第3話 愛か金の邪心のはじまり

僕はある村についた。足に枷がついているように重い。僕は重い足を引きずるように、民家の前に来た。喉が張り裂けるくらいに叫んだ。ただ、助けたい一心で。その気持ちに応えてくれたのか、中から人が出てきた。僕は叫んだ反動で意識を失ってしまった。中の人は慌てて僕たちを入れて治療してくれたらしい。そこから何日たっただろうか。僕は目を覚ました。女の子は3日前に起きて、カラは2日前、カミアは先ほど起きたらしい。僕は治療をしてもらった感謝をして、家を出ようとしたとき、カミアが僕の名前を呼んだ。

「リア!待って!」

僕は驚いた。そしてふっと言葉を漏らす。

「僕は何もしてないよ、」

カミアが止める。

「あるところに招待したいの!」

僕はまた驚いた。次はどこに行かせる気なんだ。そして、日本では見たことない乗り物があった。それは鳩車だ。鳩でこのでかい車を動かせるのか?そう思ってた自分が馬鹿だった。そうだ。ここは日本じゃない。異世界だ。日本の常識が通用する訳がない。自分の普通が普通なのかわからなくなってきたとき、鳩車の前の車両から声がした。

「着いたよ」

カミアの声だ。僕は疑問に思ったことをカミアに問う。

「カラと女の子は?」

カミアが淡々と答えた。

「ああ、あの店主さん?店主さんはあのバーに戻ったし、あの女の子...確かリネファちゃんだっけ?はもう戻ったらしいよ」

僕はほっとした。あの二人が安心してよかった。ほっと胸をなでおろした時だった。後ろから聞きなれない独特な声が聞こえた。

「おや?君は確かアレシア様の言ってた命の恩人じゃないのかな?」

突然の声に驚いた。しかしその声はなぜか安心するような声色だった。

「あなたは...?」

僕が問う。そうするとこう答えた。

「私の名はジェクリア・R・ローマフと申します、ここら辺一帯のジェクリア領の管理を任されているんだ」

そんな大物だったのか。でも自分の中に一つだけ疑問があった。

「アレシアというのは誰なんですか?」

ローマフは驚いたように答えた。

「アレシアというのはあなたの後ろにいる子のことですよ?まさか名前を聞かされてないなんて言わないだろうね?」

僕は焦るようにカミアに言った。

「君って本当はカミアじゃなくてアレシアっていうの?!」

カミアは照れるようにうなずいた。そうするとカミアという言葉に反応したのかローマフがこちらを向く。

「アレシア様、まさか王都で【カミア】と名乗っているのですか?」

カミアはうつむくように頷く。

「アレシア様、あれほどその名前を名乗らないようにといったでしょう」

僕はよくわからなかった。

「ローマフさん、【カミア】っていう名前は何か良くない言葉かなんかなんですか?」

ローマフはにこやかな顔つきでこちらを見た。

「ははは、ローマフで大丈夫だよ。カミアについて知りたいんだね?なら教えてあげよう」

ローマフの話によると、400年前、邪心という塊があったらしい。その数は10個。その邪心の塊が人の形となったものがのちに「邪人」と呼ばれるようになったという。邪人。あるものは飢餓を救おうと3体の【邪獣】を作り出し、あるものは世界中の怒りを根絶しようと、この世界の住民すべてに【邪約】をした、あるものは世界中の人間の平穏と安寧を願い、その地に邪華を咲かせた。今も邪華の生息する地域では、結界が張られ、邪華は守られている。そのように9人はこの世界を守るために努力した。しかし、1人は違った。その名は「カミア」。カミアは邪人すべてを取り込み、邪華の生息する地域、【永寧】、【三大邪獣】、【邪約】以外のほぼすべてはカミアによって消し去られた。まだ見つかっていないものもあるという。

話が終わったときに、僕はなぜか心臓が少し痛みを感じた。「きっと前の傷のせいだろう」と自分の中で言い聞かせた。だけど、僕はなぜアレシアがカミアと名乗っているのかがわからなかった。しかし、今聞くのは違うと思った。そして、ローマフが急に僕に質問を投げかけてきた。

「リア、君は愛とお金、どっちが大事だい?」

僕は迷わず答えた。

「僕はお金のほうが大切だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る