私も未夢ちゃんのお見舞いに行きたいんだけど…、付いてきてくれないかな?」


 紫音が昏睡状態の社長さんの孫の見舞いに行きたいと話して来たので、


「うん、行こっか。今の僕は麻友さんの代わりだからね。付いて行くよ。」


 自分の彼女の仕事を代わりに務めている僕は麻友の紫音あるじと一緒に未夢という女の子がいる病院へ向かう事にした。

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