第5話 愛か金の復讐
その衝撃的な言葉は、あまりにも残酷なものだった。アリシアが涙目で言う。
「リネファちゃんが、、、死んだって」
僕は言ってることが理解できなかった。リネファが死んだ?あいつが?有り得ない。だつてあいつは王都の家の屋根を飛んでいくくらい運動神経いいのに?なぜ?僕はアリシアに聞いた。
「誰が殺したんだ?」
アリシアが俯いて言う。
「わかんない...確か黒い髪で赤い服を着てるって言ってた」
その瞬間、理解した。この王都を守るためにも、アリシアを守るためにも、僕はそいつを殺さなくちゃいけない。そう、心に固く誓った。僕は無表情で屋敷を出て行った。この件にアリシアを巻き込みたくない。傷つくのは自分だけでいい。僕は強くならないといけない。誰よりも強く、そして、あの忌まわしい奴を殺すんだ。僕は、強くなるために王都へ向かった。何も考えず歩いていると、王都の制服だろうか、端正な顔つきの男がいた。自分の本能だろうか。「こいつは強い」と自分の中で理解した。そして、藁にもすがる思いでその男に言った。
「頼む!僕を強くしてくれ!鍛錬だってなんだってする!頼む。俺を強くしてくれ!」
男は戸惑いもせず、驚きもせず、こう言った。
「君はなんのために強くなるんだ?」
僕は言ってることが理解できなかった。でも、自分の中では不思議と答えが出ていた。
「アリシアと皆んなを助けるためだ」
男は笑った。静かに。
「あはは。じゃあ少し大変な鍛錬になるけどいいかな?」
覚悟は決まっていた。たとえ自分という存在自体、無くなったとしても。
「ああ、覚悟はできてる」
彼の名はトキといった。この王都の剣豪だという。しかも、それを全く鼻にかけず、謙虚だという。人間の模範的存在だな、と思った。そして鍛錬が始まった。刀を振り続け、邪気を酷使する。邪法は使えば使うほど使える邪気は増えるらしい。刀を振り続け、酷使して一ヶ月が経った。部屋で休んでいると、鳩が飛んできた。旗は一枚なにかを落として晴天の空に消えていった。紙には何か書いてあるようだった。
「リア、急にいなくなって一ヶ月が経ったけど無事?連絡もないから心配。もしこの手紙が届いたら返事をください。ライもリイも心配してます。困った時はお互い様だよ?」
僕はこれに返事をしなかった。状況を説明したら巻き込んでしまうかもしれないからだ。僕は旅の準備をした。部屋を出た時、ちょうどトキが廊下を歩いていた。トキが驚いたように言った。
「君、どこ行くんだい?」
僕は感謝の意を込めて言った。
「今までありがとう。僕はこれから旅に出る。育ててくれた感謝は忘れない、本当にありがとう。」
トキは驚いて言った。
「どうして?急に?え?もう、行くのかい?」
初めて会った時の冷静さはどこにいったのか?でも僕は率直に言う。かつ冷酷に。
「仇を打ちに行くんだ。止めるのは許さない。」
トキは呆然とした顔をして突っ立っている。そんなトキを置いていき、僕は外へ出た。まだ見ぬ敵を目指して。
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